変えてはならないもの
ここ何年か前から、「ロータリーは変わらなくてはならない」という声が出始め、その声はだんだん大きくなって、遂には、「改革だ」「革命だ」という声にまで高まりました。ロータリーを改革するために、新しい提案をしようというラビッッア元会長に声に応えて、2001年規定審議会には1200件にものぼる立法案が提案されて、大混乱に陥ったことは記憶に新しいことです。
この「改革」の声の震源地を探っていくと、どうやらRI本部の方かららしく、その本意は、職業奉仕団体からボランティア団体に変えようという意図のようです。普通、「改革」は現況に不満を抱いた末端の方から出るのが普通ですが、最近の「改革の掛け声は」そうではないようです。
「ロータリーは変わらなければならない」とポール・ハリスは言っていると、ラビッッア元会長が述べ、その後多くの人がその言葉を引用するようになりました。人の言葉を引用するのは実は大変危険なことでありまして、伝言ゲームと同じように、語り継がれていくうちに、本来の趣旨とは全く違うものになる危険性があります。
ポール・ハリスは、This Rotarian Age の中と、1930年の国際大会のスピーチの中で、「進歩」「改革」「革命」という言葉を述べています。しかしその文章の前後を含めて熟読すると、前者は時代の流れの中でロータリーの物語は何回も書き換えられるだろうという記述であり、後者はロータリーの奉仕活動の実践分野や組織管理について革命的な改革が必要であると言っているのであって、奉仕理念の改革については言及しておりません。
「改革」を述べる人のほとんどは、ポール・ハリスのオリジナルの文章を読まないで、単なる人の受け売りで述べおり、語り継がれていく途中で意味が変わって、何でもかんでも「改革」するという、危険な結果につながる可能性があります。
ロータリーの実態を分析すると、@理念、A奉仕活動の実践、B組織管理に分けることができます。
時代のニーズに従って奉仕活動の実践分野を変えなければ、誰からも感謝されないばかりでなく、地域社会、国際社会のニーズに従った奉仕活動をするというロータリーの趣旨から外れてしまいます。
また、組織管理の方法は、常に能率や経済効率を考えながら改善を加えていかなければ、たちまち制度疲労を起こしてしまいます。
然しながら、理念はそうはいきません。理念とはすなわち哲学であり、哲学とは万古不変のものでなければなりません。
ロータリーの綱領が「有益な事業の基礎として・・・」で始まっていることからも、ロータリーの本来の目的は職業奉仕にあることは明らかであります。
さらに、決議23-34によって、He profits most who serves best とService above self の二つモットーをロータリーの奉仕哲学と位置付けています。
前者は利益の適正配分によって事業を繁栄させ、その結果として職業倫理高揚を図ろうという職業奉仕のモットーであり、後者は弱者に涙する人道主義に基づいたボランティア活動、すなわち社会奉仕と国際奉仕の奉仕活動実践のモットーです。
私が今一番心配していることは、He profits most who serves bestの使用停止に便乗して、RI理事会が決議23-34をも使用停止にしないかということです。決議23-34には、He
profits most who serves bestの言葉がそのまま使用されています。従って、同じ運命をたどる可能性は極めて高いと言わざるを得ません。もし23-34が使用停止になれば、個人奉仕の原則は完全にその根拠を失います。
職業奉仕が否定され、さらに個人奉仕の原則がくずれた組織を、果たしてロータリーと呼べるでしょうか。
絶対に変えてはならないものは理念です。ふらふらと理念が変わるような組織には存在価値がありませんし、その将来には限りがあります。ロータリーの理念にはロータリー100年の歴史の重みがあるのであって、奉仕活動の実践や組織管理の方法はどんどん変えるべきであったとしても、理念は絶対に変えてはならないものです。
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