ロータリアンの広場 |
2510地区 PDG 塚原房樹(札幌東)
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社会セクター、非営利セクター、NPO、呼び名は何でも構いませんが、そうしたセクターの出現は近年の現象です。これは昔から続いてきた慈善事業とは全く違います。慈善事業が目指しているのは人々の苦しみを和らげることであって、これが慈善活動をしている人々の心の癒しになっています。けれども慈善事業によって、その施しを受ける人の人生が変わり、それが永続的に続くなどという幻想はだれ一人、これっぽっちも持っていません。 慈善事業はおよそ、150年ほど前に活動が始まりました。その後、ロータリーが誕生したころ、資本主義の欠陥あふれたシカゴの街にセツルメント運動、女性キリスト教禁酒同盟、救世軍などの社会改良運動が数々現れました。それらの中で救世軍のスープ接待所に注目してみましょう。 スープ接待所は今夜一晩、貧しい人々の飢えの苦しみを和らげるためにある、それが活動のすべてです。そしてその必要性がなくなることはないでしょう。街角に二人の子供を抱えた貧しい女性がいたとします。スープ接待所がこの三人に食事と一晩夜露をしのぐ場所を与えます。少なくとも今夜だけは、この貧しい女性と二人の子供は十分な食事をとって、おなかをすかせたまま眠りにつかなくて済むのです。
これは苦しみを和らげることであって、生活を変えることではありません。そして、そうした必要性が消えてなくなることはないでしょう。必要最低限はそれでいいのかもしれません。 ロータリーの会合で、ロータリアンから、「近年のロータリーは会社経営と同じですね」という言葉をよく耳にします。非営利組織となった現在のロータリーを理解する近道は、ドラッカーの非営利組織のマネジメントを学ぶことです。つまり企業と同じくロータリーの世界をビジネスの世界としてとらえ、「経営とは何か」というビジネスの論理を、ロータリアンは理解しなければなりません。 経営の神様、ドラッカーは50年前から、病院、大学、オーケストラなど「非営利活動の経営」に取り組んできました。最初のころそれらの人たちは驚いていました。「私たちが経営しているのは非営利組織ですよ。何のために経営しろとおっしゃるのですか。経営が必要なのは、ビジネスの世界ではありませんか?私たちは粗利益のことなど考えていませんよ」そこでドラッカーはこんな風に答えました。「損益を考えていらっしゃらないからこそ、ますます経営というものが必要になるのです」 ロータリーはもちろん、あらゆる組織には戦略を考え抜くためのヘッドクォーター的組織が必要です。つまり組織のゴールを実際に達成できる手段を考える組織です。 財団法人を中心に活動する国際ロータリーの最高責任者(CEO)は目標を設定し、その後の行動計画と予算に責任を持ちます。理事会は事業を執行する部門に対し、計画ではあまり干渉せず、柔軟に対応するのが望ましく、成果を導くための人材や資金の配分、事業の進捗状況と業績評価について責任を持ちます。事業の執行部門は、事業の実施、目標、行動計画、予算に責任を持ちます。 ロータリーはかつて情緒的自由結社でした。しかし今はロータリー財団の使命達成のために、募金活動を主体とした非営利組織となりました。ロータリアンはもはやボランティアではない、非営利財団法人のために募金活動を行う無給のスタッフとなりました。立派な心構えだけでは足りないのです。ロータリアンは組織の経営手法として戦略計画とマネジメントを学ばなければならないのです。 次回は、寄付に対する日米の違いを述べてみます。
参考・文献
P・F・ドラッカー著 非営利組織のマネジメント (2020.04.04)
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