ロータリアンの広場


シェルドンの職業奉仕理念
モットーの真意 1
2680地区 PDG 田中 毅 訳(尼崎西)

田中 毅PDG

 職業奉仕とは何でしょうか。結論から述べると、職業生活を営んでいく上で、自らの事業に関連する関係者( 顧客・従業員・取引業者 )を対象にして行う全ての活動を総称して、職業奉仕と呼んでいます。 従って職業奉仕の活動の場は、自らの職場だということになりますし、奉仕活動の主人公は、事業主であるあなた自身だということになります。そして職業奉仕の成果は、これらの関係者全員に及びます。 この考え方を最初に提唱したのは、アーサー・フレデリック・シェルドンであり、それを具体的に表すモットーとして作られたフレーズが、「He profits most who serves best 最も多く奉仕する者、最も多く報いられる」です。

 なお、このモットーは、元来、1902年に創立された、シェルドン・スクールのために作られたモットーであり、「The Golden Rule 黄金律 Do unto others as you would have them do unto you 貴方が他人からしてもらいたいことを、先に他人にしてあげなさい」を経営学に基づく奉仕理念に基づいて分かり易く言い直した文章なのです。 「He profits most who serves best」はRIの公式モットーですから、その存在を知っている人はかなり多いと思いますが、その作者がシェルドンだということを知っている人は、日本以外では皆無に近いのが、現実の姿です。ましてや、このモットーの真意を理解している人は数少なく、RI自身も職業奉仕に関しては関心が薄い上、「クラブが行う職業奉仕」など、矛盾に満ちた解釈を押し付けているのが現状です。

 シェルドンの業績は、その影響範囲が限られていたため、過小に評価されていますが、当時、誰一人として知らなかった修正資本主義という、全く新しい経営学に基づく経済政策が、もしもロータリアンの世界やシェルドン・スクールといった狭い社会に留まらず、政府のマクロ経済として採択されていたら、その後の世界の政治や経済にどのような変化をもたらしたか、想像は果てしなく広がります。少なくとも世界大恐慌は起こらなかっただろうし、その結果としての第二次世界大戦も起こらなかった可能性もあるのです。    職業奉仕をVocational Service と敢えて宗教色を付けて訳したのはイギリスのグループであり、シェルドン自身はVocationは使わず、Business, Occupation という用語を使っています。

 イギリスやアメリカの保守的層は、「He profits most who serves best」はマックス・ウエーバーの影響を受けた、プロテスタントの考え方という解釈をする人が多いようです。しかし、マックス・ウエーバーが「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を書いたのは1905年であり、シェルドンがこのモットーを作ったのが1902年であることから、明らかな錯誤であることが分かります。更に、後に述べますが、シェルドンは「神」という言葉を敢えて使わず、唯物論的に経営学を説いていたことからも、宗教的なバックボーンはないと考えざるを得ません。従って、神の存在を信じる欧米人の心からは、シェルドンの存在は急速に無視されていったように思われます。

 日本では、戦中戦後の一時期、RIを離れていた関係や、当時の敵国人であったシェルドンの思考を説くわけにもいかず、もっぱらも二宮尊徳や石田梅岩や近江商人の例を出して職業奉仕を語った経緯があります。そして、その傾向は今なお続いているようです。

 このように、職業人の集団であるロータリアンとして最も大切な職業奉仕が、信憑性のない個人的な主観で語り継がれてきた挙句、職業奉仕の概念すらも消え去ろうとしているといっても、過言ではありません。  このような状況から脱して、シェルドンの考えを正しく理解し、それを伝えるためには、彼の文献を集めてそれを解析することにあると考え、15年かけて、シェルドン・スクールの教科書やシェルドン出版社発行の雑誌など約350冊を収集し、順次翻訳作業を続けています。シェルドンの文献は殆んど全て集まったので、この収集に関しては、多分世界一であろうと自負しています。

(2019.03.20)

===== モットーの真意(2)   モットーの真意(3)=====

「シェルドンの職業奉仕理念 モットーの真意 1」PDF版 ダウンロード

「ロータリアンの広場」トップページ


上記内容に関してコメントができます。
コメント投稿には「Facebook」へのログインが必要です ▼