RIテーマに寄せて
新しいロータリー年度が始まりました。
ステンハマーRI会長は本年度のRIテーマとして「Service above self」を発表し、皆がよく知っているのに今まで一度もテーマとして使われたことのない言葉をリサイクルしたと述べています。ロータリーには素晴らしいモットーが定められているのに、毎年RI会長が別の新しいテーマを発表するのはおかしいという批判があり、これを廃止しようという提案が規定審議会に提案されていただけに、当を得た判断だと思う一方で、第二モットーがその対象から外されたことに、ロータリーの将来に対して、一抹の不安がよぎるのは、私だけでしょうか。
「1911年、ロータリアンは Service above self という標語を熱意をもって採択しました。」とステンハマー会長は述べていますが、これは明らかに間違いであり、1911年の大会で採択されたのは
He profits most who serves best だけであって Service above self が採択されたという記録は残っていません。さらに1911年にフランク・コリンズが述べた言葉は、Service
above self ではなくて Service, not self です。
コリンズのスピーチ原稿が大会議事録に掲載されていないために、この Service, not self の真意について知っている人は少ないようです。
Service, not self は非常に精神性の高い言葉であって、自己の存在を否定して他人のために奉仕することであるとか、自己の存在を認めた上で、他人にも奉仕をする意味を込めて、Service
above self に変更したとか解説する人もいますが、これはコリンズの論文を読んだことのない人が引き起こした大きな間違いで、Service,
not self はそのような高い次元の言葉ではありません。
私は何回かRI本部の資料室を訪れて、1911年11月に発行された The National Rotarian 第2巻第1号に Service,
not self に関するコリンズのスピーチ原稿が掲載されていることをつきとめて、その全文を翻訳した結果、1. 利益を得ようと思ってロータリーに入るのは間違いである。2.
会員同士の物質的相互扶助をさらに推し進める必要がある。3. 会員同士の相互取引には限界があるので、その対象を一般にも広げる必要がある。という内容であって、シェルドンの
He profits most who serves best をさらに低い次元から具体的に説明した言葉であることが判りました。
誰が、何時、どのような経緯で、Service, not self をService above self に変えたのかは、現時点ではそれを証明する資料が見つからないので不明です。シェルドンが変えたという人もいますが、これは
Golden Strand という本に、その可能性が示唆されているに過ぎませんし、この本の著者はコリンズの論文の内容を全く知らない状態でこの本を書いたらしく、かなりの部分に間違いがありますので、この示唆に関する信頼性は低いと考えられます。ちなみにコリンズの職業は弁護士と記載されていますが、正しい職業は果実商です。
Service, not self の真意はコリンズの論文を、He profits most who serves best はシェルドンの論文を読めば完全に理解することができますが、
Service above self については、この言葉を作った作者が不明ですし、どこにも、この言葉の真意を説明した資料は残っていません。私たちロータリアンは
Service above self を第一モットーに掲げ、これにいろいろと解釈を加えていますが、いずれの解釈も憶測に基づいたものに過ぎないのです。
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