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炉辺談話(181)

社会奉仕の新しい発想

社会奉仕とはコミュニティ・サービスの翻訳ですから、このコミュニティ範囲をどこにするかによって、活動範囲が変わってきます。この度の定款改正によって周辺地域(ローカリティー)という概念が入りましたから、社会奉仕活動の実践範囲も、クラブ区域限界(テリトリー)内からローカリティーに変わったことになります。従って、例会に参加可能な範囲はローカリティーに入ることになり、隣接クラブの区域限界を飛び越えた周辺地でも社会奉仕活動が可能になることになります。近隣クラブ同士の摩擦を起さないように配慮する必要が生じてきます。

21世紀はボーダーレス社会といわれています。ボーダーレス社会にはボーダー(境界)がありませんから、地域社会を地球全体に広げる必要があります。従って、多分何年か後には 社会奉仕という概念が拡大されて、現在の国際奉仕と社会奉仕を包括したようなものになり、それにロータリー財団の活動が加わって、これらが渾然一体となって機能していくのではないかと考えられます。

その良い例が世界社会奉仕WCSです。
 例えばある国にスラムがあるとします。住民は極貧にあえいでおり、子供たちが教育を受ける場もありません。何とかしたいということで地元のロータリークラブが援助活動をしていますが、そのクラブの力では人的にも資金的にも限界があって十分活動できません。その結果、国境を飛び越えて日本のあるクラブに、援助してもらいたいという要請が入ります。すなわち、ある国のクラブがその地域社会のニーズに基づいて行っているプロジェクトを、外国のクラブの社会奉仕活動に置き換えてする活動のことを世界社会奉仕と呼んでいます。現在、世界社会奉仕は国際奉仕の一部に分類されていますが、将来は、社会奉仕の一部と考える時期が来ることは間違いありません。

ロータリー活動は個人奉仕が原則です。個人では力が足りないと感じれば、自分と関りを持つ、職場や同業者や地域社会の人々を巻き込んで活動をする必要があります。もし、クラブが団体として奉仕活動をする必要があるときは、個人個人がその活動に対する目的意識を持った上で、それが一体となって動く奉仕活動、すなわちindividual collectively serviceでなければなりません。

然しながら、決議23−34は決してクラブが行う団体奉仕を禁止するものではありません。どのようにして奉仕活動を実践したらいいのか判らない会員ために、サンプルとして団体奉仕活動をしなければならないことがはっきりと書かれています。そして、クラブで行う団体奉仕活動の条件として、地域社会のニーズに基づいた新しいプロジェクトを毎年一つ実施する、単年度で終了する、既に実施されている活動とは重複しない、既存の組織が活動しているプロジェクトと重複してはならないことなどが定められています。ロータリーは毎年新しい地域社会のニーズを探して、そのプロジェクトを開始しなければなりません。そしてそのプロジェクトがある程度基盤にのったら、他の専門団体にこれを任せなければなりません。そして、ロータリーは又新しいニーズを探すのです。

日本では奉仕活動の資金は、ニコニコ箱から支出されることが多いようです。外国ではニコニコ箱の制度がありませんから、目的別に募金をします。ポリオ・プラスのためとか、識字率向上のためとか 目的別に帽子をまわします。日本では自分に嬉しいことがあったら千円という形で入れてしまいますから、クラブの本会計は苦しいのに、ニコニコ箱にはたくさん溜まってお金がなかなかはけないという現象が生じます。ニコニコ箱を消化するために、安易な協賛や寄付が多くなります。クラブの年次報告を見ますと、殆どのクラブには何々協賛、何々に援助という形で、1万か2万寄付しているようです。最初に1万円もらった団体は喜びますが、次から予算化して当てにします。3回目からは、くれなかったら文句をいいます。ロータリークラブが主導権を持って、地域社会のニーズに基づいたプロジェクトを開発し、そのために集中的に募金をするという形をとればきっと素晴らしい奉仕活動の実践が出来ると思います。

RIが推奨する社会奉仕活動には、環境保全、新世代対策、識字率向上、薬物乱用・アルコール過飲防止、平和な都市づくり、高齢者対策、身体障害者対策、エイズ教育、ロータリー地域社会共同隊などという項目が出てまいりますが、新世代対策、高齢者対策、身体障害者対策以外は日本には殆ど関係ないということで、これらのプロジェクトを取り上げているクラブは少ないと思います。

