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炉辺談話(114)

第二モットー復活運動顛末記
 

RI理事会が決定したロータリーの第二モットー「He profits most who serves best」の使用停止が撤回されました。
日本のロータリアンの熱き思いが、RI理事会の考え方を変えさせたこの一件は、静かに財団寄付と会員増強に励んでいた過去の日本ロータリーから、財団寄付や会員増強に励むと共に、はっきり意見も主張するという、21世紀の日本のロータリーの方向性を示す、いい機会になったと思います。

この事件は、RIから私に送られてきた「RI議事録抄録」のメールで幕を開け、板橋理事から送られてきた「第二モットー復活成功」のメールによって幕を閉じました。モットー復活を目指した情報提供も、ほとんどメールとウエブ・サイトを使って行いました。従ってこの運動は、ITを駆使した運動とも言えるでしょう。
第二モットー使用停止を伝える「採択決議案に対するRI理事会の決定」は、代表議員だけに英文のものが送られてきただけなので、代表議員以外のロータリアンは、まったくつんぼ桟敷に置かれる結果となりました。たまたま、私はRJWのウエブ・マスターであったため、誰よりも早く情報を入手できる立場にあり、さらに規定審議会の代表議員でもあったので、この件に関するすべての情報を入手できるという幸運に恵まれたわけです。
この双方の立場を通じて得られた情報に基づいて、この事件の顛末を振り返ってみたいと思います。

4月26日
01-391「He profits most who serves bestというモットーを改正する件」提案されました。この案件の論点は、女性会員に配慮して、"He" をやめて "They" にしようというものであり、アメリカの女性代表議員が趣旨説明をした後に、賛成反対の議論がありましたが、220対256で否決されました。

4月27日
これに不満を抱いたアメリカの女性代表議員が、急遽新しい提案01-678を作って、規定審議会の最終日の最終議案として提案しました。当日急遽、「すべてのロータリー用語から性に関する表現を削除することを理事会に要請する件」という議案が提案されて、審議の上、276対58で採択されました。

この01-678の表題は、私たちにこの議案が配られた時点では、「To ask Board to bring to the COL to remove all references of gender in Rotary materials. ロータリーの用語から性に関する表現を削除することを、規定審議会から理事会に要請する件」となっておりました。
しかし、8月8日に我々の手元に送付されてきた公式報告書を見ると、表題が「To request the RI Board to consider examining all Rotary mottos and statements and submitting legislation to future Council to remove gender-specific terminology from such mottos and statements. すべてのロータリーの標語や記述を検討し、標語や声明文から性別限定用語を削除するよう、将来の規定審議会に提出することをRI理事会に考慮するように要請する件」と変更されております。
規定審議会終了後に現場で配布された審議結果報告書を見ると、単に「A:採択」と記載されており、「AA:修正採択」とは記載されておりませんから、当初の表題に「標語や声明文」という具体的な言葉が挿入されて変更されたこと自体が、規定審議会の審議結果を尊重していないことになります。

5月5日
私が個人的に作成した採択立法案一覧表を速報として、メールにて全ガバナー事務所に送付すると共に、RJWに掲載しました。

5月17日
RIウエブ・サイトで発表された採択立法案の一覧表(公式)を、RJWに掲載しました。

7月5日
規定審議会で採択された制定案の詳細が、RIからメールで届きましたので、RJWに掲載しました。

7月下旬
印刷された制定案の詳細が、代表議員、ガバナー事務所、各クラブに郵送されました。
4月末に決定した立法案が文書として渡されるまでに、何と3ケ月もかかっているわけで、ITを駆使しているロータリアンとそうでないロータリアンの情報収集能力の差に、改めて驚かされました。

8月6日
RI日本語課から、6月に開催されたRI理事会議事録抄録がメールで届けられました。
このメールによって、初めて、ロータリーの第二モットーである "He profits most who serves best"の使用を停止する 「Discontinues use of secondary motto: "He profits most who serves best"」という決定を知りました。
抄録にはこの文章が掲載されているだけで、この理由や説明はまったく付けられていませんでした。なぜこんな決定がされたのか不審に思いながらも、翌日、抄録の全文をRJWを通じて日本のロータリアンに伝えました。

8月8日
全代表議員に、RIから英文の「採択決議案に関する理事会決定」という文書が送付されてきました。その内容を読むと、「規定審議会で採択された決議案01-678に基づいて、ロータリーの第二モットーである "He profits most who serves best"の使用を停止する」と記載されていたので、これは大変なことだと気づきました。

規定審議会が採択した決議案01-678は、性に関する表現を削除することであり、モットーそのものを使用停止することではありません。この案件に関する討議は、終始、性を表す言葉の是非についてのみが議論の対象となり、"He profits most who serves best" というモットーそのものを削除しようという意見はまったくでなかったにもかかわらず、性に関する表現を削除することを表向きの理由にして、"He profits most who serves best" という大切なモットーそのものを使用停止してしまったのです。
なお、この案件を審議した理事会では、この提案に反対する理事は一人もなく、すんなりと決まったと聞いています。

