ブリスベン国際研究会報告
5月27日
例のごとく、西宮から関西国際空港行きのリムジン・バスに乗車しました。乗客はたったの3名。サーズ騒動依頼毎日こんな状況が続いているとこぼす運転手とおしゃべりしながら空港に着き、既に到着していた安平ガバナー夫妻、見送りの三木代表幹事と共に、寿司屋で出発時間間際まで一杯やりました。
空港の中は人影も疎らで、不気味なほどの静寂。苦労して入手したマスクもそれをはめている人は誰一人見当たりません。登場したジャンボ機も乗客はたったの90名。エコノミーに乗ったのが正解で、4人がけの席を独占して、ゆっくり横になって熟睡することができました。
5月28日
予定よりも20分近くも早く到着し、タクシーでホテルに向かいました。早朝にもかかわらず、部屋にチェック・インすることができました。日本からの便が早朝に集中しているので、早朝チェック・インが当たり前になっているようです。時差が一時間なので、万全の体調で過ごせそうです。
今日は一日フリーなので、安平ガバナー夫妻、日本事務局の都築嬢、四国のライラリアンとご一緒にサンシャイン・コーストへの半日ツアーに出かけました。何の因果か、晴天続きのはずのオーストラリアはどしゃ降りの雨で、素晴らしいはずの海岸を拝むことのできない観光でしたが、きれいな空気と、ちらりと見えた数匹のカンガルーが救いでした。
夜は、ブリスベン川沿いのレストランで、おいしいシーフード・ディナーを満喫しました。
5月29日
午前中は持ってくるのを忘れた電源の転換プラグやイヤホーンを買いに町にでました。オーストラリアは八の字型の三極プラグであることを忘れていました。家には売りに出すほど沢山のイヤホーンがあるのに、いざ使おうと思うとトランクには入っていないものです。
塵一つ落ちていない街路、深い緑と澄んだ空気、深呼吸すると新鮮でおいしい空気が肺の隅々まで清めてくれて、こんな町には絶対にSARSは起こりえないことを確信しました。
コーヒー・ショップに入ると必ず種類を聞かれます。ショート・ブラックは小さい器のエスプレッソ、ロング・ブラックは大きな器のエスプレッソ、アメリカンとカプチーノも定番メニューです。ミルクはあまり使わずに、日本ではめったにお目にかからないドロッとしたヘビー・クリームが好まれるようです。
夕刻から、明日のディスカッション・フォーラムに備えて、パネリストの打ち合わせ会に出席しました。私は2500地区の道下PDG、2650地区の宮崎PDGとご一緒に「職業奉仕」を担当するのですが、持ち時間が7分に制限されているので、お互い原稿を切り詰めるのに苦労しました。自分の言いたいことを制限時間内に纏めることも能力の一つと言い聞かせながら、なんとか要旨を纏めました。
晩は国際協議会のレセプションに出席。各国から参加した旧知のシニア・リーダーと再会し、旧交を温めることができました。
5月30日
今日は国際研究会の第一日目です。国際研究会はシニア・リーダー、すなわちガバナー、パスト・ガバナー、ガバナー・エレクトおよび、そのゲストのみが出席を許された指導者研修会で、従来は2-3人しか参加しなかった日本人が、今回はなんと80名以上も登録するというハプニングが起こりました。ビチャイ・ラタクル会長の感動的な基調講演に続いて、「ロータリーは時流に沿った変化をしているか」というテーマでディベートが行われましたが、内容はほとんど奉仕活動の実践に限られ、理念に関する話題が皆無だったのが残念でした。会場からの発言時間をたっぷりとって発言を促したので、レベルの高低に格差があったものの、多くの発言がありました。今回は日本語の同時通訳がついて非常に便利でしたが、イヤホーンをつけているのは非英語圏の人に限られ、日本語で意見を述べても、通訳がいながら誰も聞く手段を持っていないという状態なので、発言を断念しました。
午後の第二セッションは「サイバークラブ、ニューモデルクラブ」「国際研究会の必要性」「スポンサー・シップ」「日本語セッション」に分かれて開催されました。
全世界には、現在75のサイバー・クラブができているとのことですが、配偶者や社員等の代理出席が認められているニューモデル・クラブができているという報告には、いささかびっくりしました。
私が参加した日本語セッションについてご報告いたします。
グループ討論1「会員の低下およびクラブと地区の再編統合」
松岡道夫(2680地区PDG)
