ロータリアンの広場


「多様性(Diversity)」
2510地区 地区職業奉仕委員長
玉井清治(函館亀田)
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玉井清治(函館亀田)

 2019年手続要覧では、RI細則第4条「会員身分の制約」が「会員の多様性」に変更され、性別、人種、皮膚の色、信条、国籍、または性的指向に基づき会員身分を制約すること、とあったものが、ジェンダー、人種、皮膚の色、信条、国籍、または性的指向により入会を制約すること、に変更されてました。いずれも入会に際し、クラブとして入会条件を課すことができないと明記したものではありますが、「性別」が「ジェンダー」に変わっていたことに本心、私は驚きました。

 内閣府のホームページによると「ジェンダー」を社会的・文化的性差と説明しております。言葉遣いやファッション、職業選択の表現方法のようです。もっとわかりやすく表現すると、世の中の男性と女性の役割の違いによって生まれる性別のことです。たとえば、「料理は女がやるもの」って考えている人がいます。料理=女性のシゴト。でも男で料理上手もいるのに?この性別がジェンダーなのです。ロータリーの中にジェンダーが入り込んだことで、私たちはジェンダーを理解し、正確にこの思想と共存していかなければならなくなったのです。

 世界経済フォーラムが発表した男女格差をはかるジェンダーギャップ指数を見ると2020年の日本は世界153カ国中121位、また、2019年時点で企業や公務員の女性管理職の割合はわずか14.8%と欧米諸国と比べても大きく見劣りしています。原因として考えられることは、女性の地位について「夫婦別姓の問題」「育児休暇」「昇進」など、働き方を巡る問題があります。経済社会の男女不平等が改善されなければ、職業人で構成されているロータリーの女性会員が占める割合も上がらないような気がします。

 さて、ロータリーが男女平等になったのは、わずか32年前のことです。更に未だ日本では女性会員の入会の是非が話題になっているクラブも現実にはあり、世界の現状とはかけ離れた感すらして私は残念に思います。しかし、クラブには自治権という絶対的権限があるのと、ロータリークラブが男性だけの社交クラブとして出発した歴史的事実も無視するわけにはいきません。社交クラブはその性格上、構成員の意向を尊重する必要があり、女性の入会を拒む会員が存在する以上、それを強行することはできません。

 善悪の問題ではなく、会員の意向を無視すれば親睦が崩れ、社交クラブの存在は危ういものになります。時代の変化と多様性を反対者に説得して、全員のコンセンサスを得た上で女性会員の入会を進める配慮が必要だと思います。  残念ながら1987(昭和61)年までの国際ロータリー定款第4条第3節には入会資格条件として「善良な成年男子であって、職業上良い世評を受けているもの」とありました。

  ロータリーで女性会員の入会に関してですが、次のような歴史的経過を経ています。1970年代から毎回のように、規定審議会に女性入会に関する制定案が提案されてきましたが、代表議員の賛同を受けるには至らず否決され続けました。この結果に不満を抱いたカリフォルニア州 デゥアルテRCは、定款違反を承知の上で、1978年に3名の女性会員を入会させました。国際ロータリーは、同クラブに対して定款を順守するように要請しましたがこれを聞き入れられなかったので、懲戒権を発動して同クラブを除名処分にしました。この措置に反発したデゥアルテRCは公民権運動にすり替えて訴訟を起こし、カリフォルニア州最高裁判所は国際ロータリーを支持する判決を下し、カリフォルニア州のロータリークラブでは引き続き、性別が会員の資格要件となります。しかし最終的には1987年5月4日に米国最高裁は国際ロータリーが女性を入会させたという理由だけでクラブを除名することはできないという判決を下し、RI理事会は、1989年の規定審議会に会員の条件から「男性」の文言を削除する制定案を提示して、これが採択されたことで問題は終結してデゥアルテRCは復帰しました。

 ロータリーの男女平等とは決して会員数を50%ずつに近づけるということではないと思います。また、男女比率に大きな差があるから女性会員を増やそうという考えも私は間違っていると思います。ロータリーは平等に門戸を開いており、毎週心の研鑽を例会で行っております。大切なのは男女にこだわらず、多様な会員が共存していくなかで、それぞれ自分らしく、そして楽しく過ごせるようなクラブや社会とはどういう姿なのか考えていくことなのではないでしょうか。

 今年度ジェニファー E.ジョーンズ氏が国際ロータリーで女性として初めて会長ノミニーに指名されたことは最近の明るいニュースです。心からご健勝を祈っております。

【参考文献】
RI2680田中 毅PG(尼崎RC)著:man hole より
My Rotary:ロータリーの女性会員とその歩み より
2019年手続要覧 より 内閣府男女共同参画局総務課HPより

(2021.02.24)

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