「徳のある経営」
![]() 2650地区 GN 刀根荘兵衛 |
先日あるクラブの会長から、「昨今のロータリアンによる不祥事件がマスコミ等で報道され、新会員を勧誘するに当たって大変苦慮している。ロータリーの指導者、なかんずく地区役員などは一体どう考えているのか」という厳しい質問がありました。言われるまでもなく、ロータリアンたるもの倫理道徳に対してより厳しい基準を持たねばならないのは当然と考えております。
日本の商道の開祖といわれている、石田梅岩(江戸時代1700年ころ活躍)は『徳』のある商売の大切さを広く世に広めました。梅岩によれば、商人は仁、義、礼 智 が備わっていれば 信を生み、その結果、お客様の信用、信頼が得られて、ますます商売は繁栄すると言うことであり、これを兼ね備えれば信を生み、商売を繁盛させるということになります。
(「仁」とは他人を思いやる心、「義」とは 人としての正しい心、「礼」とは 相手を敬う心、「智」とは知恵を商品に生かす心)
また、わが国近代経済社会の基盤を築いた渋沢栄一も『道徳経済合一論』を唱え、利益の追求も資本の蓄積も同義に合致し、仁愛の情にもとらぬものではなければならないと訴えています。彼は右手にソロバン、左手に『論語』と言う、当時の経済界で正しい倫理的価値観を持つ必要性を主張しました。
また、ダスキンの創業者鈴木清一氏も「道と経済の合一」を願う祈りの経営を生涯を通じて追求し、「喜びのたねを蒔こう」、「自分に対して損と得があらば、損の道を行くこと」「大感謝は 大御利益をもたらす」と仰られております。
このように日本に古くから脈々と受継がれている商人道の根底にある思想はまさに、シェルドンが主張したロータリーの職業奉仕理念に通ずる考え方だと思います。
ところで、最近の脳科学の研究で、人間の脳には「他人のために何かをする」という利他的な回路があることがわかってきており、他人に「与える」ことは自分が「与えられる」のと同じような嬉しさが脳の中に現われると言われています。更に、脳内のドーパミンという『快楽』を生み出す物質は、できると分かっていることや他人から強制されたことをやっても放出されず、できるかどうかわからない、越えるべき障害が高いことに、それを成し遂げたときに大量に分泌され、非常に大きいな喜びを得ることができるということも分かってきました。
西村二郎パスト・ガバナーはロータリアンが利他の心をもって奉仕を行うことは、喜びや感動を得ることになり、結果的にこの感動がロータリアンの心の「癒し」にもつながっていくことを我々に教えられました。
「自利利他円満」と言う言葉がありますが、このように自分と他人の利益が重なることが本望ですし、そのように考えますと、日常生活や職業活動も『修行』をする場であり、そのエネルギーは「思いやり」というものではないだろうかと思います。
平澤興パスト・ガバナーはかつて「ロータリークラブの例会は、恕の心と、拝みあう心を身につけるために最も優れた場なのです」と教えられました。 平澤パスト・ガバナーが言われる「恕」は、「相手を許し、思いやる心」ということだろうと思います。
このように考えていくと、ロータリーの「奉仕の理想」は現在の市場経済資本主義に対するひとつの解毒剤であるようにも感じます。
これからの時代は規模の大小ではなく、お客さまにとって「どうしても大切にしたい会社」、「志」の高い会社が生き残っていくのだろうと思います。
いま、ロータリーが国際的なボランティア団体へと突き進んでいる中で、またこの世界的な100年に一度と言われる大不況の時代だからこそ、日本から「徳のある経営哲学」を発信する大きなチャンスではないかと思います。
2014年02月07日