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炉辺談話(142)

識字率向上月間にちなんで

 RIから次々に送られてくる英語の情報を、RJWのホームページを通じて日本語でお伝えする役目を仰せつかってから2年を超えました。娘二人がアメリカに嫁いでいる関係上、英語とは無縁ではないのですが、いくら努力しても上達しません。それでも英文和訳は大好きで、何冊かの文献の翻訳出版もしているのですが、和文英訳と英会話はからきし駄目で、自分の言いたいことの1/10も言えません。
語学は道具に過ぎないのに、たまたま世界標準の道具を使っていない国に生まれたばかりに、自分の意見を自由に述べられないもどかしさを痛感しているのは、私一人ではないと思います。識字率、すなわち「読み、書き、ソロバン」のうちの英語による「書き」が十分できないだけでも、こんなに大きなハンディキャップがあるのです。

ITが発達し、ロータリーでもすべての情報がインターネットやメールで伝えられるようになりました。若い人たちは順応力が高いので、ITに積極的に取り組み、それなりの成果を上げることができますが、いわゆるリーダー格にある年配の人たちは、それに順応できず、情報非識字Media Literacyの状態に置かれています。これらの人たちの苛立ちや疎外感はかなりのものだと思います。 

英語やITの世界における別の意味での非識字者の悩みを述べましたが、このような状況が、自分の国の言語全てに当てはまるとしたらどうでしょうか。
環境や貧困のせいで、幼いときからまったく教育を受ける機会がないままで育ったため、自分の国の言葉による「読み、書き、ソロバン」ができない、いわゆる非識字者は、世界中で10億人存在し、その数は成人の25%に当たり、その75%はアジア人であり、非識字者全体の2/3は女性です。
非識字者は就職の機会に恵まれず、それがさらに貧困を招きます。貧困であるが故に、1億3千万に上る子供たちは就学の機会が与えられず、非識字と貧困は悲惨な悪循環を繰り返しているのです。 

カンボジア国境地帯の地雷原に立てられている立看板の文字が読めないばかりに、毎日数十人の子供たちが足を失っています。
非識字者が女性に多いことも、数々の問題を生みます。教育が受けられないことや正しい知識が得られないために、計画出産や性病予防がままならず、これが人口問題やエイズ阻止の大きな障害になっています。
今ポリオが最終の追い込み段階に入っていますが、ここでも大きな問題となっているのが非識字者の存在です。先進国ならば、葉書一枚で、集団接種の会場に皆を集めることが可能ですが、字の読めない母親に葉書を送っても何の効果もありません。識字率向上運動は、ポリオ・プラス以前の重要なプログラムだと言えるのです。 

RIは、非識字者の存在こそ、貧困をはじめとする諸問題の源であると考え、1997-98年度のキンロス会長年度から、7月を識字率向上月間に指定しましたが、デブリン会長、キング会長の年度は、他の多くのプロジェクトの影にかすんで積極的な活動はありませんでした。

皆様ご存知のように、ビチャイ・ラタクル会長は、奉仕活動の実践はクラブが選択して行うべき、すなわち、Top downではなくBottom upであることを強調されていますが、その一方で、どうしても継続して実施しなければならないプロジェクトとして、グローバル・クエストの継続、ポリオ根絶運動の総仕上げ、識字率向上、職業倫理の高揚をあげており、さらにその強調事項の筆頭に挙げているのが識字問題です。識字率向上のプロジェクトが進展しなければ、南北間の貧富の差は益々広がり、地球規模の社会不安は一層増大するでしょう。私たちは強い危機感を抱かなければなりません。 

現在、RIが積極的に推し進め、効果をあげている識字率向上プロジェクトは、後から来る人々のための道を照らす意味を込めて、ライトハウス・プロジェクトと呼ばれています。このプログラムの中心になるのは、リチャード・ウオーカー氏が開発した語学力集中研修講座CLEであり、グループ単位で、簡単なストーリーを喋り、それを書き、だんだん難しいものに発展していく方法です。児童、初心者、上級者向けにその内容を変えながら、話し言葉、書き言葉さらには文法にまで発展していきます。
このCLEは1987年から、ロータリー財団の人道的補助金を受けてタイで行われ、大きな成功を収めたので、その後、世界各地の小学校、非公式教育現場、ストリート・チルドレン対策等で、識字率向上プロジェクトの中心として採用されています。 

現在、RIの識字委員会は、各途上国の委員からの情報に基づく個々の援助プロジェクトを検討している最中で、近々にそのリストが発表される予定です。そのリストの中から地区、クラブ・レベルで最適のものを選んで、協力することが可能です。

02-03年度地区ガバナーに要請されている事項は
@   地区識字率向上委員会を任命する。
A   地元の識字率向上ブロジェクトを開発するか、海外クラブからのマッチング・クラントの申請を支援する。

日本の場合は、海外クラブから寄せられる個々のプロジェクトに対して、マッチング・グラントの申請を支援する活動が主になると思いますが、このプロジェクトの必要性を認識して、今年度のWCS活動の最優先順位として積極的に採用すべきだと思います。