「ライオンズ関連記」
![]() 2710地区 PDG 諏訪昭登 |
私が地区ガバナー時代、公式訪問などでよく質問されたことの一つに、ロータリーとライオンズの関連がありました。当時 3月の識字率向上月間の月信の中でそれについて触れたものがありますので、その一部を紹介してみましょう。
ライオンズ・クラブの創立については二つの説があります(ロータリー側から見て)。
- 立者メルビン・ジョーンズはダラス RC(あるいは他の RC)の会員であったが、意見の違いで脱会し、仲間を統合してライオンズを創立した。
この説は、神守源一郎 PG『職業奉仕のお話』(1981)、高木勝樹 PG『ロータリーの窓』(1987)、佐藤千尋 PG『ロータリーにおける大乗の道・小乗の道』などにあって、旧来多くの人々に語られ、近年のロータリー情報マニュアルなどにも記述があります。 - ロータリーは一業種一会員制厳守の時代であって、希望しても入会できないことで亜流クラブが数多くできていて、そのクラブ群を統合して創立された。
小堀憲助氏(1970年から )、深川純一 PGなどが語っておられます。
両説とも確定的証明が不可能ですが、どちらかと言うとAの方が妥当かなと思えたりします。 参考までに、ライオンズ・クラブ国際協会の公式ホームページに載っている創立解説を要約して次にご紹介します。
シカゴの実業家メルビン・ジョーンズ(保険代理店)は「シカゴ・ビジネス・サークル」というクラブに属していたが、アメリカの類似クラブに呼びかけて 1917年 6月 7日、シカゴのラサールホテルに27クラブの代表が集まった。参加したクラブの一つ“Association of Lions Club”の名前を継承して同年 10月にダラスで第 1回大会を開催した。設立 3年後に国外クラブ創立によってライオンズ・クラブ国際協会となった。
このような資料によってしかこの問題は論評できないことだと思います。“ I serve” のロータリー、“ We serve”のライオンズということでおおらかに受け止めて、奉仕の方法論が異なっても世のため人のために尽くそうとする仲間の一つとして考えてみましょう。ロータリーは、特に職業奉仕理念を第一義として大きな誇りとともに精進することを目指しております。字数制限のためとは言え舌足らずな記述で恐縮です。ガバナーを終え5年が経過した今、付け加えるとすれば次のことになろうかと思います。
ライオンズは “ We serve” をモットーとし立派な道徳綱領などを承認して創立されましたが、全く同じ時期にロータリーでは基本としている“ I serve” についての体勢変化と意見対立がありました。一つは1915年頃から急速に拡張された身体障害児支援活動についての1923年頃まで続く激烈な対立、もう一つは第一次世界大戦(1914-18)を経験する中、戦争防止の方策として教育を重視したアーチ・クランフRI会長が1917年に提唱した “Rotary Endowment(ロータリー基金)” でした。前者はロータリーの団体的奉仕活動の実践拡大であり、個人性重視実業倫理主義を基本とする側との分裂危機さえあるせめぎ合いを惹起しました。
幸い、1923年セントルイス大会決議34号(23-34)によって一応の終結を見て、その後も度重なる削除提案を退けて存続し続けています。一方、ロータリー基金もその団体指向性を指摘されて伸び悩みながらも、P・ハリス死去に伴う寄付金増加によって大発展し、今やロータリー財団という人道的奉仕重点指向の巨大奉仕団体となっています。ライオンズの創立は1917年6月7日、ロータリー財団の創立は同年 6月17日ですが、この 10日違いの創立というのも時流を反映しており、必ずしも偶然ではないような気がいたします。
近年、ロータリーはRIとR財団が一元化して世界一のボランティア奉仕団体を目指しているかのようですが、同時に私たちは創始以来の精神を想起しながら、団体性を標榜するライオンズとは異なることを理解し、職業人を主体とする誇りある歴史と進化を続けたいと思います。
(2014.02.16)