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炉辺談話(105)

He profits most who serves best の廃止(2)


 炉辺談話104で、表題の情報を提供しましたところ、多くのロータリアンからご意見をいただきましたが、ほとんどの方はこのモットーを存続させるべきであるというご意見でした。
 その後の経過や新しい情報や対応等を含めて、この問題を再掲いたします。前回のご報告と重複する部分がかなりありますので、ご了解ください。

 6月に開催されたRI理事会議事録および採択決議案に関する理事会決定文書(先般、代表議員に送付された英文文書)によると、規定審議会で採択された決議案01-678に基づいて、ロータリーの第二モットーである "He profits most who serves best"の使用を停止する 「Discontinues use of secondary motto: "He profits most who serves best"」と記載されております。
 然しながら、この重大な問題については、RIおよび日本事務局からは、何等の情報提供もありません。従って、ウエブ・サイトを見ていない会員は何も知らないというのが実情です。

 代表議員としてこの議案の審議に直接参加した我々としては、理事会が下したこの決定に関して大きな疑義を感じますので、規定審議会におけるこの案件の審議状況を思い起こしながら、経過をご説明しますので、皆様のご判断を仰ぎたいと思います。

 まず、01-391「He profits most who serves bestというモットーを改正する件」が提案され、アメリカの女性代表議員が趣旨説明をした後に、賛成反対の議論があり、結局220対256で否決されました。この案件の論点は "He" をやめて "They" にしようというものでありました。
 問題の01-678は、規定審議会の最終日に突然提案されたものであり、提案理由の説明に続いて、賛否様々な意見が出ました。この審議に便乗して、既に01-391で否決されたはずの「He をやめてTheyにしよう」という意見の蒸し返しもありましたが、"He profits most who serves best" というモットーそのものを削除しようという討議はまったくなく、単に性を表す言葉の是非についての議論に終始しました。結局、「すべてのロータリー用語から性に関する表現を削除することを理事会に要請する件」として276対58で採択されました。

この01-678の表題は、当初は、「To ask Board to bring to the COL to remove all references of gender in Rotary materials. ロータリーの用語から性に関する表現を削除することを、規定審議会から理事会に要請する件」となっておりました。しかし、我々の手元に送付されてきた公式報告書では、表題が「To request the RI Board to consider examining all Rotary mottos and statements and submitting legislation to future Council to remove gender-specific terminology from such mottos and statements. すべてのロータリーの標語や記述を検討し、標語や声明文から性別限定用語を削除するよう、将来の規定審議会に提出することをRI理事会に考慮するように要請する件」と変更されております。
 規定審議会終了後に現場で配布された審議結果報告書を見ると、単に「A:採択」と記載されており、「AA:修正採択」とは記載されておりませんから、当初の表題に標語や声明文という具体的な言葉が挿入されて変更されたこと自体が、規定審議会の審議結果を尊重していないことになります。

 規定審議会が理事会に要請したのは、性に関する表現を削除することであり、モットーそのものを使用停止することではありません。それにもかかわらず、性に関する表現を削除することを表向きの理由にして、"He profits most who serves best" という大切なモットーそのものを使用停止してしまったのです。

 ロータリーの綱領が「有益な事業の基礎として奉仕の理想を鼓吹しこれを育成する」で始まっている以上、ロータリー運動の中核は職業奉仕にあることは明らかであり、その職業奉仕理念を象徴するモットーが "He profits most who serves best" であることは、すべてのロータリアンが等しく理解していることであります。
 ロータリーは1911年以降、"He profits most who serves best" と "Service above self" の二つのモットーをロータリーの哲学と定め 、それを遵守してきました。
 それは、決議23-34に、「ロ−タリ−は、基本的には、一つの人生哲学であり、それは利己的な欲求と義務およびこれに伴う他人のために奉仕したいという感情とのあいだに常に存在する矛盾を和らげようとするものである。この哲学は奉仕−Service above self−の哲学であり、He profits most who serves bestという実践理論の原理に基づくものである」と明記されていることからも明らかであります。
 
 今後作られるロータリーの文書から、性に関する表現を削除することには異存はないとしても、ロータリーの哲学として既に確定しているモットーに、単に He が含まれているからと言う理由で、それを廃止することは、まさに本末転倒としか言いようがありません。
 ロータリーが "Service above self" というモットーを持っている以上、人類愛に基づくボランティア活動が重要であることに異論はありません。しかし、それと同様に職業奉仕にも "He profits most who serves best" というモットーがあるのです。

 1990年の規定審議会における "He profits most who serves best" の第二モットーへの降格に引き続いて、今回の「性」の問題にからめて、この大切なモットーを廃止しようという一連の流れは、もはや職業奉仕は不必要なのかという疑念を抱かせます。
 "He profits most who serves best" を廃止することは、職業奉仕からその実践理論を抜き去ることであり、職業奉仕そのものを否定することです。RI理事会は、このようなロータリー運動の存亡に関わる大問題を、規定審議会の議を経ず勝手に決める権限を持っているのでしょうか。
 もし、これを許して、性別限定用語を削除することを理由に "He profits most who serves best" が使用停止になれば、本文中にこのモットーが含まれている「決議23-34」も使用停止になる可能性すら否定できません。
 以上、私の主観も含めて経過を記載いたしましたが、皆様のご了解をいただいた上で、35名の規定審議会代議員の総意として、この決定を撤回するように要望書を作成して、RI理事会に提出したいと考えています。

 さて、要望書を通じて我々がRIに要望する内容は、次の三つの提案に分かれるものと思われます。
1. あくまでも、"He profits most who serves best"の存続を求める。このモットーはシェルドンが作り、ロータリーの哲学として確定しているものだから、みだりに変えるべきではない。
2. 性特定用語として "He" がふさわしくないのならば、それ以外の用語に変更する。
* ただし、"They" は団体奉仕を連想させるので好ましくない。
* どうせ日本語訳は同じなので、"He" に代わる『三人称単数』の適切な表現に変えるべきであり、"The one" が最適だと思う。2640地区中島冶一郎PDGのご意見
3. "He profits most who serves best" の代わりに、21世紀にふさわしい新しい職業奉仕のモットーを作る。
* profits の解釈をめぐって、RIBI、ヨーロッパ等から疑義がでており、これまでも再三にわたって、廃止しようという意見がでている。
* 20世紀においては、非常に効果的な理念であったが、産業構造が大幅に変化する21世紀に対応できるかどうか問題がある。
* これを遵守すれば、21世紀の職業人が隆々と栄え、地域社会の他の職業人にも大きな恩恵を与えるような、新しい職業奉仕の理念を再構築すべきである。

 ただし、それを実現するためには、
* RIに職業奉仕の必要性を理解させる
* RIに職業奉仕委員会を復活させる
* 全世界のロータリアンに新しい職業奉仕のモットーを公募する
* 2005年、ロータリー100周年までに、新しい職業奉仕のモットーとして確定させる
 といった作業が必要になってきます。

 当然、"He profits most who serves best" の存続を強く訴えるべきだと思いますが、どうしてもそれが無理ならば、3.案を提唱して、最近とかく無視されている職業奉仕を、ロータリー思想の中心に引き戻す運動を、日本がリーダーシップをとって行うのも一つの方法だと考えております。