世界的には減少傾向がストップした中で、日本は減少傾向が止まっていない。長引いている不況、ロータリアン同士の親睦の不足や、IT化によって何でも一人でできる環境になっていることが原因かもしれない。
これに対処するために、年会費等の負担を減少したり、ボトムアップの提言をクラブでも実践したり、新入会員がロータリーに馴染むようなロータリーマジックを経験する機会を設けることが必要である。ビチャイ・ラタクル会長は質を追求すれば量も確保できると述べている。日本においては女性会員の入会を促進する必要がある。
クラブ統合はクラブの判断で行うべきである。合併前のクラブ名称を引継ぐことができるという提案が、2004年の規定審議会に上程される。
黒田正宏(地区PDG)
世界では会員減少が止まったが、日本では7年連続で減少しており、不況、増強キャンペーンのマンネリ化、女性会員への入会が少ないことが要因と考えられる。組織を活性化するためには会員増強が必要である。
転勤、高齢、病気、会社の事情による退会を防止することは困難なので、拡大や会員増強を通じて、クラブはもっと努力を傾注すべきである。
入会時のオリエンテーションの充実、ロータリー家族の参加、会費軽減の工夫、地域社会への広報活動等、クラブで中長期的な計画を立てることが必要である。
日本ではRIの基準を満たしていない地区は少ないので、安易に地区分割や統合をすべきではない。
グループ討論2「ロータリーおよび職業奉仕における道徳観」
田中 毅(2680地区PDG)
ロータリー思想の中心になるものはアーサー・シェルドンが提唱した職業奉仕の理念であり、従来の一攫千金の機会を捉えたビジネスを学問として体系化した。1913年の氏の論文で、ビジネスは科学であるがゆえに法則があり、法則に則って事業を営めば必ず成功する。小さなサービスでは小さな収益しか生まないが、大きなサービスは大きな利益を生むと述べている
シェルドンは成功している事業所に共通の法則を発見し、顧客が満足感を得れば、必ずリピーターとなって訪れ、これが事業の発展につながると述べている。これは、結果として高い倫理観を持つことでもある。それを端的に表した言葉がHe
profits most who serves bestであり、そのモットーを具体化したものが、道徳律、4つのテストである。
事業を発展させる原動力は、事業主のみではなく、従業員や取引先や顧客や同業者のお蔭であり、それらの人達にと利潤を適正にシェアすることが必要である。
人道的な奉仕活動が活発な現在であるが、ロータリーの原点は職業奉仕であることを銘記すべきである。人道的奉仕活動の受益者はロータリアン以外であるが、職業奉仕はロータリアンが受益者であり、大きなメリットを与えること忘れてはならない。
21世紀の産業構造は100年前と大きく変わっているので、21世紀に相応しい職業奉仕の実践方法を構築しなければならない。同業者組合の中心として活力を与えることも重要である。
現在の63億人の地球人口は、50年後には89億人になり、途上国を中心に人口爆発が引き起こされる。今後、資源枯渇によって「全地球的規模の不況」が発生することを考えながらロータリー活動をしなければならない。近い将来の経済活動は100年前の「弱肉強食」の時代に突入する可能性があり、各国の財政基盤の脆弱化からNPO活動が「主流化」して、ロータリーの出番が多くなることが予測される。
道下俊一(2500地区PDG)
私の入会当初は、先輩は厳しく、ロータリアンになることはステータスであった。道徳律や大連宣言などが消えていき、手続要覧の中から決議23-34が消えるという事態が起こった。75周年を転機に財団が肥大化し、ポリオ、財団等にスポットがあたる中で職業奉仕の影が薄れていった。
北海道でも拓銀、雪印が消滅し、大連宣言の言葉の重さを感じる。職業奉仕の高揚を前提にロータリアンが活動していれば、それらの企業は今も残っていたであろう。国際協議会で菅生理事が職業奉仕に関する素晴らしいスピーチをされた。
宮崎茂和(2650地区PDG)
崇高な目標を持つこと、決議23−34、決議89−148、奉仕の理想・超我と奉仕と寛容、職業に対する倫理性、松下幸之助の言葉について説明があった。
菅生浩三理事
問題は人間はやっかいな生物だということである。人の助けが必要な社会的存在なので、自分だけで満足するのではなく、人様の幸せに自分が喜ぶことが職業奉仕のスタートである。この考え方はロータリーの専売ではなく、人間社会の基本的な価値をロータリーが取上げたものである。
