10 例会の卓話
日本では例会の開催時間を1時間と定める習慣が固定化してしまったために、1時間を越えるとまるで定款や細則に違反したかのような非難が集中するようです。その影響を受けて、どのクラブも、食事15分、クラブ議事15分、卓話30分と定めた、極めて硬直的な例会運営を強いられているようです。この時間の制約が、画一的で魅力のない例会が開催される大きな原因の一つになっているのではないでしょうか。
私は、よくセミナーを依頼されますが、一つのテーマについて、相手が十分理解できるように話そうと思えば90分は必要になります。パワーポイントを使ってエッセンスを効率的に話しても最底限60分は必要です。30分の卓話時間では荒筋を述べるだけで終わってしまい、聴衆の心を打つような話を期待することは不可能です。年間に1度回ってくるか、こないかの機会ですから、十分時間をかけて準備し、それを発表する機会が与えられるべきでしょう。
外国では卓話時間の定めはありませんが、およその時間を告知してから話を始めるケースが多いようです。話の途中に退席する人はほとんどいませんが、その一方で、話の内容がつまらなかったり、面白くなければ、容赦なくブーイングを浴びせることや、冗長な卓話は強制的に終了させることすらあります。従って、卓話者は事前に十分準備をしてから、卓話に臨んでいるようです。
卓話が済むと、卓話の内容に関連した積極的に質疑応答が行われます。次々に質問攻めに会って、必死になって答える様は、卓話を聞くよりも面白く、卓話と質疑応答が一体となって、例会プログラムの中心になっていることを強く感じさせられました。
11 参加意識
外国では、例会を含めたすべての会合における出席率は極めて悪く、その平均は60%前後だと思われます。この実態を反映して、ロータリーの60%ルールが生まれたのではないかと思います。日本のように100%登録を強制して、実質的な出席者数は問わないといった手法は通用せず、登録者数と出席者数はほぼ同じです。
その代わり、出席した限りは、たとえ例会時間が2-3時間かかっても、途中退席する人の姿を見ることは稀です。これは、国際大会や地区大会や大規模の研修会でも同様で、初日の参加者も二日目以降の参加者もほぼ変わりはありません。万難を排して一旦出席したからには、最後まで参加しようという意識の強さを感じます。
日本ではどうでしょうか。食事とクラブの議事が済んで、これからいよいよ例会プログラムのメインである卓話に入ろうとする矢先に、ぞろぞろと列を作って退席するビジターの姿に、苦々しい思いをするのは私だけではないでしょう。どうしても席を外さなければならない急用が出来たのならばいざ知らず、前後2週間もあるメークアップ期間中のわざわざ所用のある日を選んで、メークアップをする必然性はないはずです。折角出席した例会です。最後まで参加することが義務であると共に礼儀であると考えるべきでしょう。
昨年の大阪国際大会で、初日に、あの巨大な大阪ドームを埋め尽くしたロータリアンが、二日目以降にはアリーナにまばらにしか見当たりませんでした。どこで開催される国際大会でも、開会式にだけ出席して、後はほぼ全員が観光旅行に出かけてしまうのが、日本のロータリアンの現実の姿です。
12 SAAの権限
SAAはロータリーのあらゆる会合において、開門、閉門、会場の出入り、会場の案内、議事運営、食事など、その会合が秩序を守って円滑に進行するために最高の権限を与えられた役職です。会場においては、会長や理事などの役割を越えた絶対的な権限を持っているので、すべての参加者はSAAの指示に従わなければなりません。従って、クラブのSAAは会長経験者、RIや地区レベルではパストガバナーなどのベテラン会員をこれに充てるケースが多いようです。
国際大会などの大規模な会合では、ベテランのパストガバナーの中から選ばれたSAAを中心に、一般会員の中からボランティアとして参加した多数の副SAAがこれを補助します。クラブにおいても、ベテランのパスト会長がSAAを務め、さらに会員数の10%程度の副SAAがこれを補助するのが好ましいと言われています。
日本では、SAAがニコニコ箱を管理するという習慣が定着しているようです。そのために、会合の秩序を守るという本来の役割が軽視されているのはおかしな話です。
13 会長経験の意義
外国でロータリアンから名刺をもらうと、会長経験者は必ずPP (Past President)という肩書きを付けていることに気づきます。中にはCP
(Charter President)という肩書きを自慢そうに示す人もいます。
ガバナー、ガバナー補佐になるためには、クラブ会長を全期間経験することが義務付けられていますから、外国では、クラブ会長を経験することは、シニア・ロータリアンになるための出発点に過ぎないと考えている人が多いようです。従って、何時でもシニァ・ロータリアンになれる資格としてPPという肩書きが重要視されているのです。
日本では20-30代で入会する人は稀ですから、若くて会長に就任する人も稀です。従ってガバナーになるのも遅く、理事はさらに遅く、RI会長を務めるのは年齢的に不可能というのが現状です。クラブ会長を務めることが、クラブに対する最後のお勤めだと考えてはいけません。なるべく若い内に会長を務めて、会長を務めたことが、ロータリーの世界で対外的に羽ばたく最初のステップだと考えて、PPという肩書きを大切にしてください。