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炉辺談話(288)

50年後の地球環境

今から46億年前、微惑星が衝突と合体を繰り返して地球が誕生しました。
一面を海に覆われていた地球に、大陸が隆起したのは40億年前であり、ほぼ同じ時期に海の中で生命体が誕生しました。単細胞のバクテリアから、魚になり、4億年前には陸上の生物が生まれ、爬虫類、哺乳動物を経て霊長類に進化したのが4500万年前、人類の祖先が誕生したのは400万年前です。
生物の進化の過程を見ると、その種の中でもっとも強者であったものは必ず滅び、弱者が異なった環境に順応するように進化して生き延びて、最後に人間に到達したことが分かります。最も弱い種の魚が生き延びるために陸に上がって両棲類となり、巨大な爬虫類ではない哺乳動物、猛禽類ではない霊長類、さらに人類へと進化して行ったのです。
だとすれば、現在最も強者である人類が、未来永遠に強者であり続けることは、自然の摂理に反することになります。それを裏付けるかのように、人類が人口爆発によって絶滅の危機に瀕するのは50年後という、国連の予測統計がでています。

21世紀の中ごろ、すなわち50年後の地球環境はどのようになっていくのでしょうか。
2005年の地球の人口は64億5100万人と推定されています。2000年に国連が発表した推定人口統計(表1)によれば、2010年には68億2600万人、2020年には75億6300万人、2030年には82億600万人、2040年には87億5900万人、2050年には92億2400万人になることが予測されています。地球が人間を養えるキャパシティーは約80億だと言われていますから、これをはるかに越すことになります。
もっとも、1995年に発表された推定人口統計では、2050年には100億人を越すと言われていたのですが、アフリカにおけるエイズの蔓延のため、下方修正されたという経緯があります。

これに比して先進国人口はほとんど変わらず、約11億人から12億人の間で推移しますから、発展途上国、開発途上国ですざまじい勢いで人口爆発が起こることが(表1)からも判ります。地域別ではアフリカ、アジアの人口増加が著しく、比較的先進国の多いヨーロッパでは、逆に人口が減少する傾向が認められます。

表1 地域別推定人口 (2000年)

地   域

推 定 人 口

2000年

2010年

2020年

2030年

2040年

2050年

東アフリカ

245,302,494

309,115,932

381,415,116

460,460,429

549,453,441

649,229,097

西アフリカ

226,401,286

285,459,175

355,011,065

436,694,294

531,677,635

640,036,970

北アフリカ

181,028,015

217,019,291

251,926,919

283,164,407

309,302,526

329,820,651

南アフリカ

50,545,935

50,078,599

47,821,989

44,812,883

41,623,669

39,303,742

中央アフリカ

93,320,699

120,734,087

153,117,477

190,760,373

232,990,508

278,978,000

東ヨーロッパ

305,406,510

295,366,440

285,540,121

271,940,150

257,353,801

241,320,733

北ヨーロッパ

95,198,984

97,702,544

100,073,761

101,417,149

101,013,873

99,641,873

南ヨーロッパ

145,737,132

147,828,404

146,581,756

143,127,086

138,368,389

131,597,303

西ヨーロッパ

183,624,015

187,530,788

188,634,735

187,404,209

183,491,192

177,447,317

東アジア

1,496,304,241

1,581,910,681

1,664,585,585

1,689,750,977

1,672,562,380

1,628,553,303

中央アジア

1,470,861,434

1,718,888,161

1,960,002,882

2,178,426,178

2,369,517,352

2,527,618,756

東南アジア

532,005,996

608,587,896

676,410,773

732,895,138

774,103,307

799,034,900

西アジア

187,432,689

226,433,285

265,354,643

303,016,504

339,555,758

371,973,935

カリブ諸国

36,813,363

40,660,258

44,678,318

48,165,527

50,968,390

53,083,515

南アメリカ

348,336,602

392,530,116

430,725,888

461,236,604

480,964,419

490,094,319

北アメリカ

313,742,904

343,545,670

373,148,196

403,073,364

432,783,982

461,639,190

中央アメリカ

136,796,614

157,865,025

178,617,813

197,679,406

213,753,720

226,333,709

オーストラリア
ニュージーランド

22,984,382

25,153,405

26,954,631

28,265,220

28,896,219

29,018,180

メラネシア

6,617,106

8,188,999

9,739,483

11,238,616

12,632,621

13,829,649

ミクロネシア

508,444

595,442

675,537

744,993

802,044

847,219

ポリネシア

634,726

697,992

757,065

801,975

831,027

850,171

全 世 界

6,081,527,896

6,825,750,456

7,563,094,182

8,206,457,382

8,759,140,657

9,224,375,956

 

表2 平均余命と出生率一覧表(2000年)

