ロータリアンの広場


「クラブ自治権(the substantial autonomy)の危機(2)」
第2750地区 PDG
 新藤信之 (東京立川こぶし)
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2750地区 PDG 新藤信之

 「国際ロータリーの基本方針」は1981年手続要覧まで記載され続けていました。周知の様に、手続要覧は1984年度版に編集様式が大きく変わり、最近では2013年度版、2016年度版、そして2019年度版では組織規定集の意味しか持たない薄っぺらなものとなりました。1984年手続要覧で「国際ロータリーの基本方針」と共に「決議23-34」が削除されています。

 その後の「決議23-34」の顛末は割愛しますが、1980年代から近年までのRIの基本理念に対する確執と混乱が、様々な歴史的事実から垣間見ることができます。1985年RI主導によるポリオ撲滅運動の推進、1987年職業奉仕に関する声明、1991年国際ロータリーの使命の中には、奉仕活動の実践主体に関し、RIの考え方に明確な変化が見られます。

 特に、1999年から今日までのロータリー章典第4章管理運営第26条国際ロータリーの各項目の変化を綿密に検討すれば、RIの考え方の変化のみならず、RIのクラブに対する立ち位置の変化が瞭然です。それは後に、この項目に追加されたRI戦略計画の実体の変化にも表れています。RI戦略計画はRI独自のものです。それを地区、クラブへと連動させる近年の考え方は、正にクラブの独自性、自主性を否定することに繋がり、RIを頂点とした組織機構のトップダウン構造を促進し、クラブ自治権の危機に繋ってきています。

 RI理事会の決定は一定の手続きを経てロータリー章典に反映されますが、2016年4月理事会決定157号によって、ロータリー章典で、「26.020ロータリーの目的」の削除と同時に、1923年以来、「決議23-34の5項」から引き継がれてきた「クラブの自治権」に関する考えを表現した重要な記述の「26.030.RIの管理運営」が削除、移動されました。  国際ロータリーは1922年にクラブが大いに拡大する中で、「RIが全世界のクラブの連合体」として発足しました。この時「RI定款・細則の第2条Purposes」に、現在のRI定款第3条(b)・(c)を新設し、この2項目は80年余の長きに亘り、変更されることなく続いてきました。2004年規定審議会でRIの目的に1項目を加え、それを果たすために、理事会にRI戦略計画を立てることを採択しましたが、この頃から、RIの目的の実体、特に「支援」の内実に変化が生じました。

 設立当初、RIの目的は、奉仕の理念の育成と普及、クラブの拡大とクラブ支援のためのRIの管理運営に限定されていました。日本国憲法の目的が、国家権力を抑制し、国民の自由と権利を守るためのものであると同様に、当時のRIの目的は、RIの執行機関の行動を制限、抑制し、クラブの活動を最大限支援することでした。長きにわたり、RIは加盟するクラブの自治を守る立場にあり、RIを管理運営する理事会はクラブの自治を守る義務がありました。

 この「RIの管理運営」の削除は、正に、自らの責任と義務を放棄したことを意味します。加えて、その一部をロータリー章典第2章クラブ8.010.へ移動したことの意味は、移動による「クラブ自治権」の存続を意味しているのではなく、本来クラブ自治権を守る立場にあるRIが、その義務を放棄して、クラブ自治権はクラブ自らの手で守りなさい、と言っていることを意味します。これは、2016年規定審議会での「柔軟性」に関する二つの制定案を提案したときの、個別的事項の審議を地道に積み重ねてきた経緯や試験的プログラムの継続を覆し、「柔軟性」の名の下に、包括的且つ上位規定に反した例外規定を、クラブ自らがクラブ細則で定めなさい、としてしまった無責任なやり方と同じです。 

つづく
   (2021.04.14)
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