再び モットー廃止について
He profits most who serves best の使用停止に関する具体的な情報が殆ど伝えられないまま、3ケ月が過ぎようとしています。使用停止に関するRIの反応は迅速で、先日送られてきた次年度のPETSや地区協議会の手引きを見ると、「ロータリーのモットー Service
above self」と記載されており、He profits most who serves best は完全に姿を消しています。
この情報を知りえた僅かなロータリアンが、細々とモットー存続運動を続けている現状に切歯扼腕しながらも、皆さまにこの重要な出来事を再確認していただくために、再度この経過を振り返ってみたいと思います。
私は、8月6日にRI日本語課からメールで届けられた、6月に開催されたRI理事会議事録抄録によって、ロータリーの第二モットーである "He profits most who serves best"の使用を停止する 「Discontinues use of secondary motto: "He profits most who serves best"」という文章を始めて目にしました。抄録にはこの文章が掲載されているだけで、この理由や説明はまったく付けられていませんでした。
なぜこんな決定がされたのか不審に思いながらも、翌日、抄録の全文をRJWを通じて日本のロータリアンに伝えました。
8月8日に、全代表議員に、RIから英文の「採択決議案に関する理事会決定」という文書が送付されてきました。私はたまたま代表議員であったために、この文書を受け取りました。
規定審議会で採択された制定案(定款・細則の変更を要する案件)については、すでに日本語訳がメールを通じて我々に送られていましたので、直ちにRJWで発表し、その後、冊子に印刷されて各クラブに送られてきたので、その資料に基づいて、私の所属する2680地区では8月4日に、規定審議会セミナーを開催して、採択された立法案についての詳細を報告いたしましたが、この段階では、採択決議案をどのように取り扱うのかという理事会の決定は、知らされていなかったわけです。
規定審議会で採択された決議案は、定款・細則の変更を要する制定案とは違い、「・・・することを理事会が検討することを要請する」といった決議であり、それをどのように処理するかを理事会に委ねたものです。
ところが、「採択決議案に関する理事会決定」の内容を読むと、「規定審議会で採択された決議案01-678に基づいて、ロータリーの第二モットーである "He profits most who serves best"の使用を停止する」と記載されていたので、これは大変なことだと気づきました。
直ちに、RIに正式な日本語訳を送るように要請いたしました。日本語課の担当者を通じたRI定款細則委員会の見解として、この文書は、英語のみで発表し、他国語に翻訳する予定はないという回答が返ってきました。
そこで、RJWが独自に翻訳したものを、8月14日に、RJWを通じて発信したわけです。
私個人が、RJWとして情報を入手する立場にあったことと、規定審議会の代表議員を勤めていたことで、決議01-678と、モットー使用停止決定の関連性が判ったわけであり、決議案に対する理事会決定の文書が英文だけでしか配布されなかったことも作用して、非英語圏のロータリアンのほとんどは、この決定に気づいていないのではないかと思われます。
然しながら、この重大な問題については、RIおよびRI日本事務局からは、何等の情報提供もありませんので、RJWから発信された情報を見ていない会員は、何が起こったのか全く知らないというのが実情です。
代表議員としてこの議案の審議に直接参加した私としては、理事会が下したこの決定に関して大きな疑義を感じますので、規定審議会におけるこの案件の審議状況を思い起こしながら、一連の経過をご説明したいと思います。
この規定審議会の特徴は、「女性に対する差別を撤廃せよ」という提案がほとんど採択されたことです。ただ一つ、審議の後半に提案された01-391「He profits most who serves bestというモットーを改正する件」が220対256で否決されたことが、唯一の例外でした。この案件の論点は "He" をやめて "They" にしようというものであり、アメリカの女性代表議員が趣旨説明をした後に、賛成反対の議論がありましたが、結局否決されました。
これに不満を抱いた代表議員が、急遽新しい提案01-678を作って、規定審議会の最終日の最終議案として提案したというのが真相です。当日急遽、「すべてのロータリー用語から性に関する表現を削除することを理事会に要請する件」という議案が提案されて、審議の上、276対58で採択されました。
この01-678の表題は、私たちにこの議案が配られた時点では、「To ask Board
to bring to the COL to remove all references of gender in Rotary materials. ロータリーの用語から性に関する表現を削除することを、規定審議会から理事会に要請する件」となっておりました。
