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炉辺談話(145)

ロータリー親睦活動とボランティア・クループ 

8月9-11日に、マレーシアのクアラルンプールで、RI会長会議が開催されました。私は10日午後および11日午前中に開催されたパネル・ディスカッションのパネリストを仰せつかりました。
今回は、10日のパネル・ディスカッション「世界は良き隣人となれるか」において、私が述べた「ロータリー親睦活動とボランティア・クループ」のスピーチ原稿前文をご紹介いたします。なお、この会議においては時間の関係上、本原稿を6分に縮めて発表いたしました。 


今回のテーマは「どのようにすれば、ロータリアン同士が良き隣人関係を保てるか。さら良き隣人関係を保ちながら、どのような奉仕活動がアジア、太平洋地域でできるか」であります。

国際奉仕活動の究極の目標は「世界平和の達成」です。貧困、飢餓が原因になって地域紛争が起こり、それが戦争に拡大します。それを防ぐために、ロータリーは、平和を阻害する可能性のある、貧困、飢餓、疾病、経済格差をなくそうとして、多くのプロジェクトを実践しているのです。
今日明日討論される議題の内容の殆どは、人道的奉仕活動のしてのWCSを中心にした、奉仕活動の実践と、その費用を捻出するためのロータリー財団の話になると思います。
そこで、私は、皆様方とは異なったテーマ、すなわち、ロータリアン同士がどのようにして、親睦と相互理解を深め、それによって平和をもたらすかという内面的な問題について話を進めてみたいと思います。 

ロータリーの綱領を思い起こしてください。ロータリーの綱領第4項には「奉仕の理想に結ばれた、事業と専門職務に携わる人の世界的親交によって、国際間の理解と親善と平和を推進すること」という国際奉仕に関するドキュメントが書かれています。1921年、ロータリーの国際大会が始めてアメリカを離れて、スコットランドのエジンバラで開催されたことを記念して制定され、翌22年にロスアンゼルス大会で、ロータリーの綱領として明文化されました。その後度重なる綱領改正にも変更削除されることなく現在に至っていることは、皆様ご承知の通りであります。
綱領を厳密に解釈すれば、国際奉仕の目的は、現在我々が行っている、WCSに代表されるような人道主義に基づく援助活動ではなく、ロータリアン同士の親睦と国際理解を戦争抑止力として活用しようということであります。すなわちロータリーの国際奉仕の基幹となる思想は、国家、思想、宗教などの要素が複雑に入り交じって、現実には一つとはいえない世界を、ロータリアンの 親睦と相互理解によって一つのものにして、恒久の世界平和を目指そうとするところにあるのです。

ロータリーが国際理解と親善のために努力しようとする前提条件として、ロータリアン各自の愛国心があります。全世界のロータリアンがそれぞれの祖国を深く愛するが故、自分の愛する国や国民を戦争の惨禍に巻き込まないために、何をなすべきかを考えて努力しなければならないのです。一国の政治にロータリーがどれほどの影響力を与えることができるかについて、疑問を抱く人もいるかも知れませんが、国連設立と国連憲章の原案作製に当って、ロータリーが大きく関与したことを忘れてはなりません。ロータリアンの親睦と相互理解によって平和な社会を作ることがロータリーの夢なのです 。

私たちは、地域社会のニーズに従って、人道主義に基づいたボランティア活動をする社会奉仕というプログラムを持っています。このCommunityを最小単位で定義すれの家庭であり、それを最大に定義すれば地球全体になります。21世紀はボーダーレス社会ですから、当然のことながら、地球全体をCommunityと考えなければなりません。従って、現在は国際奉仕の分野に入っているWCSや3-H、ポリオ・プラス、識字率向上、環境保全等の諸活動は全て、本来は社会奉仕のカテゴリーに入れるべきであろうと考えます。

以上の考え方を前提にして国際奉仕活動を見直せば、現在の国際奉仕のプログラムの中で最も大切なものは、ロータリー友情交換、ロータリー親睦活動(RF)であり、その他親善を深める機会を広げる意味から、地域大会・国際大会参加、外国クラブの例会参加、友好・姉妹クラブ締結等があげられます。この対象をロータリアン以外に広げれば、これに国際親善奨学生、国際平和奨学生、国際青少年交換、GSEが加わってきます。
個々のプログラムについては、時間の関係上省略しますが、本日はその中のロータリー親睦活動Rotary Fellowshipについて触れてみたいと思います。 


