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炉辺談話(322)

ポール・ハリス語録より(3)


長い人生を振り返ってみると、ある時には重要だと思ったことが、年を経ると重要でなくなったり、また最初は大したことではないと思ったことが、後で「これはとても重要だ」と気が付くものもあります。犠牲心、献身、名誉、真実、誠実、愛情は古き良き時代の家庭を代表する素朴な美徳として大切なものです。

My Road to Rotary

人類は、時には、すべったり、つまずいたりします。しかし、それにもかかわらず、苦労しながら、前進し続けます。私は、人生には、これまで発見された美しさのほかに、まだ現われていない美しいものがもっと沢山あると信じています。私たちが必要なのは金銭だけではない、と私は確信しています。私たちは学ばなければなりません。みんなを取り巻く日々の恵みをもっと理解する必要があるのです。

米国カリフォルニア州ロサンゼルス1922RI国際大会でのメッセージ

 人生は或る機会を転機として、価値観が大きく変わるものです。私もその一人ですが、阪神大震災も価値観を変える大きなきっかけとなった出来事でした。若いころはあれ程執着していた金銭欲、物欲、功名心も、人間が円熟してくると、さほど重要なことではなくなり、それよりももっと重要なことは美徳であることに気付きます。価値観が美徳に変わることは決して後退ではなく、進歩なのです。
 ロータリーとは、
犠牲心、献身、名誉、真実、誠実、愛情といった古き良き時代の家庭を代表する素朴な美徳の大切さを教えてくれる教育の場なのです。

人間の違いも国の違いも、基本的には大差がないのです。何もかもよい人も国もないし、何もかも悪い人も国もありません。不和は誤解から生まれます。

ロータリアン誌、19447月号

 ロータリーには164ケ国が加盟して、世界的な組織にまで発展したのは、政治に関与しなかったからだと言われています。国と国が対立している時、どちらが正しいかは、どちらの立場に立って判断するかによって異なります。これはその対象が国であっても人間であっても同じことです。ロータリー財団の本部がイリノイ州にあり、イリノイ州法やアメリカ連邦法の管轄下にあることから、アメリカが敵対国とみなしているキューバや北朝鮮やイランには、ロータリー財団の資金を使うことができません。一国の考え方によって、全世界のロータリアンの善意が生かされなくなるような制度を、速やかに改善する必要があります。

 私の知る限りでは、ロータリーには「できない」と「できる」との葛藤で、「できない」が永遠の勝利を収めたことは一度もありません。広大なビジョン、崇高な目的は必ず勝利を収めます。

米国、イリノイ州、シカゴ1930RI国際大会でのメッセージ

 やってみなければ、「できる」か、「できない」かは判りません。「前例がないから」とか「積極的に賛成してくれる人がいないから」とか「面倒くさいから」と言った理由で、やる前から、「できない」と決め込んでいるケースが、あまりにも多いのではないでしょうか。

全員の一致は、とても期待できるものではありません。ロータリーがその最善の活用方法を問うても、15万のロータリアンのうち、2人として意見が完全に同じということは多分ないでしょう。人の考えの異なるのは、その容姿が異なるのと同じです。考えの微妙な差は、色合いの違いよりはるかに多様で、それを変えるのは難しいのです。信念は、気質、遺伝、環境、経験などのいろいろな影響によって決まります。指導者たるものは、忍耐と慎みをもって、柔軟な判断を下さなければなりません。教条主義ロータリーでは役に立つことはできません。

This Rotarian Age

 ロータリークラブは理事会に先議権を持たせていますし、理事会の決定が最終決定と定められていますから、理事会が意思決定するに当たっては、慎重な配慮が必要です。
 意思決定には、@多数決、Aコンセンサス、Bコンセントの方法があります。
 多数決は定められた数、たとえば過半数、2/3、3/4以上の賛成があれば、反対意見を無視して、強行する方法です。冒頭に述べたように賛成と反対にはっきり意見が分かれるような案件を、多数決によって強行すると、必ず親睦にひびがはいります。理事者側が新たな提案を行うときには、あらゆる機会を通じて会員の意見を充分聞き、賛否が分かれるようならば、例え少数派であってもその意見を尊重して、潔く提案をとりさげるというのが、ロータリー的な処理法といえます。
 コンセンサス(了承)とは、理事者側が提案の趣旨を理解してもらうように努力し、反対の意見を持った人たちも納得した状態のことを言います。反対の意見を持った会員も、その反対理由が大きな意味を持たないものならば、敢えて、反対の意思表示をしないという良識が必要です。議論を活発にするために、わざと反対意見を出すようなことは、厳に慎むべきでしょう。両者がお互いを思いやりながら、全員のコンセンサスを得た上で物事を進めていくのが、会員の親睦を第一に考える、ロータリークラブの正しい議事運営方法なのです。
 コンセントとは、全く異論が無く、満場一致で了解された状態を指します。
 ロータリーの親睦を第一義に考えるならば、少数派の意見を尊重する態度が必要です。
 仮に、理事会の議案に一人の理事が反対の意見を持っていた場合、その反対理由が納得できるものならば、多数決で採決せずに、その議案の提出そのものを撤回すべきだし、その反対理由が大したものでなければ、当人が敢えて反対を表明しないことによって、理事会の総意としてその議案を採択するのが、ロータリー的な考え方です。新入会員の承認など、細則上、どうしても採決をとらなければならない案件について、満場一致を原則としているクラブが多く見られるのは、このあたりの事情を勘案したものと思われます。


もし私のことを国際ロータリーの設計者と呼んでもいいとしたら、チェスも同じように国際ロータリーの施工者と呼んで間違いないでしょう。

My Road to Rotary

 ちなみに、ロータリーでは一般的に、ポール・ハリスを「ロータリーの創立者」、チェスレー・ペリーをロータリーの建設者」、アーサー・フレデリック・シェルドンを「ロータリーの哲学者」と呼んでいるようです。

2006年1月27日