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炉辺談話(137)

職場例会と例会変更

「職業奉仕活動の一環として、例会変更して職場訪問を行った。事務職員の都合で、本来の例会場には誰も配置していなかった。めったに訪れたことのないビジターがたまたま来訪し、誰もいないことに立腹して、メーク・アップ・カードを貰いに訪問先の職場まできた。」
このような場合の対処法について質問が寄せられました。

このケースには幾つかの問題が含まれていますので、それぞれについて解説してみたいと思います。

@職場例会の是非
ロータリーの歴史を振り返ってみると、第一回の例会はガスターバス・ロアの事務所、二回目はポール・ハリスの弁護士事務所、三回目はシルベスター・シールの事務所、その後は、ハイラム・ショーレーの洋服屋、ロジェリン・ジェンセン不動産会社の事務室、ラグルスの印刷所と、職場を回り持ちして例会を開いていました。従って職場例会は、ロータリーにおける例会の原点ともいえます。
しかしこの背景にあるものは、当時はロータリアン同士がそれぞれの職業を通じて物質的相互扶助をしていたために、会員の事業内容を熟知する必要があったことが挙げられます。しかし、この物質的相互扶助の風潮は、内外からの強い批判を受けたため、1912年以降は禁止され、精神的な相互扶助に変化していきます。
この段階から職場例会の必要性は希薄になっていきます。もちろん会員の事業を理解し、親睦を深めるための職場訪問を否定するわけではありませんが、それは単なる職場訪問で事足りるわけであり、例会変更をする必然性はないと思います。 

A例会変更の是非
例会は定款第5条で厳しく規定されており、徒に変更や取り消しを行うことはできません。ただ、「正当な理由」を巡る理事会の解釈のずさんさから、いとも簡単に例会の変更が行われるケースが多いようです。
オフィシャル・ダイレクトリー(会員名簿)には、全世界のクラブの例会場と日時が公開されており、全世界のロータリアンはすべてのクラブの例会に出席する権利を持っています。従って、例会変更はよほどのことがない限り行わないのが原則であり、近隣クラブに例会変更の案内を出したから、それでいいという筋合いのものではありません。バスの中の例会とか、船上の例会が認められないのも、事実上、来訪者が参加できないという理由によるものです。
親睦会や職場訪問が果たして、例会変更の「正当な理由」になるのかどうか、よく考えるべきです。私個人の意見は、これらの会合はクラブ例会とは切り離して行うべきだと考えています。

B職業奉仕活動としての職場訪問
職業奉仕とは、単に一生懸命に事業に専念することではなく、適正な利益の配分によって、結果的に事業の継続的発展を導く事業態度のことであり、高い倫理基準で事業を営んでいくことでもあります。
こういった経営方針を実践している職場を訪問して、そのノウハウを学ぶのならば、それは立派な職業奉仕活動といえるでしょう。
しかし、一般に行われている職場訪問は、会員が経営する酒蔵やビール工場に行って、施設の見学や試飲をするといったケースが殆どではないでしょうか。このような職場訪問は、職業奉仕活動とは言いがたく、あえて当てはめるとすれば親睦活動と考えられますし、こういった行事を例会変更をしてまで行うべきではないことは言うまでもありません。 

Cメークアップ・カードの発行
メークアップの申告は、本人の自主的申告が原則であることは、案外知られていないようです。
旧定款第7条第2節「メークアップの通知」には、訪問先のクラブ幹事が通知を送ることができるという記載がありました。これは、本人の申告を前提としながらも、幹事の裁量でメークアップ・カードを送ってもよいということであって、必ずしも義務ではなかったわけです。
新定款ではこの記述も抹消されていますので、本人の申告だけで事足りるわけです。なお、例会変更時の留守番については、特別の規定もなく、本人がその旨申し出れば済むことだと思いますが、今までの慣習ともなっているようですし、本来あるべき例会を変更したことを考えれば、留守番をおいて鄭重に謝罪する方が無難でしょう。