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炉辺談話(125)

一人一業種制度の撤廃

2001年規定審議会において、制定案01-148「同一職業分類の会員を5名とし、51名以上のクラブは10%を超えてはならない」と改定されました。この結果を捉えて、一人一業種制度の崩壊を意味するものとして、批判の声が高まっています。

規定審議会における提案理由説明の中で、クリフ・ドクターマン委員長は次のように語っています。
「この提案は、決して一人一業種制度を否定するものではない。すでに同一職業分類を持ってクラブ会員になっている同業者の人も、彼の資質を高く評価しており、かつ彼とならうまくやっていけると考えている。本人もロータリアンになることを希望している。ただ、一人一業種制度の壁があるために入会できない人を、ロータリー運動に参加してもらうためである。だから、一人一業種制度の本質(会員の親睦)を堅持しながら、会員制度を改善する必要がある。」

私たちがロータリー運動の基本と考えている「一人一業種制度」と「毎週1回の定例の会合」も、実は、運用面ですでに崩壊しています。

「毎週1回の定例の会合」は、シカゴ・クラブの創立当初は2週間に1回でしたし、東京クラブは1ケ月に1回でした。1922年の改正で、1週間に1回と定められ、それ以降にできたクラブはそれを守っていますが、それ以前にできたいわゆる特権保有クラブの中には、現在でも2週間に1回しか例会を開いていないクラブがあります。
なぜ、「毎週1回の定例の会合」を定めたかについても、いろいろな考え方があります。ロータリーの例会を、会員の事業上の発想の交換の場と位置付け、奉仕の心を学ぶ人生の道場と考えるのなら、なるべく多くの例会を開く方が良いでしょう。しかし、1週間に1回ならばいいが、2週間に1回では駄目だという理屈づけにはなりません。
さらに、最近では、例会を「奉仕の心を研鑚する場」という位置付けをする人が減り、ロータリー運動そのものを、弱者に涙する人道的ボランティア活動だと考える人が多くなれば、例会で昼飯を食べている時間があるのなら、額に汗をして奉仕活動の実践をすべきだという理屈もまかり通るわけです。
毎回のように提案される「2週間に1回の例会」も、この度の規定審議会では否決されたものの、まさに風前の灯火であることは間違いなく、2004年の規定審議会ではどうなるか心配されます。

「一人一業種制度」は、すでに運用面で崩壊しています。1915年にアディショナル正会員制度ができて、正会員の了解が得られれば、同業者が入会することが可能となりました。1939年にはシニア・アクチブ会員制度が導入されて、一定の条件をクリアし本人が同意すれば、シニア・アクチブ会員に移行でき、その後に同業者が正会員として入会できるようになり、更に、1970年には、シニア・アクチブ会員への移動が強制的となり、本人の意図とは関係なく同業者が入会できるようになって、ここで、「一人一業種制度」は実質的に崩壊したわけです。
その後、アディショナル正会員の枠が拡大されて、「一人一業種制度」は形骸化し、計算上は、一職業分類で、正会員、シニア・アクチブ会員、3名のアディショナル正会員の5名が存在することが可能となりました。すなわち、今回の規定審議会で可決された「五人一業種制度」の下地が出来上がったわけです。

なぜ、「一人一業種制度」がロータリー運動の必要条件と言われてきたかを考えてみましょう。
ロータリー創立の動機は「親睦」にあります。もし、同業者が同じクラブ内にいれば、真底心を開いて語り合うことはできません。事業上のトップ・シークレットを語り合う発想の交換も、同業者がいては満足にできません。従って、クラブ内におけるゆるぎなき純粋親睦を守るための方策として「一人一業種制度」が生まれたのだと考えるべきでしょう。もっとも、ロータリーにおける純粋親睦に対するロータリアン外からの批判をかわすために、「あらゆる業種にロータリーの奉仕の理念を広げるために、地域社会の横断面を捉えた全ての職種の人を入会させる必要がある。そのためには、クラブのキャパシティからも一人一業種を守る必要がある」と軌道修正をしていますが・・・・
何はともあれ、クラブの親睦を守るために「一人一業種制度」が生まれたことは間違いありませんから、規約がどのように変わろうとも、「一人一業種制度」の精神だけは守る必要があります。

さて今回の規約改正は、RI定款、RI細則、標準クラブ定款の改正ですから、我々はこれを遵守する義務があります。これらの上部規約に違反した規約をクラブ細則や内規に定めることはできませんから、わがクラブは「一人一業種制度」を維持すると明記することもできません。
幸い、会員選考の方法はクラブ細則で定めますから、クラブの親睦を阻害しない会員選考の方法を規定して、運用面からトラブルを解決する方法はあります。ドクターマン委員長が言っているように、この規約改定は、「近所で張り合っている利害関係のある同業者を入れるため」ではありませんから、そのようなことが起こらないように、クラブ細則で規制すればいいのです。
たとえば、7 Days Noticeで入会の是非を問うときに、一人でも反対の会員がいれば入会を認めないとか、理事会の最終決定の時に、全員一致を原則とするように細則を定めておけば、不満のある会員の意見を反映できることになります。
もちろん反対の意見は、恣意あるものであってはならないことは当然ですが、すでに会員であるロータリアンの当然の権利を守ることも大切です。

私は「一人一業種制度」がロータリーの必要条件であるという考えは変わりませんが、これが変更された現在、クラブ親睦の前提として、お互いが仲良く共存できる同業者に限って入会を認めるというように、細則を運用すべきであると思いますし、細則をそのように改正することは可能です。