ロータリアンの広場


「職業奉仕の終焉」
今年度から始まった「会員特典プログラム」
2510地区 PDG 塚原房樹(札幌東)
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2510地区 塚原房樹PDG

 すでに、御存じの方もおられると思いますが、ラビンドランRI会長が、サンパウロでの国際大会最終日に、突如今年度の7月1日から新たに導入される会員特典プログラム「ロータリー グローバル リワード」に関する次のような発表をされました。
『ロータリーの会員は世界中の数百もの企業・ビジネスから提供される特典を利用でき、参加企業の数は現在も増えている」このプログラムには、「ロータリアンが日々の生活のさまざまな場面で利用できる特典が含まれており、利用の度に財団に寄付が送られる特典もあります」そして、このプログラムは、会員の満足度を高めて会員増強につなげることを目的としています』
 組織にとって会員数の停滞は衰退と死の始まりであります。そこで起死回生の策としてこのような特典プログラムが生まれました。これを知って、職業奉仕論に固執するネオコンロータリアンの私は、ついに「来るべきものが来たか」という思いが一瞬頭をよぎりました。しかし、このプログラムは唐突に現れたものではなく、その前に数々の伏線がありました。以前から職業奉仕はRIでは死語となり、すでに落日の職業奉仕となっていました。
 2011年 11 月RI理事会は、地域社会のリーダーや、退職した人や、現在専門職や仕事に従事していない人が含まれている、現在の多様なロータリー・クラブの会員に配慮して、ロータリー・ブランドを強化するために『ロータリアンの職業宣言』を修正して、職業人にも一般の人にも通用する『ロータリー行動規範』を創設しました。このことは事実上職業奉仕の終焉であります。
 次いで、2014年10月の理事会において、ラビンドラン会長エレクトの提案によって、ロータリアン同士の物質的金銭的な相互扶助が認められるようになったため、長年ロータリー運動の精神的支柱であった「事業や職業における特典をほかのロータリアン に求めない」という「職業奉仕の中核精神」が消えてしまいました。

 次いで、各地区のガバナー宛にラビンドラン会長より『サンパウロ国際大会にて発表したように、2015年7月1日より、新しい会員特典プログラム「ロータリー グローバル リワード」が全世界で開始されます。各地区でこのプログラムの周知と推進を行うために、皆さまのご協力を賜りたく「地区ロータリー グローバル リワード委員長」を7月15日までにご任命ください。この重要な会員特典プログラムの開始にあたり、皆さまのご協力を何とぞお願いいたします』というメールが届きました。
 これによりロータリーの使命を日本人が職業倫理に求め、アメリカのRI本部が財団拡充に求めるという意識の違いが明瞭になりました。RI会長の方針は尊重されるべきであります。
 しかし、源流の会の皆さんは、「ロータリーリワード」に対して、ロータリーのリーダーとしてどのようなご意見をお持ちでしょうか。新しい酒は新しい革袋にという言葉の通り、このRIの変化を容認されているのでしょうか。あるいは等閑に付されている方もおられるでしょう。日本のロータリアンにとって職業奉仕というのは愛の実践であって、あくまでも「個人の規範」たる倫理の問題です。
 しかし我々職業人はRIという集団の構成員として組み込まれています。集団には集団を維持、発展させなければならぬという使命があります。この使命に応えるのが集団構成員に課せられた義務であって、これが「集団の規範」たる道徳です。
 ここで問題になるのは、理想的な社会としては本来、愛の実践という「個人の規範」が優位に立つべきなのに、これは心の問題にとどまり、現実の社会は権力を伴う「集団の規範」が上位にあるということです。
 問題は、個人の規範と集団の規範の乖離をどうするのか、どうアウフヘーベンするのかということでしょう。ラビンドラン会長により、ロータリーの金看板は降ろされました。源流の会の諸賢の方々はどのようにこの問題をお考えでしょうか。各クラブからこの問題についての質問があれば、どのようにお答えになるのでしょうか。お聞かせいただければ幸いです。
 私は次の機会にこの問題を、理念的に、組織体として、経済史的な視点から考えてみたいと思います。

(2015.08.04)


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