ロータリアンの広場


「養育は食育」
2510地区 PDG 塚原房樹(札幌東)
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2510地区 塚原房樹PDG

 私の知人のフレンチの三國シェフは、子供たちの食育に熱心に取り組んでいます。 子育てとは養育ですが、養育は先ず食育から始まります。そして食育の中にこそ心と体と双方にかかわる教育があります。子供に対する愛情の発露はまず食事で、またその食事作法の中に人間としての教育が自然に含まれている、これこそが家庭という教育の原点なのです。子供に対する教育ばかりではありません。家庭の団らんも食卓からで、食卓の空洞化がこの殺伐な世の中を作る元兇ではないでしようか。

 食育といえば、ロータリーの青少年奉仕は、コーエッセン(共食)とコーアルバイテン(共働)が大事だといわれことがありました。コーエッセン(共食)とはグループや仲間が食卓を囲んでコミュニケーションをとりながら食事をすることを言います。ロータリアンと次代を担う青少年が共に食卓を囲み、同じ目線で紡ぐコミュニケーションは人間形成の基礎となり、豊かな心を育みます。食事を共にすることは、人間形成に欠かせない要素の一つです。もう一つ青少年奉仕で大事なことは、コーアルバイテン(共働)です。「青少年とロータリアンが個々の立場の違いを踏まえた上で、それぞれが尊重されて対等な関係で「共に働く」という協力関係が育まれます。 一緒に食事をしながら会話する――これが人間と他の動物との大きな相違です。

 国と国との外交においても首脳会談には必ず晩餐会があります。サミツトで主催国 の外務当局が一番気を遣うのが晩餐会だそうですが、古来何れの国においても外交交渉は「樽俎折衝」なのです。樽俎折衝(そんそ-せっしょう)とは、「樽俎」は酒樽と肉料理をのせるための台のことから、豪華な食事のたとえ。「折衝」は敵の勢いを弱めるということ。または、交渉や駆け引きのことをいいます。つまり宴会で穏やかな雰囲気で、交渉が有利になるようにすることなのです。そこまで気配りするのが「プロフエッショナル」=本職であって、そうでなければただのアマチュア=素人に過ぎません。

 子育ての基本的任務を持つ親が、親としてのプロ意識を失っている……それが問題なのです。 会員増強が至上命令のRIは、日本は若い会員が少ない。何故、昼時に昼食をとりながら例会を行うのか。若い人は、昼間は仕事で忙しい。ロータリーの例会は、若い会員のために出勤前の早朝か、退社後の時間にすべきではないか。またホテルで会食するから若い会員には会費が高すぎる。早朝、退社後、コーラとポテトチップで例会はできる。これは、もはやロータリーの理念を語り合う例会の場というよりも、RIからの指令を確認する連絡会でしょう。 寺では典座(食事担当の役僧)が高い地位にありますが、食事は生命維持の原点です。そして会話は人と人との間柄を結ぶ心の原点です。この二つが正しく円滑に運ぶこと、これは家庭ばかりでなく、どんな職場にも、いや私的な交際にも、ロータリークラブの例会にも通ずる人間社会の原理だと思います。

(2023.02.23)

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