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炉辺談話(309)

日本におけるCLPの考え方

 炉辺談話308で「CLPの基づくクラブ委員会構成 2680地区試案」を発表したところ、多くの方からいろいろな意見を頂きましたので、この試案を作った背景について、説明を加えて見たいと思います。

アメリカや日本などの先進国におけるロータリークラブの会員数が減少して、回復の兆しが見えません。この傾向はライオンズやキワニスやソロプチミストといった他の奉仕団体も同様ですので、その意味からは、奉仕団体全体が、生き残りを賭けたサバイバルの時代に突入したと言えるのかも知れません。
最近のロータリーはその活動内容を人道的なボランティア活動にシフトしていますから、会員数が激減したクラブの存在が問題となっています。ボランティア組織ならば、何よりもマンパワーが優先しますから、会員数が20名以下のクラブでは、積極的なボランティア活動を期待することは不可能かも知れません。こういった弱小クラブでも何とかボランティア団体として自立していくための最小限度の管理組織を想定したものが、クラブ・リーダーシップ・プラン(CLP)なのです。言い換えれば、「機能を喪失しているクラブ」乃至は「機能を喪失しかかっているクラブ」が、「人道的奉仕活動をするボランティア組織」として生き長らえるためのプランだとも言えます。

CLPに基づいて、RI理事会が推奨している新しいクラブ細則では、五つの常任委員会で構成されています。

クラブ管理
運営委員会
会員増強退会
防止委員会
奉仕プロジェ
クト委員会
クラブ会報
委員会
ロータリー
財団委員会

会員増強・退会防止委員会は少しでも会員数を増やし、退会者を減らすために、欠かすことのできない委員会です。如何に人数が減ろうともクラブとしての体面を守りながら組織を維持管理するためにはクラブ管理運営委員会も必要です。従来のクラブ奉仕に関連する小委員会は、この二つの常任委員会の中に統合されるか、小委員会として設置されることになります。ボランティア組織として社会奉仕や国際奉仕の実践活動をするためには、奉仕プロジェクト委員会が必要ですし、その原資を集めるためにはロータリー財団委員会が必要となります。また、これらの奉仕活動を広くPRするためにはクラブ広報委員会の存在も欠かせません。すなわち、CLPに基づいた推奨クラブ細則では、ボランティア組織としての最低基準を保つことができるこれらの五つの委員会構成となっているわけです。

さて、そこで私たちが考えなければならないことは、奉仕活動の実践をしなければ、果たしてクラブの存在価値がないのかどうか、ということです。クラブの例会を通じて奉仕理念を学び、人格を形成するとか、事業上の発想の交換を通じて職業奉仕の理念を学ぶことはもはや必要がなくなったのでしょうか。ただ、がむしゃらにボランティア活動にうつつを抜かすことが、素晴らしいロータリー・ライフと言えるのでしょうか。クラブは、どんな活動をしたかではなくて、どんな人間を作ったかで評価されるべきであるという先人の言葉を思い起こすべきではないでしょうか。

CLPの発想の基本にあるものは、会員のリーダーシップ研修です。クラブが衰退していく一番大きな原因は、リーダーシップを持った会員が不足し、クラブ・ライフがマンネリになっていくことです。そのために様々なリーダーシップ研修のプログラムが考えられてきました。1992年に設立されたロータリー・リーダーシップ研究会も、クラブのリーダー候補者を対象にしたセミナーを通じて、そのリーダーシップを養成しようというものであり、2004年の規定審議会で採択された正式なプログラムです。リーダーシップを研修することの重要性については、このCLPの推進者でもある元RI理事ロン・バートンも縷々述べているところですが、最も重要なリーダーシップ開発やロータリー教育の提供に関与する委員会の存在がこの推奨細則に見当たらないのは不思議なことです。

クラブ管理運営委員会と会員増強委員会を常任委員会にすることには全く異論はありませんが、ロータリー財団委員会を常任委員会にすることには疑義を感じます。地区レベルならばいざ知らず、クラブ・レベルで地区資金やマッチング・グラントを活用するケースは少ないですし、日本では奉仕プロジェクト実践の費用はニコニコ資金を利用するケースが大部分なので、その設置目的は財団寄付を集めることが主だと思われます。たしかに素晴らしい制度だとは思いますが、地区レベルならいざ知らず、集金目的の委員会をクラブ・レベルで常任委員会にする必要が果たしてあるのでしょうか。ましてや、機能を喪失しかかっている弱小クラブに、乏しい数の会員の中から理事を割いて張り付かせる必要があるのでしょうか。

更に、ロータリー財団の資金の使途がアメリカの国益に適うものに限定されていることも勘案しなければなりません。ロータリー財団はイリノイ州法の下に認可されている団体なので、イリノイ州法やアメリカ連邦法すなわちアメリカ政府の意思で使途が限定されているのです。どんなに素晴らしい人道的な奉仕活動でも、アメリカ政府の承認が無ければ、びた一文使うことはできないのです。ロータリー財団が中立国に設置されて、ロータリアンの善意が十分反映されるようなシステムにならない限り、ロータリー財団とは一線を画すべきであり、むしろ財団寄付を日本でプールして、それを活用する方法を考えるべきだというのが私の考えです。

広報委員会は極めて重要であり、特にクラブ会報や週報の発行、インターネットの開設、メーリング・リストによる情報伝達は今後ますます盛んになるものと推測されます。適切な広報は会員増強にも繋がりますが、RIが強調している対外的宣伝を中心とした広報は、非常に難しいのが現状です。少ない人数の会員でクラブ運営を活発に行う意味からは、広報委員会を常任委員会にすることは無駄な感があり、クラブ管理運営委員会の小委員会で十分な気がします。

RIがCLPのために提示した推奨細則は、わざわざ第8条四大奉仕という項目を新設して、いかにも四大奉仕を前提にしているかのように思わせながら、その内容は、全く四大奉仕を否定した委員会構成になっています。ロータリーが四大奉仕を捨てて、ボランティア組織に移行しようと思うのなら、規定審議会の採択が必要であり、クラブ推奨際細則の変更を含めたこの一連のCLPへ向けての動きは、正式な手続きを無視した危険な流れと言わざるを得ません。四大奉仕の精神を遵守する意味合いから、職業奉仕、社会奉仕、国際奉仕委員会は当然常任委員会として残すべきだと思います。

CLPについては、RIからほとんど具体的な案が出てこない状況の中で、幾つかのクラブが、RIが推奨するCLPを受け容れるという前提で先走っているような感じがします。11月にはCLPのマニュアルが完成し、年内にはその邦訳もでますので、全ての資料が出揃ってから、検討すべきではないでしょうか。もっとも、CLPを採用しなくても、従来の四大奉仕に基づいた委員会構成を基本にして、クラブの規模を考慮しながら、一人の会員が一つの委員会に所属するように、委員会の統廃合を徹底的に進めれば、それに十分対応できるのではないかと思います。
そのようなことを考慮した上で、作った試案が、炉辺談話308の委員会構成です。これはRIの提示したCLPに基づくものではなく、2680地区の研修委員会が独自に考えたCLPに基づく委員会構成です。もちろん、クラブが委員会の統廃合を効果的に進めるためのサンプルに過ぎませんので、自分のクラブの実情に合わせて、独創的な委員会構成を考えてください。