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炉辺談話(115)

職業分類制度の崩壊

 この度の規定審議会に提案された01-148「職業分類の原則を保持して、クラブ会員の種類を正会員と名誉会員に簡素化する件」が404対76の評決によって採択された結果、会員種類の簡素化と共に、一人一業種による職業分類制度が緩和され、50人未満のクラブは一業種5名まで、50人以上のクラブは10%までの入会が可能となりました。
一人一業種を緩和しようという提案が、毎回のように規定審議会に出されてきた経緯から考えて、終に来るべきものが来たという感じです。
ロータリーのロータリーたる所以と言われてきた、職業分類制度と毎週1回の例会開催という二つの牙城の一角が崩れた現在、なんとか毎週1回の例会開催だけは守り抜きたいと念じております。

一人一業種の職業分類制度が考え出された本来の理由は、クラブの親睦を保つためであり、どんなことでも腹蔵なく話し合える雰囲気を作るためには、利害関係のある同業者を排除すべきだという考え方からです。
しかし、ロータリーが閉鎖的、特権的であるという世間一般からの非難に対抗するために、現在では、ロータリーの奉仕理念を地域社会全体に広げるために、地域社会のあらゆる職種にロータリーの代表を送り込む必要があり、そのためには一人一業種でなるべく多くの職種を網羅する方が効率的であるという考え方に変化しています。

さて、クラブ親睦を守るために同業者を排除するのならば、すでに会員になっている人が同じクラブに入ることを同意した同業者の場合はどうかという疑問が浮かんできます。これに応えるために作られた規約が、1915年に採用されたアディショナル会員制度です。日本人ロータリアン第一号である福島喜三次が、すでにロータリアンであった現地会社の社長のアディショナル正会員として、ダラス・クラブに所属していたことは有名な話です。
厳密に考えれば、1915年、すなわちロータリーが出来て僅か10年で、一人一業種制度は崩れたことになります。

1930年にはパスト・サービス会員が生まれました。現役を離れたとはいえ、全く関係がなくなったわけではありません。自分の事業の後継者が会員なっているのならばともかく、全く関係のない同業者が会員になれば、クラブの親睦を保つことが出来るでしょうか。

次いで1939年にはシニア・アクチブ会員制度が採用されました。入会年齢によって差があるものの、5年から15年の在籍で、ロータリーの世界では現役をリタイアしたものとみなされて、同業者の入会が許されるわけです。
当初は、シニア・アクチブ会員への移行は、本人の同意が必要でしたが、1970年からは自動的移行となり、いまだ現役で事業に携わっているにもかかわらず、一方的に職業分類を剥奪されたシニア・アクチブ会員と、同業者の正会員が、一つクラブに存在するという奇妙な現実が生じてきました。

さて、旧定款の下で、一業種に何人の会員が在籍可能だったのでしょうか。
正会員、シニア・アクチブ会員、パスト・サービス会員、アディショナル正会員(3カテゴリーからそれぞれ1名、合計3名)、名誉会員。旧定款の下でも、一業種について7名の会員の在籍が認められていたわけで、ロータリーの一人一業種の原則は、制度上からもすでに崩壊していたわけです。

さらに職業分類そのものもあいまいなものになってきました。
従来は、RIが大分類、中分類、小分類からなる標準職業分類表を作って、各クラブはそれに従って、会員に職業分類を貸与していました。しかしRIは、1963年の「職業分類の概要」の発行を最後に、標準職業分類表の発行を含めたあらゆる作業を中止したままで、現在に至っています。
従ってそれ以降は、職業分類の決定は各クラブに任されたため、勝手気ままな職業分類の細分化が行われるようになりました。一般弁護士、民事弁護士、刑事弁護士、国際弁護士、また、商業銀行、工業銀行、外為銀行、こんな小手先の職業分類の細分化と、本来の目的であるクラブ内の親睦を深めるための一人一業種制度と一体どんな関係があるのでしょうか。
このようにして、運営上からも職業分類制度は崩壊していったわけです。