.
炉辺談話(183)

世界大恐慌と職業奉仕


1929年から始まった世界大恐慌によるロータリーの危機を回避するために、シカゴ大学社会科学調査委員会にロータリーの徹底的な調査を依頼し、その調査報告書が「Rotary ?」という題名で出版されたことは、前回の「炉辺談話」で述べました。それ以外にも、国際ロータリーは、職業奉仕を基本に据えて、ロータリーの危機を回避するための多くの試みを実施しています。
今回は、1932年9月に発表した「ロータリークラブの職業奉仕活動の典型的な活動とプログラム」、および1933年1月に発表した、「職業奉仕委員会プログラム指針」をご紹介します。
この中には、昨今の深刻な経済不況とロータリーの低迷にも応用可能なプログラムが幾つか含まれていると思いますが、如何でしょうか。


ロータリークラブの職業奉仕活動の典型的な活動とプログラム

1 生活水準の維持向上。(すべての国に、適切な高い生活水準を設定、維持するための経済勧告の議論)
2 生産と消費のバランス。(その目的を持つ現在や過去の様々な産業や政府の計画に関する賛否両論の議論を含む)
3 雇用問題。(老齢年金、失業保険、労働期間、余暇などを適切に定めることによる、労働者を雇用する者としての責任に関する考え方。これらの事柄は、シリーズ化する機会を与えることによって、全体としての価値が高まる)
4 関税。(債務国と債権国、生産国と消費国などの間で起こる条件の違いや関税の関係を率直に議論をすることによって、公正な国際貿易に対する考え方を考慮する場とする。これらの議論は、ゲリラ的な性格ではなく、純粋な経済学としての立場から、常に全世界的な見地に立脚したものである)
5 分業活動による雇用の創出。
6 移転によって修理や改造を促す可能性。
7 満期を迎えた抵当権を持つ家屋所有者を援助するために幾つかの地区の委員会を組織する。

職業奉仕委員会プログラム指針

1 経済問題に関する文献や書籍の再検討。
2 ジョン・フリンの著作、「事業における汚職」の再検討。(特に、贈収賄と裏金の関係について重要)
3 贈収賄と裏金に関連する州や地方の法律の骨組みともなる部分を、弁護士または制定者によって提出させる。
4 国際ロータリーによって出版された経済のパンフレットの再検討。これらには下記のものがある。贈収賄と裏金、国際経済学、六人のヨーロッパのロータリアンによる経済恐慌に対する考え方、七人の北アメリカのロータリアンによる経済恐慌および後遺症に対する責任。
5 事務局は、快くクラブに出席して、経済問題について講演する、国内の様々な分野の92名の卓話者のリストを準備している。何人かの人は有料だが、何人かは必要経費だけ、またはまったく報酬を要求せずに快く話をしてくれる。事務局は、様々な分野で利用できる人々のリストを、クラブに供給することができることを喜ぶものである。
6 全米商工会議所と国際商工会議所の報告書
7 国内および国際未来計画の議論。
8 失業および失業保険計画の実際的影響に関する議論と提案。
9 国際連合の経済部門の報告書。
10 農産物の価格を高値安定させる方法。これを実施することによって、どのような範囲に、現在の関税に対して有益または有害な影響をおよぼすか
11 国際貿易に対して大きな信用と協力をもたらす方法。
12 特に、過去の戦争と未来の戦争に備えるために支払う大きな経済損失の見地から軍備縮小。
13 国際的な貿易を盛んにするための国際的な言語の価値。
14 結果として、最も有利な条件と最も低い価格で製造できる場所で品物を生産するために、国際貿易制限の廃止。
15 支払能力に基づいた戦時債権の再調整と保障。(注:一般的に了承されるアメリカ合衆国の立場は、戦時債権はヨーロッパから支払われるべきであるが、これは現物支払いによってのみ支払われることは明らかである。ヨーロッパの国々は支払能力があるので、品物を生産するだけではなく、それを債権国に輸送できる立場にある)
16 労働条件と移民に関する国際協定。
17 ソ連との貿易およびロシアと他の国々との将来の対応。
18 経済の問題を世界の問題として考える必要があるので、一地域の熱望や野望の犠牲になったり、単に国益の昂揚のみを図るべきではないという、国家方針を、すべての国に設定すること。この話題は、すべての他の事柄の基本となるものである。