例えば環境保全。強い西風が吹くと中国大陸の工場排煙がそれに乗って日本海を渡って飛んでくることによって、化学物質によるアレルギー性結膜炎が多発します。酸性雨も同様です。これは、環境保全という問題は一国だけでは解決できず、社会奉仕活動であると同時に国際奉仕活動であることを意味します。究極的な環境保全のテーマは人口問題です。人口爆発が起これば間違いなく地球の資源が枯渇します。先進国が資源を乱費し汚染物質を出し尽くして、今の栄華を極めているのですから、開発途上国が、少しでも生活の向上を図ろうとして、その過程で環境を破壊することを制限するのは身勝手なことです。しかしこのまま放置すれば、大変なことになることも明らかです。ロータリアンには素晴らしい専門家が揃っているはずですから、国益を離れて地球レベルでこれを解決する努力が必要です。

識字率向上も、日本では殆ど関心がないようです。義足プロジェクトのため、カンボジアに行ったロータリアンの話では、カンボジアの田舎では、毎日何人も子供が、埋没されている地雷に足を吹き飛ばされているそうです。そこには、ちゃんと地雷危険という札が立っているのですが、その字が読めないためにそこに入っていくのです。
 現在地球上には10億の非識字者がおり、そのの内の三分の二は女性です。字が読めないために、避妊方法が分からず、これが人口爆発につながります。乳児死亡率が高く、疾病に対する予防や治療にも大きく関ってきます。又字が読めないためにエイズの危険性も理解できないし予防もできません。字が読めないからいい仕事にもありつけません。貧困と非識字は悪循環を繰り返しているのです。どこかで、この悪循環を断ち切らなければなりません。
 先進国でもMedia illiteracy情報非識字が問題になっています。インターネットやメールができないから情報が伝わらないというケースです。ITが使えなくても、他の方法で情報伝達はできますから、あまり大きなハンディにはなりませんが、字が読めなかったら全く情報は伝わらないのですから、もっと関心を持つ必要があります。

薬物乱用、アルコール過飲防止、特に青少年の薬物乱用は今後深刻な問題としてクローズアップされることは必定であり、本気になって取り組む必要があります。
 平和の都市づくりも、これも最近の日本では、バールで金庫をこじ開けてレッカーで運び出すような物騒な世の中になってきました。また、ひったくりとか、オジン狩とかいろいろな現象が出てきて、私たちが被害者になる可能性もあるわけです。
 エイズ教育も大切です。つい最近までは南アフリカや東南アジアの問題だとして、あまり日本では関心を持たれていませんでしたが、今は確実に日本でも広がっています。厚生省の発表は実際のエイズの患者の何十分の一かの数であり、医療のみならず、道徳や教育の問題も含めた対策として真剣に考える必要があります。

ロータリーは多くの青少年活動を支援しています。ロータリーの模範的な関連団体であるインターアクト・クラブ、ローターアクト・クラブ、ライラ、國際青少年交換、こういったものを通じながら、私たちはロータリーの理念を植えつけていきたいと思いますが、これらの活動に参加している青少年は、極く一握りに過ぎません。それ以外のたくさんの青少年をどうするのかということを、もっと真面目に考える必要があります。

 プロバスクラブはRIの正式なプログラムに入っておりません。プロバスの会員増強によって、ロータリーの会員増強が影響を受けるのではという問題もありますが、すばらしい高齢者対策の一つです。

一昨年度からできた新しいロータリー財団補助金に、地域社会援助補助金CAPがあります。今までロータリー財団の寄付金は、財団奨学金以外は全部外国におけるプロジェクトに使われていて、国内では使うことはできませんでした。自分たちの地域社会で財団の寄付金が使われれば、財団寄付にも弾みがつき、地域社会の人達にロータリーをPRする絶好のチャンスになると思います。なお、このCAPは、次年度からは地区財団補助金制度の一部に組み込まれることになっています。

先ほどから触れているように、環境保全、貧困・飢餓・疾病対策、識字率向上、失明回避、エイズ対策、暴力追放、身障者就労こういった社会奉仕活動は国際奉仕活動と連携しながら実施しなければなりません。これらの活動の殆どは、外国で行われる活動ですから、こういった人道主義に基づくボランティア活動に積極的に参加する必要があります。
 殆どの対策が、行政や専門機関で実施されている国内で、敢えて重複するプロジェクトを実施するよりも、開発途上国の人間の尊厳を守るための基本的なプロジェクトに目を向ける必要があります。

クラブが行う奉仕活動の実践はクラブの権利でもあり義務でもあります。奉仕活動の実践は、RIの指示によって行うものではなく、クラブが自主的に行うものです。RIが要請する奉仕活動の実践は全世界のニーズを取り入れた素晴らしい活動ばかりですが、クラブが考えている活動との乖離があれば、それを採用しないことも自由です。その代わり、RIが要請する奉仕活動以上のものを、クラブが開発して実践する義務があるのです。クラブがそのことを真摯に考えながら、素晴らしい奉仕プロジェクトを開発、実施すれば、魅力溢れるロータリー・ライフが送れるのではないでしょうか。