ロータリアンの広場


『湯川博士と般若心経』
2510地区 PDG 塚原房樹(札幌東)
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2510地区 塚原房樹PDG

 千種会の小堀憲助先生は、「決議23-34号は、ロータリーの思想体系を整理した最初にして最後のドキュメントであります。それは、ロータリーの世界における『般若心経』ともいうべきものであり、キリスト教のバイブル、道元禅師の正法眼蔵のように時代の変遷に耐えるものとして、全てのロータリアンの心の支えとなるものであり、正に思想が結晶化したものであります」と述べられております。

 ノーベル物理学賞の湯川秀樹氏のエッセイに「ノーベル賞を受けた中間子理論のヒントは、『般若心経』にある色即是空によって現代物理学が見事に説明できるのです」とあります。中間子理論がターニングポイントとなって、物理学は今日の素粒子論に発展してきたわけですが、それが般若心経の「空」と見事に一致するのです。 湯川さんがノーベル賞を受賞されたのは終戦直後のことでした。戦後の日本民族全体が、民族としての歴史や文化すべてに挫折感をおぼえて、それを放棄した状態の時に、ノーベル賞受賞という輝かしい栄誉は、多くの日本人に再び民族として生きる希望を与えてくれました。 日本のロケット博士と言われた糸川英夫氏の 「般若心経と最新宇宙論」という著書があります。この本の中にも、『日本初のノーベル賞受賞者である湯川博士が「ノーベル賞」を受けた中間子理論のヒントは 「般若心経」に書いてあるんですよ。色即是空によって現代物理学が見事に説明できるんです。しかも今日では実験的に証明されているんですね』 と言っているくだりがあります。

 般若心経の作者が、600巻もある大般若経をわずか262文字に圧縮するという、離れ業をやってのけた無名の大天才が、500年後に宇宙物理学がこうなるだろうと予測して書いたものでないことは確かです。しかし、そこに一致を見ているということは、一体どう解釈したらいいのでしょうか。それは般若心経も人間が書いたものです。   

 現代物理学といってもしょせん人間が書いたものですから、人間の活動範囲の外へは出ていないわけです。ただ物理学とか宗教とか哲学というものがバラバラにあるのではなくて、とことん問い詰めていくと同じになるということなのです。般若心経の中に、「色即是空」「空即是色」という有名な句があります。「色」というのは形のある物質のことです。「空」とは真空のことです。「物質は真空と同じなのだ。真空は物質と同じなのだ」ということは、本当に奇しくも量子論が、『般若心経』の経典が書かれて500年も600年もしてから、人間型のやり方で考えた原理とまったく一致したということです。この「色即是空 空即是色」というのが現代の物理学でまさに証明されている原理だということなのです。 我々は宇宙の真空から生まれました。量子力学によれば、物質すべては粒子で出来ているのですから、その粒子が真空の中から飛び出したとしたら、自分という存在も元々は空であり宇宙の真空の中に入っていてそこから飛び出している仮の姿にすぎないのです。いつの日か飛び出した穴に戻り、また絶対的な宇宙に戻るのです。

 ただ一条の光となって宇宙の彼方へ飛んでいくだけなのです。 つまり死というのは「空」に帰することだったのです。元の空のところに入って、真空の状態になるということは、完全な消滅です。これが物質としての死の状態になるわけです。だけどこれがまた真空の中にもぐっていて、いつの日にか出てくる、この理論のおかげで「死とは何か」、「死んだ後どうなるのか」という問題を明確に理解することができ、心が安らかになりました。私にとって、般若心経の説く「色即是空 空即是色」は難解でした。しかし、仏教の経典で説く「色即是空 空即是色」というのが単なるお説教ではなくて、物理学的に証明されたのだということを学び、思わず目を開かれました。  

 般若心経の教えは、自分だけではなくすべての生き物を救いたいという考えの「大乗仏教」に影響を受けています。般若波羅蜜多経から大乗仏教の神髄をピックアップしているのが般若心経です。「般若」とは、「自分の智慧」のことだそうです。つまり、「自分で考えて彼岸(悟りの境地)に至るための大切な教え」を意味しています。決議23-34号は職業人が「自利利他」への悟りの境地に至る大切な教えであり、他人の幸せ・他人の利益のために修行・努力することが、自らの利益にかなうということを悟らせてくれる大切な「般若の智慧」なのです。

(2021.12.04)

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