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炉辺談話(147)

ロータリーとIT (日本編) 

日本ではかなり早い時期から、個々のロータリアンが個人の趣味としてパソコンに対応していましたが、1998年9月にインターネットやメールに関心を持つロータリアンが集まって、Japan Rotary Internet Conference JRICという非公認同好会組織ができました。始めは、メーリングリストを通じて単にメールをやり取りするだけでしたが、JRICの会員が、だんだん、クラブや地区のホームページを作るための中心的役割を担うようになってきました。

クラブや地区のホームページが徐々に増えてきた1999年の春頃から、いろいろな問題が起こってきました。ITに堪能な会員は会員歴の浅い若い会員が圧倒的に多く、従って、ロータリーのことを完全に理解しているとは限りません。その一方でロータリーを深く理解している古い会員は、ITの知識を持ち合わせていません。現在もこの傾向は続いていますが、IT化の波に乗り遅れまいとかなりの数の古い会員が、この技術をマスターしたために、その差はかなり縮まっています。

そういう新しい会員が、クラブのホームページをつくることを任されたわけですから、かなり苦労したと思います。従って当時のクラブのホームページは、「会長挨拶」と「クラブ概況」「四つのテスト」と「ロータリーの綱領」が記載されているだけというものが多かったようです。

ロータリーの理念や歴史、また定款や細則についての正しい情報がほしいという要望が寄せられました。そこで私が「ロータリーの源流」という個人的なホームページを作り、これを通じて各種のロータリーの情報を提供しました。

その後、RIのホームページの内容も急激に充実すると共に、デブリン会長エレクトのホームページもできたので、その内容を地区やクラブのホームページに載せたいので、これを何とか日本語に訳してもらえないだろうかという要望が強まってきました。

JRICにしろ「ロータリーの源流」にしろ、公式なウエブサイトではありませんから、RIからの情報を正式に伝える権限はありません。そこで、日本のロータリアンに公式な情報を発信する組織を作るべきであるという提案を、1999年12月に京都で開催されたロータリー研究会でガバナー会に提案し、それが認められました。

2000年2月に私が委員長に任命されて、急遽Rotary Japan Web (RJW)の組織作りにとりかかりました。公式情報を提供するという責任上、委員は経験豊富でなおかつITに関心があるパストガバナー、ガバナーにお願いし、実務的な作業をしていただくために、ITに堪能な会員を部会員としてお願いしました。RJWという名称は将来の国際化を予測した私の命名で、 http://rotary.or.jp のドメインは、1997年に、2750地区の有志が先行取得してロータリーの友に預けておいたものを無償で譲り受けることができました。

当時はRIから直接提供される情報は僅かしかなかったので、RIウエブ上の情報を片っ端から翻訳したり、「ロータリーの源流」の中から、ロータリーの歴史や理念や規約等について、個人的解釈や意見を除外したものに作り直したりして、これを収録しました。その後文字通り突貫作業でホームページ作りに取り組んで、2000年5月1日にウエブサイトを公開することができました。

さて、2000年7月から、RJWを取り巻く状況は一変しました。デブリン会長からのメッセージはダイレクトのメールとウエブ・サイトを通じて毎週何回も押し寄せます。これらの情報は全て英文ですので、それを翻訳してRJWに収録しなければなりません。当初はすべて私が翻訳していましたが、現在は翻訳部会員にお願いしています。

デブリン会長は、この情報網の構築に際して、デブリン会長からの連絡事項を、メールを十分に使いこなせないガバナーに伝えるためにDistrict Internet Communication Officer DICO、地区インターネット連絡担当役員を任命しました。当初はDICOが交代で、デブリン会長からの情報を翻訳して、DICOのウエブサイトを通じて公開していた時期もありましたが、何時の間にかRJWに統一されたようです。
従って、当時のRJWには、ロータリーの歴史や奉仕理念といった日本独自の内容に加えて、RIやロータリー財団、RIウエブサイトから寄せられる情報、デブリン会長から送られてくる、アクション・チーム・アップデート、デブリン・メモ、eエクスプレス等の膨大な情報が掲載されることになりました。

2000年の秋ごろ、RIから言語別ウエブ・コミュニティへの参加要請が参りました。これは主要言語9ケ国語の言語別ウエブサイトを公認し、RIから翻訳済みの情報を提供するというものでした。すでに他の言語別サイトより群を抜いて活躍しているRJWがこれに加入することで、リーダーシップを発揮してほしいという添え書きがついていました。実は、翻訳作業で頭を悩ましている最中だったので、さっそくそれに応じました。2001年2月23日を期して、このウエブ・コミュニティは実働し、RIのウエブサイト上から、直接多言語ウエブサイトにリンクするようになりました。

この年のRJWの活動のハイライトはなんと言っても規定審議会の情報提供でしょう。1,300件という桁外れに多い提案があったため、RIにおける翻訳が大幅に遅れ、結局、最終の印刷資料は、シカゴにおいて現場渡しという結果になりました。ただしウエブサイトを通じての情報収集は可能だったので、RJWでは、逐次、立法案の邦訳を発表したため、日本のほとんどの代表議員は、RJWによってその内容を熟知した上で、シカゴに行くことができました。事実、ウエブサイトを通じて規定審議会の全立法案を掲載したのは、英語と日本語だけでしたから、その他の国の人たちは、直前までその内容を知ることができませんでした。

また、RI理事会が第二モットーHe profits most who serves bestを使用停止にした情報を、日本中にいち早く知らせたのもRJWです。これによって日本のロータリアンが一丸となって、この決定に反対表明をし、結果としてRI理事会はこの決定を撤回しました。ITの効果の偉大さをしみじみと思い知らされた一連の出来事でした。

