「制定案13-49の採択により失われたもの」
2750地区 PDG 新藤信之(東京立川こぶし)

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2750地区 PDG 新藤信之

 2013年規定審議会は、制定案13−49「移籍ロータリアンと元ロータリアンに関する規定を改正する件」を採択することによって「・・・、この被推薦者がかつて属していたクラブを退会する理由または退会した理由は、本人がそのクラブの所在地域またはその周辺地域でそのクラブにおいて本人が分類されていた職業分類の下に現実に職業活動に従事しなくなったということでなければならない」を削除しました。提案者による削除の理由は、「引き続き同じ住所に住み、同じ職業に就くロータリアンが近隣のクラブに移籍するのを妨げることになり、更に、そのような人が以前に所属していたクラブに再入会するのを妨げるから」というものです。これによって、ロータリアンが他のクラブへ転移する場合、退会するあるいは退会した理由は問われなく、容易に移転することができるようになりました。これには重大な問題が隠されており、この規定に至った歴史的経緯を検討し、この削除により失われた大切なものが何なのかを明確にしておかなければなりません。

 国際ロータリーは、1990年代半ばまでの急激な会員増強とクラブ拡大により、世界的規模での組織再編成の一貫として「会員身分および職業分類の簡素化」が喫緊の課題となりました。具体的には、1998年採択決議案98−283を受けて、これをテーマとするいくつかの制定案が2001年規定審議会に提出され、その結果、RI理事会の提案による制定案01−148「職業分類の原則を維持しつつ、クラブ会員の種類を正会員と名誉会員に簡素化する件」が採択されました(拙文「国際ロータリー失われた10年」を参照下さい)。と同時に、本稿と直接関係する制定案01−160「会員身分の移転を認める件」が採択されました。
 2001年規定審議会までは、RI定款第5条第3節にある正会員は「そして・・・・・を要する。クラブの区域限界外へ移転する正会員は、理事会が承認し、さらに同会員が同一の職業分類において依然として活動する場合、その会員身分は保持できる」ということが基本でした。

 また、それまでの会員種類は、正会員、パストサービス会員、シニア・アクティブ会員、名誉会員の4種類であり、正会員のみが職業分類を代表するもの(保持者)でした。ただ、例外として一定の条件で、その正会員と同じ職業分類を持つアディショナル正会員が認められ、その正会員が退会したり、上記の他の会員種類となった場合に職業分類を代表する立場になれました。この意味で、会員身分と職業分類は不可分のものでした。しかも、クラブを代表するという意味で、一クラブに一業種一会員制が「職業分類の原則」として厳に存在していました。
 制定案01−160「会員身分の転移を認める件」は、以下のようにアディショナル正会員の3つのカテゴリーの一つ、第2カテゴリーの元ロータリアンに移籍するロータリアンを加えるというものです。

4.020.1.2.第2カテゴリー  移籍するロータリアンまたは元ロータリアン
正会員は、移籍するロータリアンまたは元クラブ会員をアディショナル正会員に推薦することができるが、この元クラブ会員の職業分類を保持する正会員の承諾を得なければならない。さらに、但し、この元クラブ会員がかつて属していたクラブを退会する理由または退会した理由は、本人がそのクラブ限界内でそのクラブにおいて本人が分類されていた職業分類の下に現実に職業活動に従事しなくなったということでなくてはならない。 正会員に推薦された移籍するロータリアンまたは元クラブ会員は、元クラブ会員によって推薦されても良い。  (下線部分が追加部分、取消線は削除部分)
(注:標準ロータリークラブ定款の同様の追加・削除部分、および他のいくつかの追加部分は省略した)


 本稿で問題とするアディショナル正会員については、1964年トロント国際大会の決議まで遡らなければなりません。この大会で初めて、一定の条件の下に、クラブ会員が推薦できるアディショナル会員の他に、クラブが推薦できるアディショナル会員が認められました。その条件とは「職業分類を保持している会員の承諾を条件として、実際に業務に従事している職場がそのクラブの区域限界にあり、且つ会員としての他の資格を持っている何れかのロータリークラブの元正会員をアディショナル正会員に選ぶことができる。但し、次の条件に該当することを要す。

(1)如何なる場合にも、本節本項の規定の下に選ばれたアディショナル正会員は、如何なる職業分類にも1名以上あってはならない、又(2)かく選ばれた如何なる会員も、彼が元所属クラブにおける職業分類下でそのクラブの地域限界内にて実際に活動を止めたという唯一の理由により会員資格が終結したのでなければならない、また(3)省略(1964年手続要覧参照)」というものでした。つまり、冒頭の下線部分に該当する上記(2)の下線部分は、但し書として追加された条件であり、その前提として、移転したロータリアンの職業分類との関係で、当人の実際に従事している職場がそのクラブの区域限界(今は所在地域或いは周辺地域)にあることが必要でした。つまり、新たに入会するクラブの職業分類保持者との関係で、移転した会員の職業分類が問題になるのです。しかるに採択制定案01−160は、伝統的な「職業分類を保持する正会員の承諾」を削除し、さらにこのカテゴリーのアディショナル正会員は何人でも選ぶことができるとしたのです。

 今回、採択制定案13−49について、法の発生学的見地からその歴史的経緯を50年余り遡り検討すると、提案者の削除理由が歴史的経緯を無視したものであり、的を得ていないことが明らかになります。むしろ、クラブの小型化が進行している状況下で、転勤等他の地域へ移転する場合は別として、近隣の地域での安易な移転を認めることは、クラブそのものの崩壊の引き金になる可能性があります。
 2001年規定審議会で01−148と01−160が同時に採択され、2013年規定審議会で13−43と13−49が同時に採択された結果、失われたものはあまりにも大きなものがあります。
 「職業分類の原則」=一クラブに一業種一会員制=は崩壊し、その保持者の存在と責務(その地域の代表者としての自覚と責任)は希薄化してしまいました。ロータリーは職業人の集まりではなくなりました。職業分類は名ばかりであり、職業分類の保持者の意向に関わりなく、クラブが転移する会員を何人でも受け入れ、または推薦できることになりました。

 1989年規定審議会で決議した「ロータリアンの職業宣言」は、さらに2004年の規定審議会で強く支持されたにもかかわらず、2011年9月のRI理事会決定87によって8項から成る「ロータリーの行動宣言」に変更され、更に2014年1月RI理事会決定88によって5項から成る「ロータリアンの行動宣言」に修正されました。「ロータリーの職業宣言」は、2013年度版手続要覧と2013年度版ロータリー章典からも削除されました。掛け声だけの、このようなRI理事会主導の状況下で、ロータリアンは自らの職業倫理を高め、地域社会において職業奉仕を実践することができるのでしょうか。ロータリーは危機的状況にあると言わざるを得ません。

(2014.08.25)

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