ロータリアンの広場


『職業奉仕はロータリーの生命維持装置』その1
2510地区 PDG 塚原房樹(札幌東)
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2510地区 塚原房樹PDG

《ビジネスとノンビジネス》
 営利組織=ビジネスは利益が結果のすべてです。構成員は利益の中から生活の糧を配分されます。構成員の行動は、利益追求のための行動となります。企業の場合は、「利益」という分かりやすい尺度があるので、利益追求のメカニズムは単純です。どんなに社会的に意義のある活動をしていても、利益を上げられなければ企業は存続できません。
  しかし、ロータリーは非営利組織=ノンビジネスです。この場合は、利益に相当する明瞭な尺度はありません。つまり、非営利組織(以後NPO)は損益という明確なコンセプトがなく、ビジョンを共有するロータリアンの「自発的な寄付行為」のみによって支えられています。だからこそ、NPOにはマネジメント以前に大事なものがあります。それはパートナーの自発性を鼓舞するために「多様な物語」をマネジメントに織り込む必要があります。
 NPOの無給のスタッフとなったロータリアンは、NPOのパートナーとして、組織の使命達成のために努力を惜しみません。その努力を支えるエネルギー源は、自発的なモチベーションにあります。「ロータリーの目的」(綱領)にあるとおり「奉仕の理念」を奨励し、育むことにあります。彼らの奉仕理念を鼓舞するものは、フェローシップに裏打ちされた同志としての連帯感です。それは何によって生まれるのでしょうか。

《自発性と連帯感を強めるもの》
 どんな組織にも活動を始めた時の神話があります。その「物語」を共有することによって、同志としてのきずなが生まれます。我々はロータリーの物語を消してはならなりません。ロータリアンの心を鼓舞し続けて120年を経ても、ロータリー誕生の物語は今も、ロータリアンの胸に熱い灯をともし記憶されています。どのような志でスタートしたのか。誕生の時の難局をどう乗り切ったのか、時代の荒波をどのようにして切り抜けたのか。会員減少の危機を救ったのは何だったのか。「そのような物語が、ミッション達成のためにパートナーとしての連帯感を高め、救いを待つ顧客へのフィードバックを強力なものにしていきます」
 我々は、より良い世界を築こうと、どれほど多くの不幸な人々に救いの手を差し伸べてきたことでしょうか。その努力を支えてきたエネルギーの源をたどれば、カルバンの職業天職論にまでさかのぼります。天職論に基づき、初期のロータリアンが開発したのは輝かしいロータリー哲学、「職業倫理訓」であり、「決議23-34」でした。
 1929年の世界大恐慌の中でもロータリアンは、職業倫理訓を信奉してきたおかげで倒産を免れ、ロータリーの職業奉仕の存在価値を世に広く知らしめました。その結果、ロータリーの職業奉仕は不況に強い哲学だと評判になり、入会者が後を絶ちませんでした。職業奉仕はロータリーの生命維持装置です。この認識を忘れてはなりません。NPOのマネジメントに力点を置きすぎると、奉仕の心も干からびそうになる時もあるでしょう。そのような時、ロータリーをロータリーたらしめてきた職業奉仕の輝かしい栄光を我々の心は求めているのです。先輩が築いてきた偉大な幾多の「奉仕の物語」は、我々の心に潤いと力を与えてくれます。

(2020.05.06)

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