ロータリアンの広場


「転轍手待望論」
2510地区 PDG 塚原房樹(札幌東)
PDF版 ダウンロード

2510地区 塚原房樹PDG

 「奉仕」「増強」「財団」というロータリーの「お守り言葉」を離れて、もっと広くロータリーを社会科学の目で眺めてみるとロータリー運動の別の面が見えてきます。

 ロータリーは110年の歴史の中で何度かパラダイムシフト(社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化すること)を経験しました。 1905年、初期資本主義が独占体制のピークを迎え、資本主義の欠陥が至る所に現れたそのパラダイムシフトのさなか、シカゴの街でロータリーは生まれました。何か社会のためになることをしようと小事業主4人が集まりました。ロータリーの誕生です。ドイツの社会学者ウェーバーによれば歴史上、パラダイムシフトが現れた時代には、預言者が転轍手(軌道を変える人、ポイントマン)の役割を果たすといわれています。 20世紀初頭のシカゴは資本主義の欠陥溢れる街でした。その資本主義の発達というパラダイムシフトのさなか、ポール・ハリスが転轍手の役割を背負って登場しました。

 米山梅吉さんには3人の御子息がおられました。三男の米山桂三氏は慶応大学の教授でした。「父を語る」という手記の中でロータリーの誕生の模様を次のように書いています。『ロータリー運動というものは、社会経済史的に見て、資本主義の発達という歴史的必然と、資本主義の欠陥を救おうとする人物の出現という、歴史的偶然との交錯したところで生まれた運動である』もちろん資本主義の欠陥を救おうとする人物とは、ポール・ハリスのことです。 ロータリーは誕生の時から資本主義の欠陥を救う宿命にあったのです。

 当時のロータリアン達は、職業奉仕の理念である厳しい『道徳律』を真摯に学びました。そして彼らの志すところは、資本主義が人間を食い物にすることだけは許すまいということでした。もちろんロータリーは精神運動ですから、どの程度の効力があったのかは定かではありませんが、資本の論理の勝手な横行に一応のブレーキはかけられました。 しかしそれにもかかわらず、ロータリーは変化する世界の流れを変えることはできませんでした。ロータリー自体も組織の拡大、膨張に伴って奉仕の目標も変質してしまいました。

 そして現在、我々は国際ロータリーの大きな方針転換により、ロータリーの中心概念の変化というパラダイムシフトに遭遇しました。RIでは手段を選ばぬ会員増強が至上命令となり、ついに長らくロータリーの指導指針であった職業奉仕の理念はなくなりました。職業奉仕は日本のロータリアンのDNAです。我々はいかにすべきでしょうか。 RIが世界的な人道団体へと大きく変化して、職業奉仕の精神が失われた今、ロータリーの発展を支えてきた職業奉仕こそ、ロータリーの普遍的な価値観であるということを日本から世界へ発信すべき時ではないでしょうか。

 この先ロータリーはどこへ行くのでしょうか。私の畏敬する佐藤千寿さんの言葉を頼りに三つの道を占ってみましょう。

《考えられる第一の道》
 たとえロータリーの会員数が減少しても、かつてのポール・ハリスのような「転轍手」が現われて、かつてのロータリーの思想や理想の力強い復活が起こり、人間の営みが続く限り、職業奉仕こそロータリーの永遠の中心課題であるという点に目覚めること。

《考えられる第二の道》
 ロータリーも今ではいよいよWe serveを標榜するライオンズと同様になり、その路線の相互乗り入れも行われるようになる。双方のクラブの会員になることも許され、最終的には世界最大の奉仕団体を誇示すべく両者の合併も考えられる。

《考えられる第三の道》
 各地域がそれぞれ大幅の自由裁量権を持つ半独立組織となり、国際ロータリーは連邦政府の役割を果たすという制度。R.I.B.I.は先見の明がありました。
 理念において、またその行動規範において、成熟社会と未成熟社会を全く同一に律しようとする処に、そもそも無理がある。価値観の分裂、多様化に対処するためにこれが妥当な道かもしれません。 

 許されるなら、ウェーバーの言うように、我々が今抱えているロータリー内部のパラダイムシフトに正しい軌道を示すことのできる転轍手・ポイントマンの出現を熱望したいものです。

(2016. 3.28)

「転轍手待望論」 PDF版 ダウンロード

「ロータリアンの広場」トップページ