profit 考
アーサー・フレデリック・シェルドンはビジネスをサービス学という科学として捉え、それを具体的に説明するために「He profits most
who serves best」というモットーを提唱し、ロータリーはそのモットーを職業奉仕の理念として採択しました。
チャンスをつかんで一攫千金を夢見たり、顧客や同業者を欺いた不公正取引によって儲けるのではなく、論理的な方法で永続的な利益をあげることを選択したわけです。
当時の人たちは「ロータリーが提唱した職業奉仕を実践すれば、必ず自分の事業は発展する。」と信じてロータリー運動に参加したわけですから、シェルドンが使った「profit」という言葉はまさしく「利益」ないしは「儲け」を指しているものと思われます。
日本人には、東洋哲学とか儒教に基づいた考え方が、深くDNAに刻み込まれているらしく、この「profit」を精神的なものと考えたいという願望が強いようです。
果たして、「profit」には金銭的な利益以外に、精神的な満足感が含まれるのかどうかについては、ポール・ハリスを始めいろいろな人がいろいろな説明をしていますが、それはその人の解釈であって、必ずしもシェルドンの考え方とは言えません。
そこで、シェルドン自身の言葉の中から「profit」とは何を意味するかを探ってみたいと思います。
1910年スピーチ原稿抜粋
☆ 19世紀における実利主義の特筆すべき点は競争であり、毎日毎日が食うか食われるかという人間の本能をむきだしにした状態が最高潮に達した。
☆ 20世紀の実利主義の特徴は協力することであり、他人に利益をもたらすことこそが正しい経営学だということを理解し、販売学が人間に対するサービス学であることを理解し、同僚に対して最も奉仕した者が最も報われるHe profits most who serves his fellows bestことを理解するのである。
1911年スピーチ原稿抜粋
☆ 我々は商業の時代に生きており、商業や事業は科学である。経営学は、「最もよく奉仕する者、最も多く報いられるHe profits most who serves best」基づくサービス学である。
☆ 広い意味で、すべての人はセールスマンである。それぞれの人は、それがサービスか商品かにかかわらず、売るべきもの持っている。
☆ 商売上における人生の成功は、末永くprofitをもたらす顧客を確保する技術を持って、事業を営むことによって決まる。
☆ 血の通った事業を築いていくのは、profitを得るために、品物を買うように人々を説得する原動力、すなわち販売術である。血の通った販売術の源となる心こそサービスであり、最終的に、買手と売手の双方にprofitと満足を与える原動力である。
☆ 広い意味における人生の成功は、幸運とか機会というものではなく、心理的、道徳的、物質的な自然の法則によって支配されている。これらの自然の法則のすべてを調和させる活動こそ、最高の成功を意味する。
☆ サービスをしたいという願望は、利己主義や自らを意識するという段階から、宇宙を認識するという英知に向かう段階に至る人間のたどる道として発展したものである。言いかえれば、我々が利他の心を持って他人の成功を願うことは、自らが成功への道を歩んでいることである。
☆ すべての人は、事業上および専門職務上で、もっと多く、もっと良くサービスするための潜在能力を持っている。サービスの見返りは、必ずや、あなた方にもたらされるのである。
1913年スピーチ原稿抜粋
☆ 自らの事業において成功を収めようと思えば、自然の法則に従わなければならない。商取引でprofitを得ることは決して汚いことではない。
☆ 「すべて人にせられんと思うことは、他人にもその通りにせよ」の教えを、ロータリーは、取引において、「最もよく奉仕する者、最も多く報いられる」と表現している。
☆ profitを得るためには奉仕をしなければならない。それは自分が他人からして貰いたいことを他人にすることである。profitを得たいと思えば、社会において奉仕をするのが、人生の法則である
☆ 奉仕を行った人が、現世において受け取る見返りが、profitsである
☆ ビジネスの世界は、原因によって結果が得られる。小さな奉仕には僅かなprofitしか得られないが、大きな奉仕には結果として、多くのprofitが得られる。
1921年スピーチ原稿抜粋
☆ 幸福という概念は、「他人からの愛情や尊敬」と「良心・自尊心」と「お金」によって成り立っている。他の人々からの愛情や尊敬、曇りのない良心、仲間との毎日の取引の結果として得られる物質的な富は、少なくとも程よい幸福と言うべきであろう。
☆ 奉仕哲学におけるprofitという言葉には、お金とお金がもたらす恩恵が含まれている。物質的な富だけでなく「他人からの愛情」と「自尊心」といった、精神的な価値をも含んでいるのである。
1910年、1911年、1913年のスピーチは、profitを明らかに物質的な利益、すなわち儲けと考えています。ロータリーの奉仕哲学に基づいて利益をあげよう、別な言い方をすればロータリーの奉仕哲学に基づいた経営をすれば、必ず利益が得られるということです。
1921年のスピーチでは、profitを「お金」と「お金によってもたらされる恩恵」と若干広義な解釈をしています。具体的に述べられている「他人からの愛情」と「自尊心」といった、精神的な価値も、「お金によってもたらされる恩恵」という前提条件をつけていますから、「清貧」とか「利益を度外視した満足感」とは別次元のものです。先ず利益を確保し、その利益の中から精神的な恩恵を受けるという考え方のようです。
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