直ちに、RIに正式な日本語訳および審議経過を送るように要請いたしましたが、RI定款細則委員会の見解として、この文書は、英語のみで発表し、他国語に翻訳する予定はないという回答が返ってきました。なお、審議経過については、何の回答もありませんでした。
私と共に規定審議会の代表議員を勤めた、RJW副委員長黒田雅之アクティング・ガバナーから、この情報の詳細を全ガバナーに伝えてもらいたいという要請が、メールで届きました。

8月9日
事の重要性を考えて、第二モットー使用停止に関する詳細な経緯を記載した文書を作成し、RI理事、全ガバナー事務所および関係者にメールで伝達し、RJWにも掲載しました。

8月10日
さらに詳細な文書を作成し、規定審議会代表議員の世話役坂巻幸二PDGに、全代表議員に発送していただくように依頼しました。
私の個人的なウエブ・サイト「ロータリーの源流」を通じて、詳細な情報の第1報を流しました。

8月14日
RJWが独自に翻訳した「採択決議案に関する理事会決定」を、RJWを通じて発信しました。

8月16日
千宗室、竹山涼一、小谷隆一元RI理事、中島治一郎PDGは、RIに対して、第二モットー復活に関する要望書を提出しました。私もRI会長宛に要望書を提出しました。

8月19日
坂巻幸二PDGから、第二モットー復活要望書が、全代表議員に送付されました。
「ロータリーの源流」を通じて、詳細な情報の第2報を流しました。

8月30日
板橋敏雄理事に、11月理事会にて、第二モットー復活の提案をしていただくようにお願いしました。

9月7日
坂巻PDGから、復活要望書に添付する署名記入文書が、全ガバナー事務所、代表議員に送付されました。
その後、いろいろなルートを通じてこの情報が流れ、日本全国から数多くの意見がよせられました。
関係各位のご努力のおかげで、パスト・ガバナー234名、代表議員32名、クラブ会長77名の署名を頂き、これを板橋理事に託して、理事会で第二モットー復活を提案していただくことになりました。

9月28日
「ロータリーの源流」を通じて、詳細な情報の第3報を流しました。
RI公式文献「PETS指導者用手引き」には、「ロータリーのモットー Service above self」と記載されており、He profits most who serves best が削除されました。

10月30日
「2001年度手続要覧」に収録されている決議23-34から、He profits most who serves best のモットーが削除されました。

11月7日
RI理事会において、板橋敏雄理事が、第二モットー復活について提案され、これが承認されました。
板橋理事のご報告の要旨は次の通りです。

本日5日目の午前11時のFULL BOARDで B―24項 「Reconsideration of use of Motto “ He Profits Most Who Serves Best”」が議題となりました。出発前に、ED FUTA 事務総長に議題にして戴く様お願いはして置きましたが、彼は今日の議題に入れて呉れました。
管理運営委員会のJerry Meig 理事の提案で始まりました。キング会長の発言を求められた第1号として、私は早速発言を求めました。ビチャイ・ラタクル会長エレクトがすぐセカンドを支持してくれて、私は次ぎの様に日本を代表しての発言をしました。

「前略・・・今、ロータリーが21世紀生き残る為には、若い会員を迎え入れなければ成りません。 その時私達は、その若い世代のボランティアに対する考え方が大きく変わって来ている事に気づかなければなりません。昔の奉仕―自己犠牲とか、与えるものといった考えから、自己開発のための奉仕であり、その達成感を重視する変化です。この様なボランティアの人達に、ロータリアンとして、確りと伝えていかなければならないのが、職業人としての奉仕のあり方ではないでしょうか。此れは決して古臭いものでは無く、彼らにも共感できるものなのです。この事を最も端的に表現しているのが、「He Profits Most Who Serves Best」と言う第2モットーです。

今、ここに日本の35地区のガバナー、パストガバナーの存続願いの署名簿を持参しました。これらの人達は、皆新しいロータリーを創っていこうと言う私の同志です。
もしも御賛同が戴けなければ、9日に理事会が終わっても私は日本に帰ることが出来ません。是非とも皆様のご賛同を戴いて、このモットーの復活をお願い致します。そうでないと、日本における会員増強と引いては財団寄付にも影響が出ることも考えられます。また、此れが出来ましたなら、冒頭に申し上げた、各クラブ年度末5名の増員、日本全体として約1万1千人の増強を私は各地区にお願いして行こうと決意しています。」 と締めくくりました。

私のこの意見発表に対して、アメリカの理事から、Profit と言う言葉が、企業の利益と解される点で、問題があると言う意見が出ましたが、キング会長はロータリーに入って、多くの異業種のロータリアンと知り合い、親睦を通じて職業人として学ぶ事ができるのも大きなProfitではないか。単なる利益ではない。と主張してくれました。また、ビチャイ会長エレクトは、同じ仏教国の考え方として、現世において人々の幸せを願う事を強調してくださいました。

続いて、Heが問題に成りましたが、Mankind is our Business のManも同じではないか。Heは既に50年使われてきた事実に鑑み、原語の通り復活をさせる事で全員の賛成が得られました。そして2004年の規定審議会で、ジェンダーの問題として、Heに置きかえる言葉をWhoにするか、Theyにするか、Oneにするかを提案する事になりました。」

11月8日
第二モットー復活の情報を、メールを通じて全地区のガバナーにお伝えしました。

11月9日
第二モットー復活の情報を、RJWに掲載しました。