高出生率国 (5名以上) 低出生率国 (1.5名以下)
国 名 平均余命 出生率 国 名 平均余命 出生率
男性 女性 男性 女性
Afghanistan 46.97 45.47 5.79 Andorra 80.57 86.57 1.25
Benin 49.02 50.88 6.23

Armenia

62.12 71.08 1.50
Bhutan 53.16 52.41 5.07 Austria 74.68 81.15 1.39
Burkina Faso 45.86 46.98 6.35 Belarus 62.06 74.52 1.28
Burundi 45.15 46.99 6.16 Bulgaria 67.72 74.89 1.13
Chad 48.86 52.98 6.56 China - Hong Kong SAR 76.97 82.55 1.29
Comoros 58.20 62.68 5.32 China - Macau SAR 78.88 84.64 1.31
Congo, Dem. Rep. of the 46.96 50.98 6.84 Czech Republic 71.23 78.43 1.18
Congo, Rep. of the 44.38 50.85 5.00 Estonia 63.72 76.05 1.21
Cote d'Ivoire 43.58 46.33 5.70 Georgia 61.04 68.28 1.45
Djibouti 49.37 53.10 5.72 Germany 74.47 80.92 1.38
Eritrea 53.73 58.71 5.87 Greece 76.03 81.32 1.33
Ethiopia 43.88 45.51 7.00 Guernsey 76.78 82.88 1.36
Gambia, The 51.65 55.58 5.68 Hungary 67.28 76.30 1.25
Gaza Strip 69.76 72.32 6.42 Italy 75.97 82.52 1.18
Guinea 43.49 48.42 5.39 Japan 77.62 84.15 1.41
Guinea-Bissau 47.12 51.78 5.20 Latvia 62.80 74.90 1.15
Laos 51.58 55.44 5.12 Liechtenstein 75.32 82.60 1.50
Liberia 49.96 52.91 6.36 Lithuania 63.30 75.50 1.37
Madagascar 53.08 57.68 5.80 Poland 69.26 77.82 1.37
Malawi 36.61 37.55 5.18 Portugal 72.44 79.68 1.48
Maldives 61.39 63.80 5.50 Romania 66.36 74.19 1.35
Mali 45.84 48.24 6.81 Russia 62.12 72.83 1.27
Marshall Islands 64.04 67.73 6.55 San Marino 77.68 85.10 1.30
Mauritania 49.06 53.29 6.22 Singapore 77.22 83.35 1.22
Mayotte 57.77 61.96 6.24 Slovakia 69.95 78.20 1.25
Niger 41.74 41.44 7.08 Slovenia 71.20 79.17 1.28
Nigeria 51.07 51.07 5.57 Spain 75.47 82.62 1.15
Oman 69.90 74.29 6.04 Switzerland 76.85 82.76 1.47
Sao Tome and Principe 64.15 67.07 6.02 Ukraine 60.62 71.96 1.29
Saudi Arabia 66.40 69.85 6.25
Senegal 60.94 64.22 5.12
Sierra Leone 42.69 48.61 6.01
Somalia 44.99 48.25 7.11
Sudan 55.85 58.08 5.35
Swaziland 37.86 39.40 5.82
Tanzania 51.04 52.95 5.42
Togo 52.38 56.38 5.32
Uganda 42.59 44.17 6.88
Yemen 58.45 62.05 6.97
Zambia 37.06 37.53 5.53
World 62.15 65.51 2.73

(表2)は女性1名が生涯に出産する子供の数を、多い国と少ない国別にまとめたものですが、おおむね、高出生率の国は途上国、低出生率の国は先進国だと言えます。
高い出生率の国はアフリカとアジアに集中しており、この地域で人口爆発が起こることが容易に推測されます。
更に推測されることは、開発途上国、発展途上国はこれから50年の間にどんどん先進国になるということです。日本も50年前は貧しかったわけですから、現在、途上国と言われているかなりの国が先進国の仲間入りをすることは間違いありません。先進国が増えるにも関わらず、先進国人口は11億で変わらないということは、先進国に極端な少子化現象が起こってくることを意味します。すなわち、開発途上国では極端な人口爆発が起こると同時に、先進国では自分の国の労働力すら確保できない少子化現象が起こってくるのです。
夫婦2人で子供を2人産んで始めて現在の人口を維持できるわけですから、(表2)で表したように、出生率が2を割り込む国では人口が減少し、その結果、労働力の減少や経済的に不安定な時期を迎えることが予測されます。人口爆発による地球全体の環境破壊や資源の枯渇が起こってくると同時に、極端な少子化の影響を受けたさまざまな障害が起こるのです。果たして人類は22世紀を迎えることができるのか、これを真剣に考える必要があるわけです。