ロータリーが親睦を目的として出発し、後日、奉仕がこれに加わったことは、歴史的にも明らかなことです。社交クラブとして出発し、後から奉仕クラブとしての要素が加わったわけです。親睦と奉仕という、一見無関係な要素を一体化して定義付けるところに、ロータリーの理論構築の難しさがあり、また、面白さがあるとも言えます。
いずれにせよ、親睦を第一義に考えて生まれた団体ですから、いかなる理由があっても親睦を阻害するような要素は一切排除しなければなりません。特に例会は親睦の場と規定されていますから、注意が必要です。
かつて、シカゴ・クラブで、奉仕理念の導入や拡大を巡って意見が対立し、ポール・ハリス派とハリー・ラグルス派に分れて、例会が論争の場と化したことがありました。議論がエスカレートすれば、感情的な発言がでたり、賛成反対によって派閥が生まれたりして、クラブの親睦が乱れる原因になります。事の良し悪しよりも、クラブの親睦を優先することを決断したシカゴ・クラブは、ロータリー理念や拡大を議論する場としてRIを設立して、クラブの親睦を守ったのです。
討論の場としてフォーラムがありますが、意見を述べることは自由だとしても、敢えて結論をださない、いうロータリーの伝統は、意見の対立によって親睦を崩すことを恐れた先達の知恵であり、さらに政治的な問題や、意見が分かれるような問題は敢えて議論したり、統一見解を表明しないという慣習も、これと同じ理由によるものです。
クラブの決議機関は例会と理事会ですが、例会で議決するのは定款・細則の変更と会長・役員の選挙と提訴に限定されており、更にその議決方法も定款・細則で規定されていますから、問題は理事会における採決方法ということになります。
ロータリークラブは理事会に先議権を持たせていますし、理事会の決定が最終決定と定められていますから、理事会が意思決定するに当たっては、慎重な配慮が必要です。
意思決定には、@多数決、Aコンセンサス、Bコンセントの方法があります。
多数決は定められた数、たとえば過半数、2/3、3/4以上の賛成があれば、反対意見を無視して、強行する方法です。冒頭に述べたように賛成と反対にはっきり意見が分かれるような案件を、多数決によって強行すると、必ず親睦にひびがはいります。理事者側が新たな提案を行うときには、あらゆる機会を通じて会員の意見を充分聞き、賛否が分かれるようならば、例え少数派であってもその意見を尊重して、潔く提案をとりさげるというのが、ロータリー的な処理法といえます。
コンセンサス(了承)とは、理事者側が提案の趣旨を理解してもらうように努力し、反対の意見を持った人たちも納得した状態のことを言います。反対の意見を持った会員も、その反対理由が大きな意味を持たないものならば、敢えて、反対の意思表示をしないという良識が必要です。議論を活発にするために、わざと反対意見を出すようなことは、厳に慎むべきでしょう。両者がお互いを思いやりながら、全員のコンセンサスを得た上で物事を進めていくのが、会員の親睦を第一に考える、ロータリークラブの正しい議事運営方法なのです。
コンセントとは、全く異論が無く、満場一致で了解された状態を指します。
ロータリーの親睦を第一義に考えるならば、少数派の意見を尊重する態度が必要です。
仮に、理事会の議案に一人の理事が反対の意見を持っていた場合、その反対理由が納得できるものならば、多数決で採決せずに、その議案の提出そのものを撤回すべきだし、その反対理由が大したものでなければ、当人が敢えて反対を表明しないことによって、理事会の総意としてその議案を採択するのが、ロータリー的な考え方です。新入会員の承認など、細則上、どうしても採決をとらなければならない案件について、満場一致を原則としているクラブが多く見られるのは、このあたりの事情を勘案したものと思われます。
|