環境や貧困のせいで、幼いときからまったく教育を受ける機会がないままで育ったため、自分の国の言葉による「読み、書き、ソロバン」ができない、いわゆる非識字者は、世界中で10億人存在し、その数は成人の25%に当たり、その75%はアジア人であり、非識字者全体の2/3は女性です。
非識字者は就職の機会に恵まれず、それがさらに貧困を招きます。貧困であるが故に、1億3千万に上る子供たちは就学の機会が与えられず、非識字と貧困は悲惨な悪循環を繰り返しているのです。
毎年のように、RIからの推奨プロジェクトに上げられているのですが、非識字者の悲惨な状況を身近で見ることがない日本では、このプロジェクトに関心を持つ人は少ないようです。
しかし先進国でもMedia illiteracy情報非識字が問題になっています。インターネットやメールができないから情報が伝わらないというケースです。ITが使えなくても、他の方法で情報伝達はできますから、あまり大きなハンディにはなりませんが、字が読み書きできなかったら全く情報は伝わらないのですから、もっと関心を持つ必要があります。
2680地区はカンボジアにおいて義足プロジェクトを実施しています。その報告によると、国境地帯の地雷原に立てられている立看板の文字が読めないばかりに、毎日何人もの子供たちが足を吹き飛ばされているそうです。
非識字者が開発途上国の女性に多いことも、数々の問題を生みます。教育が受けられないことや正しい知識が得られないために、計画出産や性病予防がままならず、これが人口問題やエイズ撲滅の大きな障害になっています。
今ポリオが最終の追い込み段階に入っていますが、ここでも大きな問題となっているのが非識字者の存在です。先進国ならば、葉書一枚で、集団接種の会場に皆を集めることが可能ですが、字の読めない母親に葉書を送っても何の効果もありません。識字率向上運動は、ポリオ・プラス以前の重要なプログラムだと言えるのです。
国連の推定人口統計によると、2002年では62億だった地球人口が、2025年には78億に、2050年には89億になることが予測されています。先進国の占める人口は約11億でずっと固定していますから、開発途上国で人口爆発がおこるということです。今の開発途上国や発展途上国の中から50年後には先進国になる国があるにもかかわらず、先進国の人口は増えません。それは、先進国の出生率が低いからで、先進国の平均の出生率は2名以下、開発途上国は地域的なばらつきがありますが5名とも7名とも言われています。
出生率と女性の識字率とは密接な関係があり、女性の識字率が高い国ほど出生率が低いという結果が出ています。従って人口爆発を抑える最も効果的な方法は、開発途上国の女性の識字率を高めて、バス・コントロールによって計画出産をすることなのです。
識字率向上のプロジェクトが進展しなければ、先進国と開発途上国間の貧富の差が広がるだけではなく、やがて人口爆発によって地球上の資源は枯渇するでしょう。私たちは強い危機感を抱かなければなりません。
RIは、非識字者の存在こそ、貧困をはじめとする諸問題の源であると考え、1997-98年キンロス会長年度から、7月を識字率向上月間に指定しました。ビチャイ・ラタクル前会長に続いてジョナサン・マジアベ会長も、識字率向上を重点項目に上げて、積極的に推進するように要請しています。
RIが積極的に推し進め、効果をあげている識字率向上プロジェクトは、後から来る人々のための道を照らす意味を込めて、ライトハウス・プロジェクトと呼ばれています。このプログラムの中心になるのは、オーストラリアのクイーズランド大学教授であり、パスト・ガバナーでもあるリチャード・ウオーカーが開発した語学力集中研修講座CLEであり、グループ単位で、簡単なストーリーを喋り、それを書き、だんだん難しいものに発展していく方法です。児童、初心者、上級者向けにその内容を変えながら、話し言葉、書き言葉さらには文法にまで発展していく手法です。
このCLEは1987年から、ロータリー財団の人道的補助金を受けてタイで行われ、大きな成功を収めたので、その後、世界各地の小学校、非公式教育現場、ストリート・チルドレン対策等で、識字率向上プロジェクトの基本的な授業方法として採用されています。
2680地区では2002-04年度に2年計画でフィリピンのナボタスで識字率向上プロジェクトを実施中です。資金は2680地区活動資金DDFより7,000$、クラブ・ファンドより4,000$、フィリピン3800地区DDFより1,000$、これにマッチング・グラントを加えて合計22,000$のプロジェクトであり、ナボタスの極貧地域の小学校にCLEを採用した教室を開設します。現在、これを実施する5つの小学校の教師にCLEによる授業法を研修中です。