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炉辺談話(179)

クラブ理事会の先議権と裁量権

クラブの管理運営に関するすべての決定は理事会の決定が優先します。これをクラブ理事会の先議権と呼んでいます。いくら素晴らしい委員会活動であっても、理事会がそれを承認しなければ実施することはできませんし、クラブの代表権者である会長や幹事が、たとえ、「今年度は5名の会員増強をします」とガバナーと約束したとしても、国際奉仕委員長が「○○クラブと姉妹提携します」と相手方と約束しても、理事会がそれを否決すればその約束は反故になります。

すべての事項は、総会ではなくて理事会によって決定するのがロータリーの特徴であり、総会は会長エレクトの選挙のためだけに開催され、クラブの管理運営や事業を決定するために総会を開催するという規約そのものが、ロータリーにはありません。

理事会に先議権を与えるというロータリークラブの風習は、1909年に定められました。その間の事情をシカゴクラブの歴史を解説した「Golden Strand」から抜粋してみます。

1909年のある日、クラブの製材業者の会員が卓話をして、建築材料としての材木の長所を褒め称えた。彼は熱弁をふるい、原生林、風にざわめく松、つがの木のことを詩的に表現した。人々に最高の家を提供するためには、板や梁が必要であり、それには、小さい種から雄大な木が創造される、ゆっくりではあるがすばらしい過程が必要であるという、自然の生き生きとした描写を述べた。彼は、エイブ・リンカーンが丸太小屋で生まれ、成長した話をした。それはすべて事実であったし、反論の余地はなかったし、人の心を感動させたので、その話が終ると、クラブの他の会員は一斉に立ち上がって、決議をするように動議を出した。満場一致で、ロータリアンは「建物は、煉瓦がより材木で作るほうが良い」という動議を可決した。

 あいにく、創生期のシカゴ・ロータリークラブには煉瓦製造の会員はいなかった。しかし、翌日の新聞はその行為を報告し、一日も経たない内に、ロータリークラブに天罰が下った。シカゴのすべての煉瓦屋は大声で激しく迫った。彼らは叫んだ。
「煉瓦は神の自身の土で作られている!」
「この地球から一握りの土を取って、煉瓦を造り上げたのは、人間ではない!」

 1週間も経たない内に、クラブは、「決議は、今後、最初に理事会によって熟慮され承認されない限り提案することはできない」という規則を採用した。この拭い去ることのできないエピソードによって、この規則は今日まで守られている。

この出来事を契機として、すべてのクラブの決定は理事会の承認がなければできないことになりました。

さて、2001年の定款改正によって、かなりの部分が理事会の裁量権に委ねられることになりました。

   ○        例会の変更、取消
○        例会充当時間に満たない出席の判定
○        名誉会員の身分存続
○        職業分類の是正、訂正
○        出席免除・・理事会が承認した奉仕プロジェクト、行事、会合
○        出席免除・・理事会が承認した理由
○        会員身分終結

こういった事項は、すべて理事会の決定に委ねられることになりましたし、会員選考の最終決定も理事会が行います。ただし、理事会の裁量権を緩めて何でもありの状況になると、「たがの緩んだ」状態になることが予測されますので、理事会はロータリー運動とは何かを真摯に考えた正しい判断をする必要があります。