ロータリーは多様な社会のニーズの集積である。社会の各人が自分に与えられた職業を立派に遂行することで、社会がよりよくなる。職業は自分が生活するために遂行するという考えは当然であるが、他人に尽くすために、自分に与えられた職業を遂行するという価値の転換をすることが職業奉仕の出発点である。
夜はジアイ元会長を囲んでの同期ガバナーの懇親会が、アイリッシュ・クラブで開催されました。メル友のバットが親切にもてなしてくれ、Literacy委員会で何度かメールのやり取りをしていたジョンとも会うことができました。ジアイ元会長の奥様セリアにダンスを所望され一曲踊りました。ホテルに戻って、後発の2680地区の参加者と共に、XXXXというおいしい地ビールを飲みながら遅くまで語り合いました。
5月31日
今朝の便で、同じ地区の福本、中村氏が着くので、首を長くして待っていましたがなかなか現れず、痺れを切らして、国際協議会の会場に出かけました。
ジョナサン・マジアベ会長エレクト
歴代RI会長のテーマの紹介に続いて、本年度のテーマ「手を貸そう」(LendaHand)を遂行するために、4つのタスクフャォースを設けた。ロータリアン同士がお互いに手を貸すために、ロータリー家族TFを設けた。ロータリー活動に熱心な会員は家族との時間が取れないという不満がある。従って、家族をロータリー活動に参画してもらうことが重要である。多くの人達が貧困の中で絶望しており、それらの人達に生きるための手段を与えることが大切である。マイクロクレジット、識字率向上によって次の世代に明るい希望を与えることができるし、医療や疾病予防によって、健康と長寿というプレゼントをすることができる。
経験に長けたロータリアンは私の計画に手を貸して活動し協力すれば、一本の手が多くの手となり、大きな成果を挙げることができる。
グレン・キンロス財団管理委員会委員長
本年度は、現在までに9440万ドルの寄付をいただいた。2005年にまでに1人当り100ドルが達成できれば1億2千万ドルの年次寄付となり、財団運営の幅が広がる。
市場環境の悪化によって、2003年には1600万ドルの損失が見込まれ、準備金を取り崩して、4090万ドルまで減少している。
ポリオの発生国は7カ国に減少したが、インドでは増加している。インドでポリオが根絶できれば世界で根絶できる可能性が飛躍的に高まる。これからの2年間の努力がポリオ撲滅につながる事を願っている。
平和センターの奨学生は初年度に217人の申請があり、35カ国からの学生が選抜された。二期生は117名の応募があった。今後、いかにこれを継続するかが、大きな課題である。
マッチング・グラントは昨年に比べると30%減少し、一件当りの資金額も減少している。申請が受理されていないプログラムが1,000以上残っており、新しい申請を受け付けることが困難になっている。なるべく地区のニーズを満たすものにしたいと思うが、そのためには寄付や投資収入を増やす必要がある。
ジョン・.シーバー国際ポリオプラス委員会委員
1985年に2億4千万ドルの募金目標を設定し、ポリオ撲滅に全力を挙げてきた。現在、第二回目の募金目標を達成しようとしているが大会2日目にその実績を発表する予定である。
ポリオを2005年に撲滅できる可能性は高く、野生ポリオの伝染を中断することが当面の目標である。伝染が中断していてる地域のサーベイランスを続け、3年間発症しなければ、撲滅宣言をすることができる。
発症7カ国のうち、インド、パキスタン、ナイジェリアの三カ国が最も重要であるが、最近、発症がゼロになったアンゴラ、バングラディシュなど6カ国でのサーベイランスも重要である。
ポリオ発症国の努力が重要であり、政府、地方自治体の協力が不可欠である。
少ない確率ながらワクチン投与による発症例があるし、バイオテロによる発生も否定できない。
講演「事業および専門職務の道徳的水準」
ラジェンドラ・サブー四大奉仕部門委員会委員長
倫理がロータリーで語り合われるのは久しぶりのことである。倫理感の説明は世代によって異なり、若い世代へは、間違えて多くのつり銭をもらったら、店に返すことを語ることであり、実業家には多重口座を持つべきではないことを語ることである。
