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炉辺談話(161)

One profits most who serves best 

2002年11月のRI理事会は、我々ロータリアンがこよなく愛し慣れ親しんできたロータリー・モットーであるHe profits most who serves bestの使用を停止し、その代わりにOne profits most who serves bestを使うことを決定しました。

ロータリー・モットーの採択や変更は規定審議会において採択を受ける必要がありますから、2004年規定審議会で正式に決定するまで、暫定的にこのモットーを使うということだと思います。
従って次の規定審議会では、このモットーの廃止するか、原文のまま継続使用するか、HeをOneに変更して使用するか、さらに前回否決されたHeをTheyに変える案を含めて、激論が戦わされるものと予想されます。
 

この問題の伏線として、2001年規定審議会において01-678「全てのロータリー用語から性に関する表現を削除する件」が採択されたことを受けて、2001年6月に開催されたRI理事会は、このモットーにHeという性限定用語が使われているという理由で、モットーそのものを使用停止にしました。しかし、日本からの反対によって2001年11月RI理事会はその決定を撤回したという経過があります。
しかしながら、日本のロータリアンから見れば異常とも思える女性ロータリアンからのクレームに攻しきれず、さりとて、2001年規定審議会においHe をThey に変える提案01-391は220対259で否決されているので、Theyを使うわけにもいかず、苦肉の策としてHe をOneに変更したものと思われます。

このモットーはロータリーに職業奉仕という概念を導入したアーサー・フレデリック・シェルドンによって作られ、1911年のポートランド大会で「ロータリー宣言」の結語として使うことが満場一致で採択され、1950年の国際大会で、Service above selfと共に正式なロータリー・モットーとして採用された、ロータリーの歴史と理念の上で重要な意味を持つドキュメントです。

しかし、職業奉仕理念の衰退と共に、このモットーの存在が疎んじられ、1989年の規定審議会では89-145によって第二モットーに格下げとなった上、アメリカ国内法によって女性の入会が認められたことによって、性限定用語だという理屈にならない理屈で、この職業奉仕の原理とも言える名文が改変されることに激しい怒りを感じるのは私だけでしょうか。 
女性が入会した後に作られる文章に関しては、性限定用語を使わないように配慮することは当然としても、それ以前に作られ、かつ歴史的、理論的な意義を持つ文書にまで、これを適用する必要があるのでしょうか。

昨年のテーマに使われたmankind is our business はディッケンスのクリスマス・キャロルから引用した文章ですが、このmankindという単語を巡ってかなりの論議があったと聞いていますが、キング元会長は、古典からの引用であるとつっぱねたそうです。なぜ、mankind is our businessが許されて、He profits most who serves bestが許されないのでしょうか。ロータリーの世界におけるシェルドンの存在は、文壇におけるディッケンスの存在以上に重要なことは、ロータリー歴史を少しでも勉強した人なら判るはずです。従ってこの一連の経緯は、性限定用語が含まれていることを表向きの理由にした、ロータリーのシェルドン離れ、すなわち職業奉仕の軽視ではないかと勘ぐらざるを得ないのです。

私は今までに数多くの外国のパスト・ガバナーとロータリー談義をしました。流石にパスト・ガバナーだけあって全員が、He profits most who serves bestというモットーを知っていましたが、台湾、韓国以外の殆どの人は、このモットーを作ったのがシェルドンであることも、シェルドンが提唱した職業奉仕理念がどういうものであるのかを知りませんでした。1/3位の人は、その話に関心を示しましたが、残りの人たちは「そんなことを議論している暇があったら、ボランティア活動に精出したらどうだい」と言い出しかねない雰囲気でした。 

ビチャイ・ラタクル会長は11月29−12月1日に開かれたゾーン研究会のスピーチの中で、職業倫理高揚について語った際、あえてOneを使わずに、終始Heを使ったのが印象的でした。