ロータリアンの広場


「新しい酒は新しい革袋に盛れ」
2510地区 PDG 塚原房樹(札幌東)
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2510地区 塚原房樹PDG

 12月17日にロータリーの未来形成「Shaping Rotary’s Future」のオンライン会議が開催され,日本のロータリーの指導者に(少し大げさですが)激震が走りました。かねてより予想はしていましたが、RIのガバナンスもいよいよそこまできたかという思いに駆られました。 しかし「未来形成委員会」の提案は官僚支配となったロータリーにとっては至極当然の成り行きです。ポールハリスは「ロータリーがしかるべき運命を切り開くには、私たちは常に進化し、時には革命的にならなければなりません」といいましたが、その言葉の通りロータリーは、ロータリークラブが主人公でしたが、西暦2000年「ミレニァムイヤー」を機にロータリークラブに替わり、RIの官僚が主人公となりました。組織の支配者層の交代を革命といいます。革命というと武力闘争が想像されますが、もちろん、今回のNPO革命はRI理事会主導の無血革命といえます。

 100有余年の間、「人生の道場」として職業人が信奉してきた情緒的結社であるロータリーは、官僚支配の非営利財団として革命的に変わってしまいました。我々はロータリーに対する旧来の認識を新たにしなければなりません。ロータリー革命以前の職業奉仕、ロータリー道徳律、決議23-34の根底にあるロータリー哲学はもはや過去の歴史的資料となりました。ロータリーを隆盛に導いた比類なき「職業分類制度の原則」と例会への「規則的出席」もないがしろにされ、地区組織もグローバルなガバナンスモデルが提案されました。革命とは過去の思想、体制の否定です。 RIの未来形成委員会の

 新しいガバナンスの提案は、辰野RI理事の言葉を要約すると、「地区はなくなり、世界を102の地域にする。日本はその一地域となり地域リーダーが配置される。2030年にはガバナーを廃止」ということでした。 『新しい酒は新しい革袋に盛れ』(マタイ伝)にあるこの言葉は、組織の体制が変わり、新しいガバナンスを実行するには、それに応じた新しい形式が必要だということです。いつまでも古い形式にばかりこだわっていてはならないという「例え」でしょう。 ロータリーの未来形成プランは、非営利組織となったロータリーの新しい革袋なのです。

 ドイツが生んだ今世紀最大の思想家、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の著者M.ヴェーバーの『支配の社会学』によると、
@「官僚制」とは「合法的支配」の最も合理的な純粋型である.
A「合法的支配」は「法の支配」であり,制定規則の順守が貫徹される

 組織への協力は標準化された手続を順守し,標準化の完成度を高めることにあるとあります。組織の標準化とはグローバリズムにあります。グローバリズムの特徴は世界規模での単一性・効率性・同質性・経済性の増進にあります。 まさに今回のRIによる「未来形成」の発議は、官僚制によるグローバルな組織の標準化にほかなりません。ロータリーの未来形成について「それはおかしい」とか「それは我々の目指す方向ではない」と云う職業奉仕に固執するネオコンは淘汰整理されるでしょう。もちろん、ロータリーの未来形成のガバナンスを受け入れ新しいロータリーとともに歩むという選択肢もあるでしょう。

 ロータリーが非営利組織となり、かつてのロータリーの栄光が失われるということが、避けられない事実となっても、その事実に対してどんな態度をとるか、その事実にどう適応し、その事実に対してどうふるまうか、『夜と霧』の著者フランクルは、「その運命を自分に課せられた「十字架」としてどう引き受けるかに、生きる意味を見いだすことができる」と云いました。態度価値とは、人間が運命を受け止める態度によって実現される価値であります。

人間に残される最後の自由は、自分の態度を選択することだ。

(2020.12.28)

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