「Service, not selfの真意」(その1)
![]() 2680地区 石井良昌PDG |
私のガバナー年度である2005〜2006年度のRIのテーマがService above selfであることから、このテーマの原型とされているService, not selfの真意を紹介するために、予てから私なりに翻訳していた、ベンジャミン・フランク・コリンズの「How it is done in Minneapolis」というスピーチ原稿を私のガバナー月信に掲載し、このたび「ロータリアンの広場」にも公開しました。その中で述べられているService, not selfの解釈が今まで伝えられてきた解釈とはまったく違うということが、しっかり精読すればよく分かります。そこで、コリンズのスピーチ原稿の中身について触れてみたいと思います。
日本におけるロータリーの過去の一部の指導者たちの大きな過ちの一つは、思想や理念や出来事を当事者が直接書き綴った一次文献を読まずに、それを後世の誰かが訳して解説を加えた二次乃至は数次文献や、ひどい例では誰かが書いた文章や、語った言葉を、さも自分の意見のように説いてきたことにあります。人に語るときには、必ず出典を調べる必要があります。その出典が二次資料ならば、一次資料にさかのぼって、その内容が正確かどうかを調べた上でなければ、人に語る資格はありません。
「Service, not self」の解釈を巡る大きな過ちは Oren Arnold が書いた「Golden Strand」という本にあります。この本にはフランク・コリンズの職業を弁護士と書いてありますが実際にはコリンズ自身のスピーチ原稿では、果物卸売商ですと本人が書いています。また、「この演説はアーサー・シェルドンの有名な宣言 He profits most who serves best を最初に聞いてから、僅か数分以内になされたものであった。」と記載されていますが、実際はシェルドンの原稿が読み上げられた前日、1911年8月22日に行われたコロンビア川をさかのぼる船旅における即興演説です。
さて、Service, not self という言葉の持つ意味については、次の記述があります。
Service, not self そう、何れにせよ、自己の存在を考えることが、まったく悪いわけではない。例えば、人間は自尊心を持つべきだし、自分自身を守らなければならない。もし自分自身が零落すれば、奉仕することなどできるわけはない。従って、Not Selfが、何を意味しているかを理解することは、まったく難解である。自分自身を二の次にしておくのは良いとしても、それを完全に否定するのはどうかと思われた。「よし、それなら Service Above Self にしたらどうだろうか?」 誰かが意気揚々と、適切な提案をした。「それは良いね!」 別の人が叫んだ。たぶんそれは、販売の専門家アーサー・シェルドンの興奮した声であったに違いない。「それはよい方針であり、すべてを言い尽くしている。」 明らかに、彼の発言は正しく、その提案は満場一致をもって採択された。 |
Service, not self は自己を完全に否定した考え方であると述べていますが、コリンズのスピーチの内容は決してそのようなものではありませんし、Service above self に変えたのはシェルドンかも知れないと言っていますが、それを証明する資料は残っていません。
このように、「Golden Strand」に記載されている Service, not self に関する一連の記載は、ひょっとしたらフランク・コリンスのスピーチ原稿を読まずに。伝聞を記載したのではないかと思われるふしが多々見られます。
さて、日本の過去の一部の指導者たちのほとんどは、この「Golden Strand」を利用してロータリーを説いています。この本の邦訳は、源流の会会長の田中毅PDGが研究用資料として1998年に出版したもの以外には存在しませんから、みなそれぞれ、ご自分で必要な部分だけ翻訳されたものと思われます。
さて、Service, not self という言葉が説明されているフランク・コリンズの「How it is done in Minneapolis」というスピーチ原稿は、1911年11月の発行された「The National Rotarian Vol.U、No.1」に収められており、田中毅PDGが2002年1月に One Rotary Center の資料室で見つけ出して翻訳したものが、多分、本邦初公開ではないかと思われます。
このアメリカでコリンズのスピーチ原稿をPDG田中 毅 源流の会会長が2002年に発見されて以来、日本全国での源流の会での講演や多くの地区大会や色々なセミナーで、Service, not self の真意を延べ数万人のロータリアンに講演されました。
その結果、今ではService, not self が「無私の奉仕」とか「自己滅却の奉仕」などという講演者は非常に少なくなりました。
やはり、一次文献ほど正しく強いものはないと確信しております。
(続く)
(2014.06.20)