かつて、同じ趣味をもったロータリアンが親睦を深める同好会活動と、共通の職業を持つグループが統合して、ロータリー趣味職業別親睦活動Rotary Recreational Vocational Fellowshipが結成されました。更に2002年1月より、ボランティア活動に関心を持つグループが加わって、ロータリー親睦活動Rotary Fellowship(RF)と改正されました。
人道主義に基づくボランティア活動が主流となっている現在のロータリー活動の中で、いささか場違いな活動に見えるかもしれませんが、国際奉仕活動の本来の目標は、綱領に明記されているように、ロータリアン同士の友情を通じて世界の平和を目指すことにあるわけであり、趣味と職業とボランティア活動を通じて全世界のロータリアンが親睦を深めるこのRFこそ、最もロータリーの国際奉仕の発想に適合した活動とも言えましょう。 

このRFには、現在80ほどのグループがあり、積極的に日常活動をしており、特に国際大会では友愛の広場の中心的な存在として、各国のロータリアンが親睦を深めております。ただ残念なことには、日本を始めとした東洋のロータリアンの入会者が極めて少ないのが現状です。手続要覧には、地区レベルのRF委員会を設置するように推奨していますが、日本ではこの委員会を設置している地区は6地区だけしかありません。また、一昨年からは毎年6月がRF月間になりましたが、この月間行事をしている地区やクラブはほとんどないのが現実です。国内だけの活動に留めずに、積極的に世界中のロータリアンと親睦を深めるためには、このRFへの参加が非常に効果的な手段であることをご理解いただき、積極的に参加するように要請していただきたいと思います。 


この2年来、WCSやボランティアに関連した数多くのタスクフォースが作られました。しかし、このタスクフォースの仕組みは、資金援助や奉仕活動実践の要請が、コーディネーターを通じて、ガバナーに伝えられるだけであり、それから先はガバナーの考え方如何にかかっていたわけです。それぞれのタスク・フォースから、プロジェクト採用の要請がガバナーの下に殺到します。しかし、それらのすべてを採用するわけにもいきませんから、自分の地区のクラブに要請するプロジェクトは2-3に限定されます。強く要請すれば上意下達と誤解を受ける一方で、情報不足から、自らボランティア活動をする意思を持っている会員がそのチャンスを見つけられない結果になります。現実にボランティア活動に従事するマン・パワーを持っていないという欠陥があったわけです。 

そこで私は、目的別のボランティア活動をするマン・パワーを組織化するために、RFの中にボランティアをする意思のある人を集めた第3のグループを作ることを、2001年3月にデブリン会長に提案しました。デブリン会長からは、WCSとのからめて、前向きに考えるというお返事を頂きました。
私の提案のせいか、たまたまデブリン会長が失明回避のボランティア・グループの組織化を考えていた時期と合致したのかは判りませんが、2002年1月から、私の提案どおりに、従来のRRVFにボランティア・グループが加えられて、ロータリー親睦活動Rotary Fellowship(RF)が作られ、手続要覧にも「各種の保健、医療問題に関心を持つグループ」と、その具体例が明記されました。更にこのボランティア・グループに対して、今年度よりロータリー財団からの補助金がつくように改正されました。

現在既に、失明回避タスク・フォースがRIウエブを通じで、ボランティアを募集しています。ロータリアン以外の人も参加することができますし、眼科医やネガネ屋さんやコンタクトレンズ、看護婦、視機能検査技師等の職業記入欄もありますから、それぞれの役割に応じた実践活動をすることができます。
同じような考え方で、災害救援、識字率向上などのいろいろなプロジェクトに携わる専門集団が作れるわけです。

発足まもない活動であり、情報不足もあって、現在このボランティア・グループには、失明回避以外はほとんど関心が集まっていないのが現状です。
今回の会長会議を通じて、アジアの地における各種の人道的奉仕活動の必要性が討論されました。ロータリアンは、自らの得意とする、また関心を持っている分野で、世のため人のために尽くそうという目的意識を持って入会したはずです。I serveの原則を守りつつ、同じ目的意識を持ったロータリアンが、それぞれの分野のボランティア・グループに参加して、世界中のロータリアンが共通のボランティア活動を通じて親睦と国際理解を深めつつ、自ら実践活動に加われるような組織作りをしたいものです。
将来の全てのボランティア活動が、このRFを通じたボランティア・グループに代わる日も近いと思います。
なお、従来の趣味別、職業別の同好会活動もぜひ積極的に結成および参加していただきますようお願い申し上げます。私たちが2000年に創立したロータリー囲碁同好会は、日本、韓国、台湾と回りもちで毎年国際大会を開催して、お互いの趣味を通じて、近隣の国のロータリアン同士が親睦と相互理解の輪を広げています。