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炉辺談話(305)

日本ではCLPは必要か

 ロータリーには二つの奉仕理念があります。その一つはロータリーの特徴的な奉仕分野である職業奉仕の理念であり、私たちはその理念をHe profits most who serves bestというモットーで表しています。もう一つの奉仕理念は、弱者に涙する社会奉仕の理念であり、それをService above self超我の奉仕というモットーで表しています。
今年度のRIのテーマがService above selfであることは、取りも直さず、今年度のロータリー活動は社会奉仕に重点を置くことを表明したものであり、RIが期待しているのは、他人のことを思い遣り、他人のために尽くすためのボランティア活動に専念するロータリークラブだと言うことになります。欧米系ロータリアンの頭の中には、最早、職業奉仕がロータリーの真髄であるという思考はなく、ロータリークラブはボランティア組織であり、ロータリー活動とはボランティア活動そのものだ考えているとすれば、今後、職業奉仕の理念を奮い立たせるようなモットーを期待することは無理という結論に達します。

今、会員数が激減して、機能を喪失したクラブの存在が問題となっています。ボランティア組織ならば、何よりもマンパワーが優先しますから、会員数が20名以下のクラブでは、現行の委員会構成の下では最早、積極的なボランティア活動を期待することは不可能でしょう。こういった弱小クラブでも何とかボランティア団体として自立していくための最小限度の管理組織を想定したものが、クラブ・リーダーシップ・プラン(CLP)だと考えられます。

CLPに基づいた推奨クラブ細則では、五つの常任委員会から構成されています。会員増強委員会は少しでも会員数を増やし、退会者を減らすために、欠かすことのできない委員会です。如何に人数が減ろうともクラブとしての体面を守りながら組織を維持管理するためにはクラブ管理運営委員会も必要です。従来のクラブ奉仕に関連する小委員会は、この委員会の中に統合されていると考えられます。社会奉仕や国際奉仕の実践活動をするためには、奉仕プロジェクト委員会があれば可能であり、地区資金やマッチング・グラントを引き出すためにはロータリー財団委員会が必要となります。また、これらの奉仕活動を広くPRするためには広報委員会の存在も欠かせません。すなわち、CLPに基づいた推奨クラブ細則では、ボランティア組織としての最低基準を保つことができるこれらの五つの委員会構成となっているわけです。

さて、次年度からこのCLPを採用する必要があり、それまでにクラブ細則を変更しなければならないと思い込んでいるクラブも多いようですが、日本でその必要があるクラブは極く僅かではないでしょうか。
RI理事会が発表しているCLPの説明には「終焉の淵にあるロータリークラブを蘇生させる妙薬」であることが明記されています。さらに、@会員基盤を維持、拡大する。A地元地域社会ならびに他の国々の地域社会のニーズを取り上げたプロジェクトを実施、成功させる。B資金の寄付およびプログラムへの参加を通じてロータリー財団を支援する。Cクラブの枠を超えてロータリーにおいて奉仕できる指導者を育てるために、効果的なクラブの管理の枠組みを提供して、ロータリー・クラブの強化を図ることであると述べています。従って、クラブの現状がこれらの条件を満たしていない場合に、CLPを採用すればいいことになります。

 外国では会員数が十名以下のクラブも数多く存在し、そういったクラブでは、クラブを解散すべきか、それとも他のクラブと合併して生き残るべきかが真剣に議論されています。こういったクラブを対象にして、ボランティア活動をするための最低限必要な機能だけを残そうと言うのがCLPなのです。従ってCLPに基づいた委員会構成には、ロータリーの特徴とも言える職業奉仕委員会も、会員同士の親睦を図る親睦活動委員会も、ロータリーの理念や情報を提供するロータリー情報委員会も、常任委員会に中に含まれておらず、必要があれば設置してもよいと定義されている小委員会の中に十把一からげに入れているに過ぎません。

CLPに基づいて急遽作った推奨クラブ細則は、わざわざ第8条を新設して、「四大奉仕」について説明をしながら、第9条では四大奉仕とはまったく無関係に、小人数でも構成できる委員会構成を提示するという矛盾に満ちた細則となっています。
そこまでしなければ生き長らえることができないような小人数の機能喪失クラブが、果たして日本には幾つ存在するのでしょうか。正常に運営しているクラブは、無理をしてCLPを採用する必要はなく、従来の推奨クラブ細則にのっとった四大奉仕に基づいた委員会構成を引き続き踏襲していけばいいというのが、私の考え方です。少なくとも会員数20名以上のクラブでは、委員会の統廃合をすることで、これに対処することが可能ではないでしょうか。

クラブの運営はクラブ自治権の範疇にあり、たとえ推奨と言えどもRI理事会が口出しすべきことではありません。
CLPを採用すべきか否かはクラブが定めることであり、更に、CLPは、解散か合併の危機に瀕している機能喪失クラブが最後の手段として選択する方策に過ぎないと思えてならないのですが。