新しい文化には新しい価値観があると言う人がいるが、四つのテストは現在、価値がなくなったのだろうか。友情や親睦がお金で買えるとか、自分にとって良いことは社会にとっても良いことだと考える人達がいるが、そんな人に限って新聞紙上を賑わせることが多い。すばらしいロータリアンであるべき人が、スキャンダルを起したというニュースを見るのは悲しいことである。モーゼの10戒を破ってもつかまらなければ良いと言う人もいる。
ロータリーは職業における高い倫理観を持ち、理念として守ってきた。
自分だけよければ良いという狭い考え方がはびこっているのは創立当初も今日も同じである。職業奉仕の父とも言われるシェルドンは、最もよく奉仕するものが最も多く報われるという考え方を発表し、それ以降に、四つのテストができた。
現在では社会的基盤が揺るがされているので、特に、職業奉仕の必要性が高い。株価が下がり、いろいろな不祥事が起こっている。正直さとは何かが問われる、金銭関係が倫理として話されている。
ガンジーは、信念のない政治、仕事をせずして得た富、モラルのない商売、人格なき知識、人間性のない科学、良心のない楽しみ、犠牲のない宗教を七つの罪と述べているが、これも現在、十分適用すべきである。今何が起こっているかをしっかり見つめる必要がある。この一つ一つは大したことのない罪かも知れないが、これが集まれば悲しい事態となる。
子供達に言葉使い、行動、忍耐、約束を守ったり、人を尊重するなど様々な基本的な倫理を教えるが、それは守られていない。子供達に将来の人生を尋ねると「お金もうけ」という答えが返ってき、そのためには手段を選ばないという答えが返ってきたことに、非常にショックを覚えた。
ロスチャイルドは、自分のポケットから子供がハンカチを盗もうとしているのを見て、私はもっと大きな盗みをしているので、そんなことは気にしないと語った。
お金のあるなしが人やビジネスを判断する基準になっているのは残念なことである。倫理基準の低下が、家族の価値を減退し、それを崩壊に導いている。お金が全てであり、お金が力であり、お金で精神的な豊かささえも得ようとしている。政治家も労働者もそれをまねし、子供達もそれを見習う。
ヘンリー・フォードは創造性を持って1ドルで何ができるかを考える人が成功を収めると語っている。ロータリーでも同じ事を言っている。地球上の資源を独占しようとする人がいるから不公平が生まれる。誠意をもって、倫理基準に基づいた奉仕を実行することが必要である。
四つのテストは決して古臭いものではない。学校や職場で取り入れ、どのようにして自分自身に適用するかを努力をしなければならない。ロータリーは流行を追うものではなく、流行を作るものなのである。
ロータリーは過去において、倫理水準高揚のために立ち上がったし、現在でもその役割を持っている。
1989年の規定審議会で倫理水準高揚について採択し、全ての文献にこれが書かれているが、それを読んだ人や、実践した人は果たして何人いるのだろうか。
ロータリアンこそが社会における、今日、明日のリーダーであり、その影響は大きい。
高い職業倫理を持つことはロータリーの存在やイメージを向上するためにも必要なことである。その過程で会員の退会があるかも知れないが、質が高いことが判れば、入会者も増えてくるに違いない。
数年前、RIの職業奉仕に関する記事に、自分の職業、業界に対して高い倫理水準を維持できなければ、ロータリーを退会するべきであるという内容が書かれていた。我々は声を大にして職業における倫理水準の向上に対する、責任を持たなければならない。
新入会員や指導者に対するカリキュラムにも倫理水準の重要性について語る必要がある。倫理を法的な形で拘束することも、薬のように投与することもできないが、倫理性がなければロータリーの存在価値はない。今日の参加者はロータリーの指導者として、倫理について語ると共に、それを実践しなければならない。
昼休みに、Literacy委員会の顧問をしているDick Walkerと会いました。私のことをよく覚えていてくれて、フィリピンの進行状況を知らせるように依頼されました。夕刻からは、明日から開かれる国際大会に備えて、友愛の家に出かけて、囲碁同好会のブースを設営しました。
夜は2680地区の晩餐会に参加しました。ゲストを含めると50名近くも参加して、なかなか盛会でした。
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