しかし、8月8日に我々の手元に送付されてきた公式報告書を見ると、表題が「To request the RI Board to consider examining all Rotary mottos and statements and submitting legislation to future Council to remove gender-specific terminology from such mottos and statements. すべてのロータリーの標語や記述を検討し、標語や声明文から性別限定用語を削除するよう、将来の規定審議会に提出することをRI理事会に考慮するように要請する件」と変更されております。
規定審議会終了後に現場で配布された審議結果報告書を見ると、単に「A:採択」と記載されており、「AA:修正採択」とは記載されておりませんから、当初の表題に「標語や声明文」という具体的な言葉が挿入されて変更されたこと自体が、規定審議会の審議結果を尊重していないことになります。
なお、この案件に関する討議内容は、終始、性を表す言葉の是非についてのみが議論の対象となり、"He
profits most who serves best" というモットーそのものを削除しようという意見はまったくでなかったことを、断言いたします。
規定審議会が理事会に要請したのは、性に関する表現を削除することであり、モットーそのものを使用停止することではありません。それにもかかわらず、性に関する表現を削除することを表向きの理由にして、"He profits most who serves best" という大切なモットーそのものを使用停止してしまったのです。
ロータリーの綱領が「有益な事業の基礎として奉仕の理想を鼓吹しこれを育成する」で始まっている以上、ロータリー運動の中核は職業奉仕にあることは明らかであり、その職業奉仕理念を象徴するモットーが "He profits most who serves best" であることは、すべてのロータリアンが等しく理解していることであります。
ロータリーは1911年以降、"He profits most who serves best" と "Service above self" の二つのモットーをロータリーの哲学と定め 、それを遵守してきました。
それは、決議23-34に、「ロ−タリ−は、基本的には、一つの人生哲学であり、それは利己的な欲求と義務およびこれに伴う他人のために奉仕したいという感情とのあいだに常に存在する矛盾を和らげようとするものである。この哲学は奉仕−Service above self−の哲学であり、He profits most who serves bestという実践理論の原理に基づくものである」と明記されていることからも明らかであります。
今後作られるロータリーの文書から、性に関する表現を削除することには異存はないとしても、ロータリーの哲学として既に確定しているモットーに、単に He が含まれているからと言う理由だけで、それを廃止することは、まさに本末転倒としか言いようがありません。
ロータリーが "Service above self" というモットーを持っている以上、人類愛に基づくボランティア活動が重要であることに異論はありません。しかし、それと同様に職業奉仕にも "He profits most who serves best" というモットーがあるのです。
1989年の規定審議会における "He profits most who serves best" の第二モットーへの降格に引き続いて、今回の「性」の問題にからめて、この大切なモットーを廃止しようという一連の流れは、もはや職業奉仕は不必要なのかという疑念を抱かせます。
"He profits most who serves best" を廃止することは、職業奉仕からその実践理論を抜き去ることであり、職業奉仕そのものを否定することです。RI理事会は、このようなロータリー運動の存亡に関わる大問題を、規定審議会の議を経ず勝手に決める権限を持っているのでしょうか。
もし、これを許して、性別限定用語を削除することを理由に "He profits most who serves best" が使用停止になれば、本文中にこのモットーが含まれている「決議23-34」も使用停止になる可能性すら否定できません。
以上の論点から、その場に状況を一番よく理解している35名の規定審議会代議員はもちろんのこと、心ある日本のロータリアンの総意として、この決定を撤回するように要望書を作成して、RI理事会に提出すべきであると考えて、その作業を進めております。
現在、代表議員のほぼ全員の署名を得、板橋理事もこれに賛同されて、11月のRI理事会では撤回要求をすることを確約されています。数多くの元理事やガバナー、パスト・ガバナーの間でも、またクラブ・レベルでも続々と抗議文を送る運動が拡大しております。
これが、この問題に関する経緯と現状です。
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