ロータリアンの広場 |
2680地区 PDG 田中 毅(尼崎西)
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初期のガバナー月信はRIからの伝達事項を紹介した記事が殆どですが、唯一、井坂孝PDGの月信はロータリーの理念について、かなりのページを割いています。 直木太一郎PDGの文献には、井坂ガバナー月信の第一号に、ロータリーの活動はその6つの綱領の達成に限るべきであり、業務遂行上の賄賂の厳禁、安易な慈善に走ったり、寄付集めに浮身をやつすことを禁止していると書かれていますが、この何十年来、日本中はもちろんRIの資料室にも赴いて、あらゆる手段を講じて、井坂ガバナー月信の1号と2号を探しましたが、未だに原本もコピーも発見されていませんので、本当に、賄賂禁止や安易な寄付禁止が記載されているか否かは謎のままです。 井坂ガバナー月信の3号以降は、現存されており、特にサービスに関する理念が、昭和8年2月23日発行のガバナー月信第8号に詳しく記載されていますので、ご紹介します。 特に職業奉仕に関しては、シェルドンの経営学に基づくサービス理念がそのまま述べられています。 なお原文は極めて難解な文語体ですので、口語体に翻訳いたしました。
人間は孤独の生活ができない群居の動物です。群居しているが故、人と人との関係が起こります。人と人との関係が起これば自分の都合のみ考えるわけにはいきません。従って群居の状態を良くするためには、各自が人のために役立つことを考えなければならなくなります。人のために役立つことを英語では、「サービス」と言います。ロータリーはサービスを以って、人間活動の根本観念する運動です。この運動を達成する目的をもって実業人が集って、自己の業務を通じてサービスを行う組織がロータリークラブです。 サービスは実業人だけではなく、政治家も宗教家も教育家も学者も皆、必要です。 しかし、ロータリー運動は実業人の運動なので、ロータリークラブは実業に従事している人々の中より、一業に付き一人に限って、会員を選考して、協力して各自の業務を通じて社会人類に貢献する、即ちサ ービスを行う団体です。 その目的は、前述の通り、サービスですが、ただ、サービスと言っただけでは漠然としているので、これを具体的に示すために、次の6項に分けて規定しています。 サービスの概念を一切の企業の基調とすること。 各業務における道義的標準を向上すること。 私生活、業務の執行、社会生活において、サービスの観念の応用に努力すること。 サービスをなし得る機会を作るため、交友を広めること。 一切の業務の価値を認識し、社会にサービスを行う機会を与えるために、自己の業務を尊重すること。 サービスの概念の下に結合された、実業人の世界的友好に依り国際間の平和の促進に努力すること。 ロータリーの根本となるのが、各自の業務を通じて社会人類にサービスをすることであり、これをヴォケーショナル・サービスと言います。 今日世界一般に於いては、ほとんどの企業は利益を目的にしています。仮に、事業の計画を発表して株を募る場合に、この計画の第一の目的はサービスであって、利益は第二であると言えば、株を買う人はいないかもしれません。しかし、その事業がもし社会人類に対するサービスにならないものならば、おそらくその事業は成立しないでしょう。サービスになればなるほど、その事業は繁盛するわけですが、一般の人は利益第一主義で考えますから、サービスと利益が衝突するように見える場合は、サービスを捨てて、利益に走るようです。我々はその事は間違っていると考えているのです。サービスを捨てて、利益に走るものは、結局は真の利益を獲得しないと思います。 また、業務に於いて、サービスをすることは、その適用の範囲がすこぶる広範です。例えば製造工業ならば最善の方法によって最低のコストで最良の製品を作り出すことがサービスです。その製造に携わる職員や労働者の最善の能率を発揮させるためには、それに適応した最大の報酬を与えることもサービスです。なぜならば、人間の活動を有効に活用した結果、最大の報酬を支払うことが可能になれば、従業員も幸福を享受することができるからです。 品物を販売するに当たっては、世間を欺瞞するような、また、競争者を不当に傷つけるような宣伝広告をせず、フェア・プレーでいくことも、またサービスです。何故ならば、これによって、広告宣伝に対する一般公衆の信用を確立し、最小の販売費によって最大の結果を得ることができるからです。このようにして、その事業に関係ある全ての人に満足を与えることができるのです。 理屈は簡単ですが、実行は簡単なものではありません。我々ロータリアンはその実行に於いて種々苦労努力を重ねているのです。これは製造工業に関する一例ですが、いかなる業務においてもこの理屈は通用するのです。 ロータリーにおいては、この結果を”He profits most who serves best”と結論付けています。
(注)井坂 孝 スペッシャル・コミッショナーを経て、1931〜1933年ガバナー 横浜
(2018.11.02)
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