ロータリアンの広場


「国際貢献と奉仕理念」その1
2680地区 PDG 石井良昌(尼崎西)
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2680地区 石井良昌PDG

 ロータリーという組織がどのような奉仕活動をしているかを、私の体験から語り、国際貢献と奉仕理念がどのようにかかわっているのかを書いてみたいと思います。
 国際奉仕でいうWCSはWorld Community Service の略で世界社会奉仕のことです。
 2011年6月30日をもって、このWCSのネーミングが廃止され、人道的プログラムに変わりました。これは戦略計画の優先項目と目標を促進するために「リソースとサポートのモデル」への転換をRI理事会が承認したことを受け、今後はロータリー財団の補助金を積極的に活用して下さい、との意味であります。

 いずれにせよ、クラブ同士の関係や協力を助長することによって、多大な成果をもたらす人道的国際奉仕活動への取り組みは引き続き奨励されております。この人道的プログラムの活動は単にお金を送るだけでは駄目で、現地に行って先方のロータリアンやクラブとまず信頼関係を構築することが大切です。

 私のWCS活動の最初の訪問国はタイ北部山岳のチェンライでした。それ以来この20年間、タイ、ネパール、フィリピン、カンボジアを中心に何度となく訪れ、他にマレーシア、台湾、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなども訪問し、ロータリー関係で海外には約100回以上訪問しております。

 まず、ネパールについて紹介してみます。兵庫県の三木市に住んでおられた岩村昇医師を顕彰する意味で、岩村記念病院建設のために、1997年11月に2640地区の方々と、建設予定地で首都カトマンズから車で約30分のバクタプルという所を合同で現地調査しました。このプロジェクトは今は亡き今井鎮雄元RI理事の肝いりで、土地購入と建物を建てたためにWCSによるロータリー財団の支援なしのプロジェクトとなりました。

 岩村昇先生は1962年から18年間、結核やマラリアが蔓延するネパールの無医村で奥様の史子さんと共に医療奉仕活動を続けられました。この人道的な援助活動に対し、RIから  1981年に第1回国際理解賞を受賞されました。この他にこの受賞をされた方の中には、ローマ法王パウロU世、カーター元アメリカ大統領、日本の緒方貞子さんらがおられます。

 そこで、2014年11月より約40日間、このネパールの岩村記念病院の看護師3名とリーダーの計4名の方々をお呼びし、グローバル補助金のVTTを使って「ネパールの看護師能力向上のプロジェクト」を立ち上げ、研修を篠山市の岡本病院で行ないました。
 このVTT(職業研修チーム)の帰国後、このVTTの成果に対するモニタリングで2015年2月19日からネパールに行き、いかに成果が上がったか現地調査を行ないました。
 このVTTプロジェクトで日本の病院から学んだ成果は次の3点にまとめられる。

1.医療廃棄物の分別
注射針は注射針の入れ物に、プラスチックはプラスチックの入れ物にと院内でも院外でも分別を実行するようになった。
2.日本に見習い、訪問介護をやり始める
退院や通院をしている人に必要があれば、ネパールでは他の病院がやっていない訪問介護をすでにやり始めている。
3.出勤時間や勤務時間などの時間管理を厳重に行なう
時間厳守の日本方式を看護師業務のハンドオーバー・スケジュール管理に適用した。これによって、勤務時間の重複を排除することができた。
 また、2015年4月25日のネパール大震災で、多くの人が亡くなり、この岩村記念病院もそこに働く人たちも家を無くしたりで相当傷つきました。そこで、2015年7月14日からわが地区の室津義定ガバナーエレクトと安行英文氏とで、この病院を訪問視察し、改修工事内容を把握して78万円の義捐金を渡してきました。今ネパールにはあまり見られないMRIの医療器具の必要性をお聞きし帰国しました。

 話題をロータリーの奉仕理念に変えたいと思います。従来からシカゴ・ロータリー・クラブの定款はわずか2行の短い定款と言われていましたが、これは大きな間違いでした。
 シカゴクラブの定款第1条に名称、第2条に目的、第3条に会員資格、第4条に役員、第5条に役員の任務、第6条に役員選挙、第7条に改正とありました。7条の定款と12条の細則からなる本格的な規約でした。定款第2条の目的に、

1.会員の事業上の利益の促進。
2.通常、社交クラブに付随する良き親睦とその他の特に必要と思われる事項の推進。と書かれております。このシカゴクラブの定款・細則を見る限り、最初は奉仕の概念はなく、事業の繁栄すなわち物質的相互扶助と親睦を目的にしてロータリーが創立されたことが分かります。
 また、4回続けて例会を欠席すれば退会とも書かれており、この頃の例会は月に2回で、さらに7月と8月は休会という規約になっておりました。また最初の頃のロータリーでは、ロータリー年度は毎年2月1日に始まり、翌年の1月31日に終わっております。

 このように一次文献を探し、調べていきますと、大きな発見や興味深いことが見つけられます。

 ロータリーに奉仕の理念を提唱した人と言われるアーサー・フレデリック・シェルドンの存在を忘れてはなりません。シェルドンの奉仕理念は健全な事業経営とは奉仕理念に基づいて継続的な利益をもたらす常連客(リピーター)を確保することであり、profitとは奉仕を行った正当な報酬のことであり、奉仕という原因には必ず報酬という結果が与えられると説いています。
 ここでいう奉仕の理念とは奉仕の理想のことで、英語ではThe Ideal of Service で「人に対する思いやりを持って、人のお役に立つこと」と訳しております。ただ単に、人道的な奉仕プロジェクトをするのではなく、相手の立場に立った思いやりの心を持って、相手や相手国のお役に立つのだろうか、とよく考えプロジェクトを進めるべきであります。
 こういったロータリーの奉仕の理念に基づいて、国際貢献といったプロジェクトに取り組んでいく必要があります。

(続く)
 

(2015.07.21)

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