.
炉辺談話(206)

女性会員

ロータリー運動の大前提は一人一業種の職業分類制度にあります。後世の愚かなロータリアンたちが、この大切な原則を壊してしまいましたが、この原則は1905年2月23日、ロータリーが創立された当日に定められた大前提であるという事実は、否定することはできません。

当初は、同業者がいるとクラブ内の親睦にひびが入るという理由でしたが、後に、広く世間にロータリーの奉仕理念を伝えるためには、あらゆる業種にロータリーの代表を派遣する必要があるという理由が付け加えられ、今日に至っています。
地域に存在する全ての業種にロータリアンを送り込む必要があるとすれば、その業種の経営者がたまたま女性ならば、女性がロータリアンになることは至極当然のことです。また、最近の傾向として、女性特有の職業も増えてきましたから、全ての業種にロータリアンを送り込むという原則から、女性のロータリアンが存在することは当然のことです。
すなわち、職業分類制度の原則から考えると、女性会員の存在を否定することはできません。

その一方で、ロータリークラブを社交クラブと考えれば、女性会員の入会を拒否する人たちにも配慮する必要があります。
ロータリーが限定会員制度の社交クラブとして発足したことは否定できない事実です。当初のロータリーの目的は、会員の親睦と物質的相互扶助による事業の発展でしたが、これは1913年に廃止されて、対社会的奉仕に目的を転換しました。すなわち、親睦を目的とする団体からは脱皮したものの、親睦を前提とする社交クラブであることには違いありません。従って、どうしても女性会員の入会に反対する会員がいれば、それを無視して女性会員を入会させれば、クラブの親睦にひびが入る結果になります。当該女性会員候補者がどうしてもクラブに必要であることを説いて、反対する人の納得を得た上で入会手続きを進める配慮が必要です。

特に古い伝統を誇るクラブには、「女性が入るのなら、俺は退会する」と恫喝する長老会員がいるようです。その恫喝に恐れおののいた理事会が、あわてて、女性会員の入会手続きを取りやめるという話をよく聞きます。その一方で、女性会員入会したにもかかわらず、「女性が入るのなら、俺は退会する」といった会員が本当に退会したという話を、一向に聞かないのも不思議なことです。

会員増強の立場から考えれば、女性会員の入会を積極的に進めるべきでしょう。女性の職場進出が極めて低調なのが日本の特徴だとしても、素晴らしい女性の実業家や専門職業人は大勢います。

会員減少の世界的趨勢にやっと歯止めがかかってきましたが、日本の会員減少は依然として深刻です。どんどん退会していく、誰も入ってこないと、ただ嘆いているのではなく、地域に存在する職業の横断面から女性会員候補者を探して、積極的に勧誘すれば、必ず会員増強の成果が得られると思います。男性だけの会員候補者を探すのでなく、これに女性を加えれば、会員候補者の分母が倍増することを考えてください。

ロータリーの拡大はRIの責務ですが、会員増強の是非はクラブの自治権の範疇にあります。RIはロータリーを人道的な奉仕団体と捉えて、そのマン・パワーの絶対数を増やすことと、人頭分担金の増収を前提に、会員増強を積極的に要請していますが、クラブは会員の親睦や経費や会場や奉仕活動の実態を考えた上で、会員数の適正規模を定めなければなりません。大きいことはいいことだという論法は当てはまりません。ただし、現状のままでいいと考えて会員増強を怠っていると、必ず死亡やリタイアといった自然退会による会員減少と平均年齢の上昇が起こってきます。従って、クラブの活力を高めようと思えば、常に会員増強を考える必要があります。

女性だからという理由で、入会を拒否することは、定款に違反することになります。しかし、現実に女性会員の入会候補者が現れた場合、クラブ細則に基づいてこれを審査しますから、結果として、入会の是非はクラブの自治権に委ねられることになります。
女性会員の入会は、会員増強の見地からも、職業分類制度の見地からも、必要なことだという前提の下で、クラブ内のコンセンサスをとった上で、積極的に進めていくべきでしょう。