ロータリアンの広場


「カレーライス」
2510地区 職業奉仕委員長
玉井清治(函館亀田)
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玉井清治(函館亀田)

 私はカレーライスが大好きです。特に家内のつくるカレーライスは世界一です。親譲りの無鉄砲で入会した時から失敗ばかりしている自分がいる。

 35歳で入会し、いまから10年前、クラブ会長を目の前にした時のことです。クラブ協議会にて各委員長に向け、自分の年度の方針を強く打ち出し、詳しく指示したところ、大先輩から「それなら全部自分でやりなさい」と言われショックで数日眠れなかったことがあります。

 数年間継続していた社会奉仕事業「子供達とのじゃがいも堀り」が当クラブの自慢の奉仕事業のひとつです。児童養護施設の子供達を誘い、クラブの会員家族とともに半日「じゃがいも堀り」を体験し、その場でじゃがいもを塩煮して函館産塩辛とバターで一緒に食べるといった事業です。この施設の子供達は親がいない子や、事情があって親と一緒に暮らすことの出来ない子供達です。

 この事業には私なりに複雑な思いがありました。親がいない子供達の目の前で私たちロータリアンが家族で笑いながら芋掘りをする姿を子供達はどう感じているのだろう?決して良い気分ではないはずです。それと、今の若い子供達は芋の塩煮より、断然カレーライスだろう!そう思っていました。社会奉仕委員長が「例年どおり変わらず奉仕事業を行う」と発表した際、会長である私は「だめだ!今年は奉仕事業に家族を呼ばないし、芋の塩煮ではなくカレーライスにする。」と言い出しました。すると、社会奉仕委員長のみならず五大奉仕委員長が真っ向から反対。それを会長権限だと押し切り、内容変更をすることにしました。日程が近くなり、児童養護施設へ挨拶に社会奉仕委員長と幹事と共に伺った際のことです。

 「喜んでください!今年は芋の塩煮ではなくカレーライスですよ!それと、芋掘りには家族は参加させません。」そう施設長に伝えると、彼は困った顔をしました。「お願いです。例年どおりになりませんでしょうか?」私は一瞬信じられませんでした。「なぜですか?」の私の問いに彼は「会長さん。あなたは幸せな人生を歩んでこられたのでしょう。カレーライスという料理はこの施設では毎週子供達に食べさせています。何故なら安価でルーを伸ばしに伸ばしてお腹いっぱい食べさせることが出来るからです。子供達はカレーにはうんざり感じています。」「この子供達は生きていく過程の中で必ず親子の羨ましさを感じることがあるでしょう。そのことを体感することもこの子達には必要なのです。クラブのご家族は是非、一緒に参加してください」このように話されました。私は目の前が真っ白になり気持ちはドン底まで落ち込みました。なぜなら私の考えていた「奉仕」と受け入れる方々の思っている「奉仕」に大きい乖離があったからです。
 「相手の立場に立って」考えたことが、結果的に自分の思慮が足りなかったという反省点はロータリアンの奉仕活動ばかりでなく日常の中にもあります。

 それと、もうひとつの反省点はクラブ会長は執行機関のトップとしてはクラブの象徴たる地位にありますが、何ら実権はないということを私は知りませんでした。クラブ会長は何でもできると勘違いしてたことです。 数日後、五大奉仕委員長や幹事・クラブのみんなが、この落ち込んでいる会長を心から励ましてくれました。

 このことは会社経営でも同じことで、自分が何の不思議にも思っていない確信ある方向が実は現実には真逆なこともたくさんあり得るということ。それを教えてくれるのがロータリークラブであり、そこが自己研鑽の場であることは間違いありません。例会出席を通じて同僚ロータリアンに学ぶ姿勢をもって、その自己改善のエネルギーを無限に地域社会に放流しなければならないということは昔から言われています。今回の規定審議会の決定をうけて、「柔軟性」のもと例会の回数を少なくしたクラブもたくさんあります。悪いとは決して言いませんが、少なくする理由が知りたいです。例会の重要性を感じるなら例会数を少なくする理由は無いのではないかと私は思います。きっと、例会数を少なくしたクラブはお試し期間中であり、数年でまた元に戻ってくれるこを勝手ながら期待し、願っております。

 「インスピレーションのアレン」と呼ばれた5代目RI会長アレン・アルバートの1913年バッファロー大会での講演で「実力の涵養と人格の形成がロータリーの目的である」という言葉を思い出しました。身にしみている毎日です。

(2018.07.25)


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