ロータリアンの広場


『ロータリアン 二宮尊徳翁』
日本の奉仕観の底流にある思考
2510地区 PDG 塚原房樹(札幌東)
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2510地区 塚原房樹PDG

 今年度のホアンRI会長は、「私は儒教の祖、孔子を世界最初のロータリアンと呼んでいます。孔子はロータリーが創立される2500年前の人物であるにもかかわらず、ロータリーの考え方と彼の考え方が非常によく似ているからです」とRI会長就任の際に述べられました。孔子がその中心にすえたのは、「仁」すなわち人を思いやる人間関係の基本でした。
 昨年の暮れに小田原の報徳二宮神社に参詣する機会を得ました。神社の入り口に、最近見られなくなった薪を背負って歩きながら本を読む二宮金次郎少年のブロンズ像がありました。皆さんは金次郎少年が読んでいる本を御存じでしょうか。二宮金次郎少年が読んでいる本は孔子が提唱した儒教の経書の一つ「大学」です。「大学」は天下を治める治世の根本原則を述べています。

 従って江戸時代後期の農政家、思想家であった二宮尊徳翁の報徳=奉仕の訓えにも儒教の「仁」が根底にあります。尊徳翁は「我が宗教は神道一割,それに儒教、仏教各半々ずつを加味したもの」であり、神道は社会のために力を尽くし、儒教は人の道を全うし、仏道は慈悲を行うものであるといわれました。
 私はかねてより二宮尊徳翁を日本のロータリアンの祖と考えていました。「人もし何か欲するところあるならまず他人のために働くがよい。そうすれば必ず人に報いられて願望を満足するであろう」。二宮尊徳翁はシェルドンの80年前に誕生、すでに「もっともよく奉仕するもの、最も多く報いられる」というシェルドンの奉仕コンセプトを提唱していました。

 また尊徳翁の道徳経済一元論、「道徳なき経済は犯罪である」「経済無き道徳は寝言である」という言葉は、ロータリーの実践倫理運動の一面をよく表しています。ホアンRI会長(台湾)と尊徳翁(日本)の共通点は根底に儒教の訓えがあります。また韓国も儒教を信奉している国です。従ってこの東アジアの三国のロータリアンの奉仕哲学の根底にあるものは、五常(仁、義、礼、智、信)の徳性を拡充することにより、父子、君臣、夫婦、長幼、朋友の五倫の道をまっとうすることでありました。

 現在、企業の倫理や存在価値が問われるなか、国際標準化により「コンプライアンス」や「CSR」など、海外からの思想や経営論などが取り入れられておりますが、日本には江戸時代から、「財政再建」「格差」「貧者救済」「自然との共生」など、現代が抱える諸問題を神・儒・仏をあわせた「日本人の心」を持って考え、実践し、そして復興に導いた二宮尊徳翁がいたのです。  次回は日本とアメリカのロータリーにおける「奉仕観」の背景について申し上げます。

(2015.03.23)


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