ロータリアンの広場


「NPOとなったロータリーは何を失ったのでしょうか」
2510地区 PDG 塚原房樹(札幌東)
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2510地区 塚原房樹PDG

 定量的とは数値・数量で表せるさまで、定性的とは物事の数値化できない部分に着目して捉えることを指しています。ロータリーが肥大化し、RIが官僚組織として主体性をもって仕事やりだせば、ロータリーの理念より数字に表れた定量的統計が独り歩きして、人間存在の本質である定性的情緒は圧殺され、会員相互の友情も冷却する。 もはや、ポール・ハリスがどういう考えでロータリーを作ったかを考えることは、ロータリーの歴史を知る上では重要だが、現実のロータリーを運営するためにはさしたる意味を持たなくなってしまったのである。 “日常生活を散文とするなら、ロータリーは人生の詩である”

 これは1973-74年度 RI会長 ウイリアム・カーターの言葉である。この言葉を聞いた時、心の琴線に触れる快い調べに陶酔した。しかしそういう情緒豊かな呼びかけは、今は影をひそめてしまった。 ロータリーは非営利組織となり、このような心に沁み透る情緒を失って、ただ理事会の成果を求める定量的論理のみで押しまくられるようになってしまった。それに対して、定性分析は数値で表せない倫理観や組織の背景を知るのに役立ち、普段はなかなか触れることのないロータリアンの本音に向き合うことで、新たな気づきを得られることができる。組織にとって数値の追求は大切だが、われわれロ―タリアンは数値で表せない情緒すなわちロータリーの物語を失ってはならない。 “我々はどこから来たのでしょうか”

 どんな組織にもその組織の誕生にまつわる神話がある。ロータリーはご承知のように1905年の2月23日に、ディアボーン街のループ地区にあるユニティビルの7階の711号室でポール・ハリスと3人の友人によって生まれた。その夜のシカゴは、凍てつく寒い日であった。このロータリー誕生の日の出来事は、ロータリーの神話として今も熱く語り継がれています。『吾々はどこから来たのか』 そのルーツを紐解く時、ロータリアンに同士としての連帯感が芽生えます。

 連帯感が希薄になると、結局ロータリー三昧、ロータリーを唯一の生き甲斐としているような人たちの思うままになるロータリーができる。果たしてそれでいいのだろうか。私たちは、ロータリーのあらゆる活動において、「多様性・公平さ・インクルージョン」(DEI)を受容しなければならない。 しかし私は懐かしく思い出す。かつて、ロータリーはあくまで現役の職業人が中心となり、自分の職業に全力投球する傍ら、心のオアシスとして魂を洗いに来るところであったことを。

(2023.03.04)

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