「今も輝くシェルドンの職業奉仕理念 その1」
![]() 2500地区 PDG 小船井 修一 |
田中作次RI会長のサンディエゴの国際協議会スピーチを紹介します。
「奉仕を通じて平和を」という概念に、難しい哲学はないと思っています。一介のビジネスマンとしての経験から、事業を成功させるためには、顧客の満足を追求する以外にないという結論に達しました。顧客に喜んでもらえば事業も成長します。そうすれば私自身も、人を幸せにしてあげることが出来たという認識があります。ロータリーのビジネスは、利益の追求ではなく、平和の追求です。報酬はお金を手に入れることではなく、自分の努力によってより良い、より平和な世界が実現するのを見届けることにあります。
(引用終わり)
優れた企業経営者である田中作次RI会長は顧客満足の追求こそが成功の道であるとしました。この発言はロータリーの金看板であり、また、われわれが受け継ぎ未来へ渡していかなければならない言わば「遺伝子」でもある「職業奉仕」そのものを指しています。
私は「職業奉仕」の理念や哲学について詳しく述べません。
なぜなら、職業奉仕の理念哲学については多くの素晴らしいロータリアンの諸先輩がおられる中で浅学菲才の私の任務ではないからです。
むしろ、自分自身が中小企業の経営者としての立場で職業奉仕の実践と、アーサーFシェルドンの職業奉仕理論が今日でも価値を失っていないことを説明させていただき、ロータリアンの皆さまにロータリーが他の奉仕団体とは違う歴史を持ち、今日でもその輝きを増している理論と哲学を持っている団体であることを理解いただければと思います。
アーサーFシェルドンの事績
1905年シカゴで発足したロータリークラブは、アーサー・フレディリック・シェルドンによって理念面の基盤が出来上がりました。1902年から1929年の27年間にわたるシェルドンスクールの著作群は、現在「源流の会」の田中毅PDGのご努力により翻訳作業中です。
アーサー・フレディリック・シェルドンは1868年5月1日、デトロイトの北西80マイルのミシガン州バーノンで生まれ、ミシガン大学の経営学部で販売学を専攻し、トップの成績で卒業しました。卒業後、図書の訪問販売のセールスマンになり、素晴らしい営業成績をあげて、1899年には出版社の経営者となりましたが、学校で学んだ学問と自らの販売経験を基本にして、1902年にシカゴにシェルドンビジネススクールを設立して、経営学特に販売学を教える道を選びました。
因みに、シェルドンスクールの卒業生は多くのロータリアンが含まれ、その数は25万人と言われています。シェルドンのロータリー活動は「社会奉仕活動」と「親睦と物質的相互扶助」との路線対立時代の1908年1月、唱歌の発案者ハリー・ラグルスの推薦を受けて、後の国際ロータリー事務総長のチェスレー・ペリーとともにシカゴロータリークラブに入会し、同年2月クラブ情報拡大委員長に就任。同年10月ポールハリスのシカゴロータリークラブ会長辞任を受け、シェルドンも情報拡大委員長から解任されました。そして1910年ペリーらによる全米ロータリークラブ連合会の結成に伴い、ビジネスメソッドコミッティ初代委員長に就任。1910年8月シカゴでの連合会年次大会で「He profits most who serves his fellows best」ということを初めてロータリーで披露しました。
He profits most who serves his fellows bestの言葉は、古からの「黄金律」である「他人にしてもらいたいことを、他人にせよ」「他人に奉仕をすれば利益が得られる」と共通しています。さらにシェルドンは商売に成功するには奉仕の理念に基づいて継続的に利益をもたらす顧客を確保することであるとしました。
顧客満足と企業の社会的責任
次に、今日企業活動で重要視されている諸活動を紹介します。社会に地域に顧客にそして従業員に信用、信頼を得ることが、事業活動を継続発展が可能になるという前提で、現在多くの企業が経営の根幹として活用している手法が顧客満足、顧客ロイヤルティ、カスタマーディライト、ブランディング等です。
顧客満足とロイヤルティ
顧客満足とは、Customer satisfaction (CS)の訳語です。顧客満足度とも呼ばれ、人は物品を購入するとき、その物品に何らかの満足を感じたときに購入するとの考え方を前提にしています。米国において、1980年代から言われ始めた概念で、従来は生産者主導であった商品の質・方向性などを、顧客の要望や嗜好を中心に据えた方が良いのではないかという考えが背景にあります。また、サービス業を初めとする第三次産業の社会に占める割合が拡大していることも、関係していると言われています。生産性や効率を多少犠牲にしてでも顧客満足度を高めた方が、消費者のリピーター化などを通じて結果的には良いとも言われています。
1990年代に入ると、ロイヤリティの概念が体系化され、真の顧客満足度を算出しCRMを (Customer Relationship Management)実施するうえでの消費者基盤構築が可能になっているとのことですが。顧客満足が「反復購入」という行動に結びつかないレベルの満足だとすると、顧客ロイヤルティは「反復購入」という行動に直結するレベルの満足だと言えます。ロイヤルティの高い顧客は、次のような特性をもっていると言われています。
- 繰り返し購入してくれる
- 競合他社の誘いに乗らない
- 第三者に勧めてくれる
「繰り返し購入してくれる」「競合他社の誘いに乗らない」「第三者に勧めてくれる」という行動そのものが「愛着の証」であると考えることができます。
ちなみに、私たちが普段「お得意様」と呼ぶのは、1の「繰り返し購入してくれる」を満たす顧客のことです。顧客の離反を抑え、顧客を維持するためには「顧客ロイヤルティ」という考え方が必要不可欠で、私たちは「満足」を超えて「ロイヤルティ」を獲得するために、努力していかなければなりません。
また、信頼を得るために顧客のニーズに応えることも重要です。顧客の期待値より低いサービスでしたら顧客に不満が残ります。顧客の期待値とサービスが同じでしたら満足するでしょう。
顧客満足が利益につながる
我田引水の事例でありますが、
私はドイツメーカーの自動車ディーラーを経営しています。顧客満足度調査は、米国系リサーチ会社が一定の期間に区切って車を購入された顧客様に電話、手紙等でアンケート調査をするものです。また、時にはお客様がショールームに来られて、社員の対応の良し悪しを調査会社に報告する覆面テスト(ファントムテスト)も実施します。
その結果が、顧客満足度で一位になって表彰されました。満足度調査で上位になって表彰されるだけではなく、メーカーからの車両の仕入れマージンも若干ではありますが、上乗せされるシステムで、調査結果の悪い下位グループの販売会社は逆に、マージンが減額されます。
したがって当社にとっては、顧客満足の向上あるいは悪化が直接利益に反映することになります。また、社員も顧客満足度向上が、ひいては再購入というロイヤルティ向上につながり、「お客様の評価の向上が会社の業績の向上に繋がり、自分たちの給与の結果に繋がる」と理解していると思います。
これは、調査会社は顧客満足度調査だけではなく、ESI調査、すなわち従業員満足度調査の結果からも実証できています。 (その2につづく)

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