この年度、RJWの内容は加速度的に増え、総ページ数は3,000近くになりました。
2001年7月、RJWは大幅にリニューアルされ、現在に引き継がれています。

規定審議会でロータリーのIT化が決定されたことを受けて、RIはすべての情報をウエブやメール使って伝達し始めました。最も大きな変化は、RIの公式文献がウエブを通じて提供されるようになったことで、中にはウエブ・オンリーという文献すら現れました。RI公式文献の大部分はpdfとして提供されるため、メモリーの関係から、ウエブ上から直接開くと途中で止まってしまうというクレームが相次ぎました。今は当然となっている、一旦、どこかにダウンロードしてから開くという解決方法を見つけ出すまでに苦労を重ねました。また、定款・細則のファイルが、Macで作られたものを画像として取り込み、それをpdf化したものが送られてきたために、テキストへの転換ができず、手作業でワードに転換したこともありました。

その頃から、毎晩のようにRIから私の下に情報が届けられ、邦文のものはそのまま、英文のものは翻訳部会員の作業を経た上で、制作部会員に届けられ、翌朝にはRJWで公開されるという日課が始まり、その状態は現在も続いています。私が心配しているのは、この作業に当たっている者がもし一人でも倒れたら、たちどころにRJWが止まってしまうことです。

インターネットが好きな者同士が集まって、ホームページ作りを楽しんでいる時代はとっくの昔に過ぎたわけであり、RJWがRIの提供する情報をウエブサイトで伝達する権限を持たされている以上(RI細則21条)、もはや、我々が善意で、暇を見つけてボランティア作業をする限界を大きく超えてしまったのです。

私たちは同じ人頭分担金を払ってロータリーに参加しています。その分担金の中から英語のRIウエブサイトだけを作っていることは、実に不公平なことだと思います。すべての言語で情報を発信する責任は、当然、RIにあるわけで、そのためにRI日本語課なりRI日本支局があるのではないでしょうか。

多言語のウエブサイトをつくる費用がないのなら、The Rotarianやロータリーの友がそれぞれ購読料を徴収しているように、ウエブサイトにも受益者負担の原則を適用するべきだと思います。

2001年12月のロータリー研究会で、ロータリーのIT化およびRJWに関する現況を報告する機会を与えられました。その中で、RJWをボランティア活動のみで維持することは困難なので、ロータリーの友の購読料に15円か20円上乗せして、受益者負担にしてRJWを運営すべきであると申し上げ、かなり多くの参加者からの拍手をいただきました。具体的な費用を積算したRJWの要望書を、板橋理事とガバナー会に提出しておりますので、抜本的な対策が採られることと期待しております。

RIからの情報収集ルートはほぼ出来上がっています。後は費用捻出の問題だけであり、それも、受益者負担として1ケ月当たり20円(ロータリーの友の1/10)程度を負担していただければ十分運営可能です。そうなればRJW委員会の役割は、RIから得た情報を取捨選択して適切な文章にまとめることと、ウエブページのレイアウトを考えるという作業をすればいいことになり、この作業は100%ボランティア作業の範疇に入れることが可能です。そして、サーバーの管理運営やhtml化作業といった技術的な作業は専門業者に外注すべきでしょう。

私は委員長として、この組織を立ち上げた責任上、財政的基盤が確定するまでは、その任を放棄したくてもできない立場にいます。一日も早く、この任から開放されて、一ロータリアンとしての生活を取り戻す日を待ち焦がれているのですが・・・。

2002年6月のRJWの内容は4,500ページを越えています。

ビチャイ会長からは、現時点ではIT化に関する特別な要望は寄せられていませんが、RI事務局サイドのIT化は着々と進行中です。RJWもそれに対応していきたいと考えています。

RJWの今年度の最重要目標は、DICOとCICOのネットワーク化です。デブリン会長時代のICOはデブリン会長のメッセージをガバナーやクラブ会長に伝えるための役職でしたが、私たちの考えているDICOは、RIの情報すなわちRJWの情報をメーリングリストを通じてDICOに伝えることです。DICOはRJWからの情報をガバナーやパストガバナーやCICOに伝えます。地区は各クラブにCICOを任命すると同時に、地区内全クラブのメーリングリストを作ります。クラブはクラブ内に同じようなメーリングリストを作ります。このネットワークが完成すれば、RIの情報はRJW、DICO、CICOに瞬時に伝えられ、全てのロータリアンが情報を共有できることになります。

もし近い将来、RJWに予算措置がつけば、大容量のサーバーを置き、日本全体の地区やクラブのホームページ、e−メール、メーリングリストの一元管理をすることも可能です。そうなれば、年度が替わるごとに、地区やクラブのドメインやe−メールアドレスが変わるなどという、やっかいな問題は即座に解決します。

我々は rotary.or.jp というサーバー本体を管理していますから、全地区に、例えば www.rotary.or.jp/2680 といった統一ドメインを発行することも可能ですし、2680@rotary.or.jp といったアドレスを作ることも可能です。同様にクラブにwww.rotary.or.jp/2680/kobeや2680-kobe@rotary.or.jpのような統一ドメインやメールアドレスを作ることもできます。

RJWでは、近々、全国のDICOの方々に集まっていただき、委員共々、日本のロータリーのIT化促進のための会議を開きたいと考えております。地区レベルでもガバナー月信やクラブ週報のインターネット化や事務処理のIT化などの諸問題を抱えていると思います。こういったことを全国レベルで協議するまたとない機会だと思います。
ただし再三の要請にも関らず、まだDICOの届出のない地区が幾つかあります。この拙文を読まれた方は是非、自分の地区のDICOをご確認いただき、もし選任されていないようならば、その必要性をガバナーに説得していただければ幸甚です。