ロータリアンの広場


「Service, Not Self」
2680地区 PDG 田中 毅(尼崎西)

田中 毅PDG

 ロータリーが創立されて110余年を超え、ロータリアンにとって、精神的・実務的な拠り所であったアーサー・F・シェルドンの He profits most who serves best という経営学に基づくサービス理念が忘れ去られ、代わりに対社会的奉仕活動を意味する Service Above Self がロータリーの基本理念になってしまった。
  Service Above Self の原型として、最早、誰も関心を抱かない古典的なモットー Service, Not Self について、未だにこだわり続けている人がいると聞く。曰く「Service, Not Self 即ち無私の奉仕は、己を捨てて、他人に奉仕するという崇高なモットーである。」・・・と。更に、このモットーは、ミネアポリス・ロータリークラブの会員である弁護士フランク・コリンズが提唱したものである・・・と。

 1935年に出版された The Story of Minneapolis Rotary によると、1905年に設立された Minneapolis Publicity Club のメンバー180名を中心にして、1910年に Minneapolis Rotary Club が作られたと記載されている。このMinneapolis Publicity Club のモットーが Service, Not Self であり、それをMinneapolis Rotary Club が引き継いだものと思われる。
 Minneapolis Publicity Club は会員の殆どがロータリーに移籍したために、一旦消滅したが、その後、AD Fed MN ミネソタ広告連盟と名称変更をして、順調に活動を展開し、2015年には創立110周年を迎えたことがウエブサイトで報告されている。

 1911年の第2回全米ロータリークラブ連合会におけるスビーチの中で、フランク・コリンズは、自らの職業を果物卸売業であると述べると共に、今まで会員同士の互恵取引を一般の人にも拡大すべきだと語り、ロータリーの会員が顧客を紹介してくれたお陰で、8,000 ドルを超える不動産取引が成功した例をあげ、「私たちのクラブを象徴する言葉こそService, Not Self である。」と述べている。すなわち、今まで行われていた会員同士の互恵取引を、会員外にも拡大しようというモットーに過ぎない。

 このように、ミネアポリス・ロータリークラブの25周年記念誌、コリンズのスピーチ原稿、ミネソタ広告連盟のウエブサイトという一次資料によって、Service, Not Self がロータリーに導入された経緯とその意味が明確になっているにも関わらず、未だに、Service, Not Self が無私の奉仕だという崇高なモットーだという人がいるのは、1966年に元シカゴ・クラブ会員であったOren Arnold が書いたGolden Strand の誤った記述と、それをそのまま鵜呑みにして、さも真実のように語り続けた一部のロータリー指導者にある。

 Golden Strandはロータリーの雑学が満載されていて、読み物としてはとても面白いものであるが、後世の人が伝聞を交えながら書き綴った二次文献に過ぎず、その内容は間違いだらけの、危険千万な代物なのである。なお、1984年にイギリスのロータリアン Devid Nicholl が書いた Golden Wheel も同様な二次文献であり、シェルドンを悪しざまに罵る内容である。

 かつて私が属していた私的団体千種会はGolden Strandをテキストとして使用していた。特に「ロータリー発生史」は、Golden Strand の内容を一字一句そのままコピーしたものであることは、後日私がこの本を翻訳した結果判明した事実である。更に、50数冊あるシェルドンの文献の内、ただ1冊、Rotary Philosophy のみを読んで、不遜にもSheldon Society を名乗り、その名称を入れたエンブレムを配布している。それ以外のシェルドンに関する説明は全てGolden Strand から引用したものであって、間違った記述が多い。さらに、Service, Not Self は中世キリスト教精神に基づく無私の奉仕を意味すると、誤った解説をしている。

 私は日本に於けるロータリーのサービス理念が、このような二次・三次資料によって語られることを憂い、1997年に千種会を退会し、1999年に「ロータリーの源流」、2005年に「源流の会」を設立して、RI本部、アメリカの図書館目録、古本屋のネットワークを通じて、50数冊のシェルドンの著作と講演録、過去の国際大会議事録全巻、The Rotarian誌全巻、アメリカ著名クラブの記念誌、その他30000点にのぼる資料を収集して、それを「源流の会アーカイブス」を通じて、ロータリアンに提供している。お陰様で、会員数は350名を超え、千玄室PRIPをはじめ35名のパストガバナーを顧問として迎え、ロータリーの正しいサービス理念、特にシェルドンの経営学に基づくサービス理念を伝えるための活動を続けている。

 1915年、ミネアポリス・ロータリークラブの Allen Albert がRI会長に就任したことによって、Service, not self が使われたが、この言葉がロータリーの公式文献中に正式に登場するのは、1916年にサンフランシスコで開催された国際ロータリークラブ連合会年次総会で、ガイ・ガンデカーが書いた A Talking Knowledge of Rotary が全会員に配布され、この文献中にロータリー・スローガンとして He profits most who serves best と Service, not self のフレーズが引用されていることに因る。しかし、彼は He profits most who serves best についてはかなり詳しい解説を試みているが、Service, not self については、そのフレーズを引用しているだけで、解説は一切加えていない。

 なお当時には、 Service before self というフレーズも存在し、まさに言葉遊びの状態であった。その中で生き残ったフレーズが Service above self だと言える。
 誰が Service, not self に自己犠牲に基づく他人への奉仕という間違った解釈をつけたのかは判らないが、その間違った解釈を信じた人たちが、「それでは困る、自己の存在を認めた上で、他人のために奉仕する」に変えてもらいたいということで、現在我々が慣れ親しんでいる全く別なスローガンService above selfを作り、それがロータリー・モットーとして、1950年のデトロイト大会で承認され、更に2005年、ステンハマーRI会長が会長テーマとして採用して、現在のロータリーに定着したと考えるのが自然ではないだろうか。なお、Service above self というフレーズについては、誰が、何時、どのような意図をもって作ったのかは、記録が残っておらず、不明である。
 確固たる信念を持った、経営学に基づくサービス理念 He profits most who serves best が忘れ去られ、出所不明、意味不明のフレーズがロータリーのモットーとして定着していることに疑念を抱く人はいないのだろうか・・・・

(2018.12.20)

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