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炉辺談話(320)

ポール・ハリス語録より(1)

 

ポール・ハリスは文献やスピーチを通じて、数多くの名言を残しています。その語録の中から幾つかを選んで、解説を加えてみたいと思います。

「ロータリーとその子供たち(いわゆる他の奉仕クラブ)は、私たちの選んだ範囲内の社会的進歩にだけ寄与するものとみなすことができます」「私たちは自らとその活動に対して適正な物の見方ができます」「自己満足してはなりません」「私たちは逆境なときも順境にあるときも変わらず、平和においても戦時に際しても敢然と事に立ち向かう覚悟がなくてはなりません」「思考力を硬直化させてはなりません」「私たちはいつまでも成長してやむことはないでしょう」心底からロータリーに関心を抱く人々はこのように信じているのです。世界は絶えず変化しています。そして私たちは世界とともに変化する心構えがなければなりません。ロータリー物語は何度も書き替えられなければならないでしょう。

This Rotarian Age

「世界は絶えず変化しています。そして私たちは世界とともに変化する心構えがなければなりません。ロータリー物語は何度も書き替えられなければならないでしょう。」の箇所はロータリー運動は変化すべきだという例として、しばしば使われる文章ですが、この文章全体の流れや、幾つかの具体的な引用例から判断すれば、決してロータリーの理念を変化させよと言っているのではなく、社会のニーズに適うように奉仕活動の内容を変化させるべきであることを述べていることが判ります。クラブや個々のロータリアンが社会のニーズを憶測して奉仕活動を実践するのではなく、あくまでも、地域社会や国際社会のニーズに従って奉仕活動を実践するのが原則ですから、社会のニーズが変化すれば、それに伴ってロータリーの奉仕活動も変化させなければなりません。

事業というものは、その批判者(調査者)を雇い、気前よく給与を支払います。批判者は、非難するために、大きな機械の中枢を細かく調べ、その弱点を発見します。ロータリーの有給職員名簿には批判者はいません。批判者はみんな外部の人ばかりです。批判者の活動は、よいことばかりではありませんが、悪いことばかりというわけでもありません。ロータリーは建設的な批判をしてくれる部局が必要です。丁度、大企業の調査部のような何かです。ロータリーがその適正な運命を理解するとしたら、ロータリーは必ず進歩しなければなりません。時には革命が起こる必要があります。

米国イリノイ州シカゴ1930RI国際大会でのメッセージ

この文章はロータリーの管理運営について、時代の流れに対応して進歩させる必要があることを説き、時と場合によっては革命的とも言えるような変革も必要であることを述べた文章です。組織の諸規定を含めた管理運営は、年を経るに従って制度疲労を起こして硬直化するものです。従って、周囲の状況や時代環境にマッチするように、常に見直す必要があります。

偉大な運動家を研究すると、その発展は、個人の発展と似ているように思われます。形成期は初期です。若い心は、感受性に富み、成熟すると、落ち着いてきます。運動も年を経ると、定型化するようになります。伝統が正当な判断力の行使を妨げます。先例を尊重するようになり、先例が必要以上に重要性を帯びてきます。価値もないし、不合理なことが、今までそうであったからという理由だけで継続されます。存在理由が、かつてあったとしても今はないことが明らかでも誰も先例を敢えて破ろうとしません。形式に精神が伴わないようになっているのです。

米国イリノイ州シカゴ1930RI国際大会でのメッセージ


人間は、通常進歩するという点で、他の動物とは異なります。人間の進歩を長く抑えることのできる唯一のものは、先例です。

米国イリノイ州シカゴ1930RI国際大会でのメッセージ

 委員会活動、例会運営、地区大会の式次第、ロータリー活動の多くの部分が先例に従っていることに気付き、改めて驚きます。先例に従えば大きな失敗もなく、非難を浴びることも少ない一方で、何らの進歩もありません。事務局を廃止するとか、週報やガバナー月信をIT化するとか、地区大会を1日で済ますとか、定款や細則に背馳しない範囲内で、思い切って前例を破る勇気も必要ではないでしょうか。そこに進歩が生まれてくるのです。

私は、ロータリーの草創期が始まったばかり、と考えたいと思います。今までと同じくらい、しければならないことが沢山あります。万華鏡のような変化が起きています。その多くは、私たちの意思とかかわりなく起きています。急速に変化する世界のふちにぶらさがっているのが、私たちのできる精一杯なのです。ロータリーはパイオニアとなり続けなければなりません。さもなければ、進歩に取り残されるでしょう。

ロータリアン誌、19452

 ロータリーの奉仕理念は哲学ですから万古普遍のものであり、みだりに変えるべきではありません。と言うよりも絶対に変えてはなりません。
 しかし、奉仕活動の実践は、社会のニーズに従って大胆に変化させなければ、誰からも頼りにされないばかりか、相手にされなくなるでしょう。
 また奉仕団体として生き残りを賭けるならば、社会の変化に沿った管理運営の方法を考えなければなりません。
 そして、ロータリーが奉仕クラブのリーダーシップを取っていこうと考えるのならば、常にパイオニアとして新しい試みに挑戦し続けることが必要なのです。


2006年1月8日