人口爆発とロータリー
国連の1995年度の推定人口統計によると、1900年の地球の人口は16億でした。これが2002年では62億となり、2025年には78億に、2050年には89億になることが予測されています。1990年度の発表では、2050年には100億を超すという予測でしたが、アフリカ南部のエイズが急増したため、90億に下方修正されたという経緯があります。
先進国の占める人口は約11億でずっと固定していますから、開発途上国で人口爆発がおこるということです。今の開発途上国や発展途上国の中から50年後には先進国になる国があるにもかかわらず、先進国の人口は増えません。それは、先進国の出生率が低いからです。
開発途上国、発展途上国の人たちが、我々先進国が歩んだような豊かな生活を望むのは当然のことです。しかし地球の資源には限りがありますから、人口爆発によって環境破壊や資源の枯渇が起こるのは当然です。その結果、右肩下がりの経済になり、地域格差が増大し、世界の各地で貧困を原因とする紛争が起こってくることが予測されます。
地球のキャパシティーは80億と言われていますから、今から20-30年後にはその兆候が現れてくる可能性があります。人口爆発が統計通りに進めば、騒乱と飢えと貧困の時代が近々に来ることを今から覚悟する必要があるのです。ですから、果たして人類は22世紀を迎えられるのかという問題を、まじめに考える必要があります。
事業の発展とか、雇用の確保とか、経済成長とか、収入がだんだん増加していくとか、生活の向上とか、平和の維持とか、現在私たちが当然だと思っている右肩上がりの生活が、まさしく空想に過ぎないこと、思い知らされる日が、やってくるのです。
この最悪の事態を回避して、人類が無事に22世紀を迎えるために、私たちは知恵を絞らなければなりません。
科学技術を振興させて、食料を増産し、合成する方法を考えなければなりませんが、何よりも大切なことは開発途上国の人口爆発を抑えることです。
統計によれば、先進国の平均の出生率は2名以下、開発途上国は地域的なばらつきがありますが5名とも7名とも言われています。
出生率と女性の識字率とは密接な関係があり、女性の識字率が高い国ほど出生率が低いという結果が出ています。世界の総人口の1/3が非識字者で、非識字者の2/3は女性です。従って人口爆発を抑える唯一の方法は、開発途上国の女性の識字率を高めて、バス・コントロールによって計画出産をすることなのです。
その意味合いから、現在ロータリーが行っている識字率向上活動は、ポスト・ポリオプラスの最重要活動ともいえます。
そういう努力が功を奏したとしても、着実に地球の人口は増えて、資源が乏しくなり、環境が悪化していくことは確かです。従って、物質至上主義から決別し、価値観を変えていく必要があります。ロータリーが得意とする、人類愛に基づく分かち合いの精神を、地球全体に広げていく必要があるのです。
現在の日本は経済不況の最中にあります。一見好況に見えるアメリカも、絶対に返済不能な多額の借金をかかえており、先進国のほとんどは同じような状態です。その上、イラクとの戦争によって、多額の戦費、復興資金が必要になることから、いつ世界的な同時不況が来てもおかしくない状態にあると思います。
自由競争による資本主義社会では、経済不況によって事業の継続が難しくなると、かつてのような弱肉強食の時代に逆戻りして、職業倫理が低下することが考えられます。従ってロータリーは職業倫理低下の抑止力として働かなければなりません。
我々は職業人として、社会情勢や産業構造の変化に対応しながら事業を存続していく義務があります。社会奉仕や國際奉仕活動の受益者はロータリアン以外ですが、職業奉仕活動の受益者にはロータリアンが含まれます。ロータリアンと地域社会の人々にメリットを与える職業奉仕活動を真剣に考える必要があります。ロータリーの職業活動が、ロータリアンと地域社会の人々の双方にメリットを与えてこそ、ロータリーの存在価値があるのです。
経済不況が恒久化すると、国家財政の基盤が脆弱化してきます。そうなれば国家が社会福祉や社会保障のすべてをまかなうことが不可能になります。すでにイギリスでは、サッチャーの「ゆりかごから墓場まで」という思想は完全に消えてしまって、すべてをNPOでやろうというのがブレアの政策です。アメリカでも地方自治体の役割のかなりの部分をNPOが肩代わりをしています。
従って、ロータリーが社会奉仕や国際奉仕の分野で活動せざるを得ない局面が、更に増えてくることを自覚しながら、今後のロータリー・ライフを考える必要があります。
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