ロータリアンの広場


「天寿退会」
2510地区 PDG 塚原房樹(札幌東)
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2510地区 塚原房樹PDG

 年の瀬、私のロータリークラブの長老会員お二人が、天寿を全うされ鬼籍に入られました。享年88歳と90歳の方でした。お二人は、クラブの発展に多大な貢献をされました。杖を使用されておりましたが、頭はしっかりされていました。まさに「天寿による退会」といえましょう。 「天寿退会」という言葉は、岐阜ローターラブ(2002-03,年度ガバナー)・故服部芳樹氏の言葉です。氏は2510地区の増強セミナーのために札幌においでになり、講演をされました。増強で大切なことは退会防止であるという観点から、「例会出席」と「天寿退会」を熱く語られました。 ガイ・ガンディカーによると、ロータリアンの義務は、例会は勿論、あらゆるロータリーの会合に必ず出席すること、もちろん例会出席率100%でなければなりません。例会は会員相互の切磋琢磨が目的で、いわば電流の通った電線のようなもので、電線というものは、電気が通ったり通らなかったりするようでは、さした役には立たないので、常習欠席者罷免の原則は断固として行わなければならないとあります。

 入会以来出席率100%、初めての例会欠席は天から授かった寿命が尽きる時、つまり天寿を全うしたため、初めて例会を欠席した…それを服部氏は「天寿退会=皆出席初の欠席」と表現しました。そして、ロータリアンであり続ける条件として、「自分の ・ 家族の ・ 職業の健康、仲間の微笑み、ロータリアンである喜び」を挙げられました。その頃はまだ、ロータリーでは今ほど「老い」の問題は深刻ではありませんでした。ところが現在は超高齢者時代を迎え、人口高齢化は急速に進みました。「老いるとは「老い衰えること」、だんだん私も中途障碍者になっていきます。昨日できたことが今日できなくなり、今日できたことが明日はできなくなる。それが「老い」です。 超高齢者の老タリアンは一般に足腰が衰えてきます。次第に、例会への出席もかなわなくなり、精神機能の低下という認知症の兆しが見えてくると「出席規定除外」を申請します。人には個人差がありますが、通常超高齢者になると物忘れがひどくなり、ボケの症状が出てきます。医者の友人が「昔はボケはおりませんでした。皆ボケる前に死んでいましたから」……なるほどと思いました。ボケは後発性痴呆症として病院の収容対象になりましたが、痴呆という言葉には差別があるとして、その後認知症に名前が変わりました。

 日本のロータリアンが老いた場合、隠されることが多いのが現状です。たいてい、ご家族の方が社会的にロックアウトされます。残酷な言い方をすればロックアウトされることによって、まず社会的に死に、だいぶ経ってから新聞の訃報欄で肉体的な死が知らされる。そんなケースが多いようです。つまり家族がそれを隠すのは、いくら「引き際の美学」などと取り繕っても、結局は老いに対する嫌悪があるからです。「身内の恥をさらしたくない」という気持ちです。(社会学者・上野千鶴子氏)

 老年期において人間が、一個の人間であり続けるためにはロータリーはいかなるものであるべきか。すなわち、彼がそれまでの生涯を通じて、つねにロータリアンとして扱われていたのでなければならないということです。現役でなくなったメンバーをどう処遇するかによって、ロータリーはその真の様相をさらけ出します。しかし現実は『老タリアンとローターアクター』でも書きましたが、老タリアンの地位の低下です。  老タリアンの私は、老いという新しい冒険に乗り出しているのです。それは認知症になることを含めてです。だから生きていていいのです。役に立たないからと厄介者にするのではなく、役に立たないと絶望するのでもなく、私たちは老いを老いとして引き受ければいいのです。それを阻もうとする社会規範、抑圧、価値観がなんであるかを今さら語りませんが……。

 自分の過去を振り返り、なるほど、これが人生というものであろうかとはっきり感じさせられるものがあります。書物を通じて接した様々な師、そしてロータリーの先輩・友人のおかげで私の今日があります。人生を人生として私に確認させてくれたものは、一言で言うなら邂逅…出会いであると言ってもいいでしょう。「ロータリーの目的」の第一に「奉仕の機会として知り合いを深める」とあります。私はロータリーによって結ばれた友情に人生の人生たる証を学びました。若しロータリーの会員に選ばれていなかったら、若しロータリーで巡り合えた友人たちがいなければ私の人生はどうなっていたであろう、そこに生ずるのは身の引きしまるような感謝の念と歓喜であります。 私は、もうすぐ86歳の新春を迎えます。私は老いという冒険に乗り出しているのです。私を育ててくれたロータリーに深く感謝しながら、老いを老いとして引き受けながら歩んでまいります。

明年もどうぞよろしくお願いします。

(2021.12.24)

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