ロータリアンの広場


「揺れる日本の職業奉仕」
2680地区 PDG 石井良昌(尼崎西)
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2680地区 石井良昌PDG

 1908年にシカゴクラブに入会したアーサー・フレデリック・シェルドンが説いているのは「He profits most who serves best」に要約される経営学に基づく奉仕理念であって、現在国際ロータリーで語られる職業奉仕とは全く別次元の理念であることが分かりましたと源流主宰者の田中毅PDGは「源流の会」で次のように語っております。「シェルドンは自らの文献の中で、職業奉仕Vocational Serviceという言葉は、一切使っておらず、職業を表す言葉として、Business, Occupation, Profession という言葉を使用しています。職業奉仕Vocational Serviceという言葉が使われたのは、1927年のAims and Objects Plan 策定にあたって、マックス・ウェーバーなどの宗教的影響を受けたイギリス人のグループがつけた名称で、シェルドンの経営学上の奉仕とは、全く次元の異なるものであって、最近の職業奉仕理念が変わったと嘆くこと自体が間違いだ」と説いております。

 職業奉仕理念が衰退しつつあることは間違いありませんが、「He profits most who serves best」のモットーが残っている限り、シェルドンの経営学に基づく奉仕理念が残っていることは間違いなく、それが廃止された時点でロータリーの本来の奉仕理念は消滅したと言えるでしょう。奉仕活動の実践上の便宜から、クラブ奉仕、職業奉仕、社会奉仕、国際奉仕に分割され、さらに青少年奉仕を加えたということであって、もともと、シェルドンの経営学上の奉仕理念と現在の国際ロータリーの職業奉仕は別物と考えるべきだと思います。
 ロータリーの職業奉仕の理念を構築したのはアーサー・フレデリック・シェルドンであります。シェルドンによれば、事業が継続的に発展するためには、  自分の儲けのみを考えるのではなく、まず他者のためにという意図をもって事業を営み、従業員や仕入れ業者などと利益を分かち合うことが唯一の繁栄の方法だと言うことでした。この考えは、弱肉強食の初期の資本主義の時代にあって、来るべき20世紀の修正資本主義を先取りした、極めて斬新な考え方であったと考えられます。

 もともとシェルドンの経営するシェルドン・ビジネススクールの教科書として出版されたThe Science of Business (経営学)の第5巻の文中ではじめて「He profits most who serves best」を使っております。今まで我々が信じていたこのフレーズのモットーは、シェルドンがロータリーのために考えたフレーズではなく、ロータリーが創立する1905年より前の1902年に、シェルドン・スクールで教えていたカリキュラムの一節で使われていたフレーズであり、それをロータリーが借用していたに過ぎないということが分かりました。

 シェルドンは経営学という学問に則って、奉仕の実践を前提にして、継続的な利益をもたらす顧客をリピーターとして確保する活動であると定義して、それを分かり易く説明するモットーとして、「He profits most who serves best」を発表しています。  このモットーはロータリーの職業奉仕の概念が生まれる前に作られたものですから、ロータリーの職業奉仕を表すオリジナルなモットーとは言えません。その後、ロータリー全体の奉仕理念を表すモットーとして使われだし、ロータリーに職業奉仕という概念が生まれた1927年以降、職業奉仕のモットーに変化して定着したことになります。
 ただ、1930年のシェルドンの退会と共にロータリーの職業奉仕理念は大きく変貌し、シェルドンの経営学から天職論を念頭に置いたVocational Service(職業奉仕)へ、さらには倫理道徳運動に発展していったと思われます。

(2017.06.28)

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